更衣介助のやり方とは?脱健着患の基本・片麻痺の着替え方と注意点

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更衣介助の基本とやり方を解説するイラスト。脱健着患の原則をはじめ、上衣の着せ方・脱がせ方、ズボンの履かせ方・脱がせ方、片麻痺がある方への介助の注意点を紹介。
もくじ

はじめに|更衣介助のやり方に迷っていませんか?

「片麻痺がある方の着替えは、どちらの腕から通せばいい?」
「ズボンを履かせるときは、どのように介助すればいい?」
「脱健着患という言葉は知っているけれど、実際の介助では迷ってしまう」

更衣介助は、介護現場や在宅介護で日常的に行われる基本的な介助の一つです。しかし、身体の状態や衣服の種類によって適切な方法が異なるため、難しさを感じる場面も少なくありません。

特に片麻痺がある方の場合は、麻痺側の肩や腕に負担をかけず、本人ができる動作を活かすことが大切です。また、着替えの際には転倒を防ぎ、プライバシーにも配慮する必要があります。

この記事では、理学療法士の視点から、更衣介助の基本となる「脱健着患」の考え方、上衣やズボンの着脱手順、片麻痺がある方への注意点をわかりやすく解説します。

介護職の方はもちろん、ご自宅で介護をされているご家族も、ぜひ参考にしてください。

更衣介助とは?基本的な考え方

更衣介助とは、病気や障害、加齢による身体機能の低下などによって、一人で衣服を着たり脱いだりすることが難しい方を支援する介助です。

大切なのは、単に着替えを終わらせることではなく、本人の身体機能や意思を尊重し、できることを活かしながら必要な部分を支援することです。

更衣介助の目的と大切なポイント

更衣介助には、衣服を着替えること以外にも、さまざまな目的があります。

  • 清潔保持: 汗や汚れのついた衣服を交換し、皮膚を清潔に保つ
  • 快適性の確保: 気温や体調に合わせた衣服を選び、心地よく過ごせるようにする
  • 尊厳の維持: 本人の好みや意思を尊重し、羞恥心やプライバシーに配慮する
  • 自立支援: 本人ができる動作を活かし、身体機能を使う機会を確保する

また、更衣中は皮膚の赤みや傷、痛み、関節の動かしにくさなど、普段は気づきにくい身体の変化を確認できる機会でもあります。

全介助・一部介助・見守りの違い

更衣介助は、本人の身体機能や理解力に応じて、介助の程度を調整します。

  • 全介助: 衣服の着脱を自分で行うことが難しく、介助者がほぼすべての動作を支援する
  • 一部介助: 袖を通す、衣服を引き上げるなど、難しい部分だけを手伝う
  • 見守り: 基本的には本人が着替え、安全確認や必要に応じた声かけを行う

例えば、片麻痺があっても、健側の手を使って衣服を操作できる場合があります。

介助者がすべて行うのではなく、本人ができる部分は任せ、難しい部分を補うことが、更衣介助の基本です。

更衣介助の基本「脱健着患」とは?

