前頭側頭型認知症
ひとことでいうと
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、前頭葉・側頭葉を中心とする神経細胞の変性に関連し、行動、社会的な関わり、言語などが徐々に障害される認知症です。英語ではFrontotemporal Dementia、略してFTDと表します。前頭葉は行動の調整や意欲、側頭葉は言葉の意味などに関わります。
行動障害型(bvFTD)では、言動の調整が難しい脱抑制、同じ動作・言葉を繰り返す常同行動、自発性が低下するアパシーなどがみられます。共感や食習慣の変化も起こりますが、全員に同じ症状が現れるわけではありません。
FTDを広い臨床診断名として使う場合には、言葉の意味が分かりにくくなる意味性認知症や、発話が努力的になる進行性非流暢性失語などの病型も含みます。背景にはタウやTDP-43などの異常なたんぱく質が関わり、病理も一様ではありません。
前頭側頭葉変性症(FTLD)とFTDは無条件に同義ではありません。FTLDは病理学的な疾患群の名称として使われますが、国内では指定難病名や臨床分類にも用いられます。アルツハイマー型認知症に比べ初期に行動・言語の変化が目立つ場合がある一方、記憶障害も起こり得ます。
アルツハイマー型認知症とどう違う?
アルツハイマー型認知症では最近の出来事を覚えにくいなどの記憶障害が初期に目立つことが多い一方、前頭側頭型認知症では、以前と異なる言動、決まった行動へのこだわり、意欲の低下、言葉の理解や発話の難しさが先に気づかれる場合があります。物忘れの目立ち方だけで区別することはできません。
例えば、会話で相手の気持ちに応じた反応が難しくなる、慣れた活動を自分から始めなくなる、同じ時間に同じ行動を続ける、といった変化を具体的に捉えます。言語症状が目立つ場合は、話す量だけでなく、単語の意味を理解できるか、物の名前を言えるか、別の方法で意思を伝えられるかも確認します。
こうした変化を「性格が悪くなった」「怠けている」と責めず、以前との違いと生活への影響を家族・専門職で共有します。診断には経過や画像検査などを合わせた評価が必要です。保たれている力も確かめることで、本人に合う声かけや活動を選べます。症状の組み合わせや進み方には個人差があります。
現場で知っておきたいポイント
症状名だけで行動を評価せず、本人の生活歴や習慣、困りごとを踏まえて支援を考えます。
- 行動:普段と異なる言動、意欲、食べ方、他者との関わりを具体的に記録します。人格や努力の問題と決めつけません。
- 反復:同じ動作や言葉が出る場面、生活への影響、本人の負担と安全性を確認します。害のない反復を一律に止めません。
- 意思疎通:理解と表出の状態に合わせ、短い言葉、実物や身ぶりを使います。急がせず、本人が示す意思を確かめます。
- 環境:生活リズムや慣れた習慣を尊重し、刺激や手順を調整します。できる活動を安全に続けられる方法を探します。
- 連携:家族の負担や金銭・外出・食事の安全上の心配を共有し、医療職や介護支援専門員と支援を見直します。
身体拘束や閉じ込めに安易に頼らず、本人と周囲の尊厳・安全を守ります。急な言動変化や体調悪化は進行と決めつけず、原因の評価を医療職へ相談します。
もっと詳しく|関連ブログ
参考情報・参考文献
日本神経学会 監修「認知症疾患診療ガイドライン2017 第8章 前頭側頭葉変性症」
確認内容:FTD・FTLDの名称の使われ方、行動障害型と言語症状を主体とする病型、病理の多様性。
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_08.pdf
参照日:2026年10月15日
難病情報センター「前頭側頭葉変性症(指定難病127)―病気の解説(一般利用者向け)」
確認内容:行動・言語症状、生活への影響、保たれている機能を生かした支援と家族の負担。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4840
参照日:2026年10月15日
難病情報センター「前頭側頭葉変性症(指定難病127)―診断・治療指針(医療従事者向け)」
確認内容:脱抑制、常同行動、自発性の低下、言語症状と他疾患との鑑別。難病の認定基準と一般的な臨床説明を区別。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4841
参照日:2026年10月15日
国立長寿医療研究センター「よくある質問・Q&A(認知症について)」
確認内容:前頭葉・側頭葉の障害と行動・言語の変化、症状の現れ方の違い。
https://www.ncgg.go.jp/dementia/about/answer.html
参照日:2026年10月15日
