国立がん研究センターなどの研究チームは2026年10月23日、小細胞肺がんなどの肺神経内分泌がんで、がん細胞がつくるセロトニンが免疫の働きを弱める仕組みを発表した。免疫療法が効きにくくなる理由を探る研究であり、新たな治療の提供開始を知らせるものではない。
■なぜ免疫療法が十分に効かないのか
免疫療法は、体の免疫ががんを攻撃する力を利用する治療である。しかし、治療の標的となる分子ががん細胞にあっても、十分な効果が得られない場合がある。研究チームは、がん細胞だけでなく、その周囲にいる免疫細胞との関係に着目した。
対象の肺神経内分泌がんには、小細胞肺がんや大細胞神経内分泌がんが含まれる。小細胞肺がんでは免疫療法が治療選択肢となっているが、十分な効果が得られない患者もおり、その背景を探ることが研究課題となっている。
■がんを攻撃する細胞に、別の免疫細胞がブレーキ
研究では、患者の腫瘍組織の解析と、細胞・マウスを用いた実験を組み合わせた。特に、治療の標的にもなるDLL3という分子を多く持つがん細胞と、セロトニン産生との関係に着目した。がん細胞が産生するセロトニンが、HTR7という受容体を持つマクロファージに作用し、がんを攻撃するCD8陽性T細胞の働きを抑える流れを調べた。マクロファージも免疫細胞の一種だが、がん組織の中では免疫を抑える側に働くものがある。
タルラタマブという免疫療法を受けた小細胞肺がん患者の解析では、腫瘍内でHTR7を持つマクロファージが多いことと、治療効果が得られにくいことなどに関連がみられた。
■効果を高めたのはマウス実験の段階
マウスでは、セロトニンの産生やHTR7の働きを抑えることで、免疫療法の効果が高まった。既存の免疫療法に別の働きかけを組み合わせる、将来の治療開発の手掛かりとなる結果である。
ただし、人でこの組み合わせの有効性や安全性が確認されたわけではない。発表は承認や保険適用、一般の診療で使える新治療の開始を意味しない。研究チームも、患者への応用に向けて効果と安全性の検討を進めるとしている。
今回のニュースの意義は、がん細胞の特徴だけでなく、周囲の免疫細胞とのやり取りにも治療が効きにくい理由を見いだした点にある。がん患者や家族を支える介護・在宅支援の現場にとっても、今使える治療と将来に向けた研究を区別しながら、医療の進歩を理解する話題である。
研究成果は米国科学誌「Cancer Cell」に米国東部時間10月22日、日本時間10月23日に掲載された。