片麻痺などによって左右の手足の動かしやすさが異なる方の更衣介助では、「脱健着患(だっけんちゃっかん)」という基本原則があります。

これは、身体への負担を減らしながら、安全かつスムーズに衣服を着脱するための考え方です。

脱健着患の意味と覚え方

脱健着患とは、「脱ぐときは健側から、着るときは患側から」という更衣介助の基本原則です。

  • 脱健(だっけん): 衣服を脱ぐときは、動かしやすい健側から脱ぐ
  • 着患(ちゃっかん): 衣服を着るときは、動かしにくい患側から着る

例えば、右片麻痺がある方の場合、上衣を脱ぐときは左腕から、着るときは右腕から袖を通すのが基本です。

覚え方は、「脱ぐときは元気な方から、着るときは動かしにくい方から」と考えるとわかりやすいでしょう。

なぜ脱ぐときは健側、着るときは患側からなのか

脱健着患には、身体の動かしやすさと衣服の余裕が関係しています。

衣服を着るときに健側から袖を通してしまうと、残った患側の袖を通す際に衣服が引っ張られ、動かしにくい腕を無理に動かす必要が生じる場合があります。

一方、患側から先に袖を通せば、衣服に余裕がある状態で腕を包み込むように着せられます。その後、動かしやすい健側の腕を通すことで、比較的スムーズに着用できます。

脱ぐときは反対です。健側から袖を抜くことで衣服に余裕が生まれ、患側の腕を無理に引っ張らずに脱がせやすくなります。

つまり、動かしにくい側に無理な動きを求めないことが、脱健着患の大切な目的です。

脱健着患が適さない場合もある

ただし、脱健着患はすべての方に必ず当てはまる方法ではありません。

例えば、強い痛みや関節の拘縮がある場合、基本の順番を守ろうとすることで、かえって身体に負担がかかることがあります。

また、衣服の形状や伸縮性、本人が自分で行える動作によっても、適切な着脱方法は変わります。

大切なのは順番を守ること自体ではなく、痛みを避け、本人が無理なく着替えられる方法を選ぶことです。

次の章では、この考え方を踏まえて、上衣の具体的な更衣介助手順を解説します。

更衣介助の基本「脱健着患」を説明するイラスト。片麻痺がある高齢者の着替えについて、服を着るときは患側から、脱ぐときは健側から行う順番を解説。

上衣の更衣介助のやり方

上衣の更衣介助では、前開きの服とかぶりの服で着脱の手順が異なります。特に片麻痺がある方の場合は、基本となる「脱健着患」を意識しながら、麻痺側の肩や腕に負担をかけないことが大切です。

ここでは、右片麻痺がある方を例に、上衣の着脱手順と介助のポイントを解説します。

前開きの服を着るときの手順

カーディガンや前開きのシャツは、袖を一方ずつ通せるため、片麻痺がある方でも比較的着替えやすい衣服です。

基本的には、次の順番で介助します。

  1. 姿勢を整える: 椅子やベッドに安定して座ってもらい、両足を床につける。麻痺側の腕が不自然に垂れ下がらないように支える。
  2. 患側の腕から袖を通す: 右腕を無理に持ち上げず、衣服の袖をたぐり寄せて、手先から肘、肩へと少しずつ通す。
  3. 衣服を背中側へ回す: 麻痺側の肩を引っ張らないように注意しながら、衣服を背中側へ回す。
  4. 健側の腕を通す: 動かしやすい左腕を袖に通してもらい、衣服の位置を整える。
  5. 前を留める: ボタンやファスナーを留め、背中や脇に衣服のしわや引っ張りがないか確認する。

腕を衣服に無理やり通すのではなく、衣服を腕に近づけることがポイントです。

片麻痺がある高齢者の前開きの服を着る更衣介助手順。患側の右腕から袖を通し、衣服を背中側へ回してから、健側の左腕を通す3ステップをイラストで解説。

かぶりの服を着るときの手順

Tシャツやセーターなどのかぶりの服は、袖だけでなく頭を通す動作も必要になります。

  1. 患側の腕を通す: 衣服をたぐり寄せ、右腕を袖に通す。肩を無理に上げないよう注意する。
  2. 健側の腕を通す: 左腕を袖に通す。可能であれば本人に動かしてもらう。
  3. 頭を通す: 襟元を十分に広げ、顔や耳に引っかからないように頭を通す。
  4. 衣服を整える: 背中やお腹側の裾を下ろし、しわや締めつけがないか確認する。

頭を通す際は、首を無理に曲げたり、衣服を強く引っ張ったりしないようにしましょう。

片麻痺がある高齢者のかぶりの服を着る更衣介助手順。患側の右腕から袖を通し、次に健側の左腕を通して、最後に頭を通す3ステップをイラストで解説。

服を脱ぐときの手順

衣服を脱ぐときは、基本的に着るときと反対の順番で行います。

前開きの服の場合

  1. ボタンやファスナーを外す。
  2. 健側である左腕から袖を抜く。
  3. 衣服に余裕をつくり、患側の右腕をゆっくり袖から抜く。

かぶりの服の場合

  1. 裾を胸元までたくし上げる。
  2. 襟元を広げ、顔に引っかからないよう頭から抜く。
  3. 健側の左腕から袖を抜き、最後に患側の右腕から抜く。

いずれの場合も、麻痺側の腕を引っ張って衣服を脱がせないことが重要です。

本人が動かせる部分は自分で行ってもらい、介助者は衣服を操作して動きを補助することを意識しましょう。

また、痛みや強い抵抗がある場合は無理に続けず、衣服の形状や介助方法を見直すことが大切です。

ズボンの更衣介助のやり方

ズボンの更衣介助では、足を通す順番だけでなく、腰まで引き上げる際の姿勢や転倒予防が重要です。

特に片麻痺がある方は、片足で身体を支えることが難しい場合もあります。ここでは、右片麻痺がある方を例に、安全な介助方法を解説します。

ズボンを履くときの手順

ズボンを履くときも、上衣と同じく「着患脱健」が基本です。患側である右足から通すことで、動かしにくい足への負担を軽減できます。

  1. 安定した姿勢を整える: 椅子やベッドに深く座り、両足を床につける。必要に応じて背もたれなどで姿勢を支える。
  2. 患側の足から通す: ズボンの右側をたぐり寄せ、右足のつま先から通す。足首や膝を無理に引っ張らない。
  3. 健側の足を通す: 左足をズボンに通し、両膝付近まで引き上げる。
  4. 腰まで引き上げる: 安全に立てる場合は、手すりなどを使って立位を安定させ、ズボンを腰まで引き上げる。
  5. 衣服を整える: ウエストのねじれや締めつけ、裾の引っかかりがないか確認する。
片麻痺がある高齢者のズボンを履く更衣介助手順。座位で姿勢を整え、患側の右足からズボンを通し、次に健側の左足を通す。安全に腰まで引き上げて衣服を整える5ステップをイラストで解説。

立位での引き上げが難しい場合は、無理に立たせず、座位で左右に体重を移動したり、臥位で寝返りを利用したりする方法を検討しましょう。

ズボンを脱ぐときの手順

ズボンを脱ぐときも、基本的に健側から脱ぎ、患側を最後にする「脱健着患」の考え方を用います。

  1. 安全な姿勢で、ズボンを腰から太もも付近まで下ろす。
  2. 椅子やベッドに座り、ズボンを膝から足首まで下ろす。
  3. 健側の左足からズボンを抜く。
  4. 最後に患側の右足から、ゆっくりズボンを抜く。

ズボンを脱がせる際は、足を引っ張るのではなく、衣服をたぐり寄せて足から外すことがポイントです。

また、靴下や靴を脱ぐ必要がある場合は、足元の安全を確認しながら進めましょう。

立位が不安定な場合の対応

ズボンの更衣介助で特に注意したいのが、立位での転倒です。

立ち上がりや立位保持が不安定な方に対して、ズボンを引き上げるためだけに無理に立ってもらう必要はありません。

例えば、ベッド上で左右に寝返りをしてもらい、片側ずつズボンを引き上げる方法があります。座位が安定している場合は、左右への体重移動を利用する方法も選択肢です。

介助前には、ベッドの高さや車いすのブレーキ、足元の障害物などを確認しましょう。

大切なのは、立って着替えることではなく、本人が安全にできる方法を選ぶことです。 介助量が多い場合は、無理に一人で対応せず、必要に応じて複数人での介助を検討しましょう。

片麻痺がある方の更衣介助で注意したいこと

片麻痺がある方の更衣介助では、「脱健着患」の順番を守るだけでなく、麻痺側の関節を保護し、安定した姿勢で、本人の動きを活かすことが大切です。

特に肩関節への負担や座位バランスの崩れには注意が必要です。

麻痺側の肩や腕を無理に引っ張らない

片麻痺がある方は、肩周囲の筋力低下や筋緊張の変化によって、腕を動かしにくくなっている場合があります。

その状態で腕を強く引っ張ったり、無理に持ち上げたりすると、肩関節の痛みや軟部組織の損傷につながるおそれがあります。

更衣介助では、次のポイントを意識しましょう。

  • 麻痺側の腕を引っ張って衣服を着脱させない
  • 肩や肘を支えながら、無理のない範囲で動かす
  • 袖をたぐり寄せ、衣服を腕に近づける
  • 痛みや抵抗がある場合は無理に続けない

「腕を動かして服を着せる」のではなく、「服を動かして腕を通す」という意識が重要です。

姿勢とバランスを整えてから介助する

更衣介助では、袖を通したりズボンを引き上げたりする際に、身体が前後左右へ動きます。

特に片麻痺がある方は、体幹の支持力が低下し、座位バランスを崩しやすい場合があります。

介助前には、椅子やベッドの高さを調整し、可能であれば両足の裏が床につく姿勢を整えましょう。

また、介助者は本人の身体を支えやすい位置に立ち、必要に応じて体幹や骨盤を支えます。

姿勢が崩れたまま着替えを進めず、一度動作を止めて姿勢を整えることが転倒予防につながります。

座位が不安定な方の場合は、臥位の姿勢や、ギャッジアップを利用した姿勢など、安全に行える方法で更衣介助することも選択肢に入れましょう。

本人ができる動作を活かす

更衣介助では、安全を確保しながら、本人ができる動作を積極的に活かすことが大切です。

例えば、

  • 健側の手で衣服を持つ
  • 袖を引き上げる
  • ボタンを留めるなど

できる部分は本人に行ってもらいます。

介助者はすべてを代わりに行うのではなく、「左手で服を持ってみましょう」など、一つずつ具体的に声をかけると動作を理解しやすくなります。

時間がかかっても、本人のペースを尊重しましょう。

更衣介助は、単に着替えを終わらせるための支援ではありません。日常生活の中で身体を動かす機会をつくり、自立した生活を支える大切な介助でもあります。

更衣介助を楽にする衣服選びと環境調整

更衣介助を楽にするためには、介助方法を工夫するだけでなく、本人の身体機能に合った衣服を選び、着替えやすい環境を整えることも大切です。

衣服や環境を少し変えるだけで、本人ができる動作が増え、介助者の負担も軽減できる場合があります。

着脱しやすい衣服の特徴

片麻痺や関節の動かしにくさがある方は、衣服の形状によって着替えの難易度が大きく変わります。

衣服を選ぶ際は、次のポイントを意識しましょう。

  • 前開きの服: 腕を大きく持ち上げずに着脱しやすい
  • 伸縮性のある素材: 腕や足を通す際の抵抗を減らせる
  • ゆとりのあるサイズ: 袖やズボンに手足を通しやすい
  • 操作しやすい留め具: 大きめのボタンや面ファスナーなどを活用する
  • ウエストがゴムのズボン: 留め具の操作が少なく、着脱しやすい

ただし、大きすぎる衣服は裾を踏んだり、動作の妨げになったりすることもあります。

着替えやすさだけでなく、着用中の安全性や本人の好みも大切にしましょう。

座る場所・室温・プライバシーへの配慮

更衣介助を行う場所は、身体を安定させやすい環境が基本です。

椅子を使用する場合は、ぐらつきがなく、足底が床につきやすい高さのものを選びましょう。ベッド上で行う場合も、座位の安定性や転落の危険がないか確認します。

また、着替えの途中で身体が冷えないよう、室温を調整し、必要な衣服やタオルを事前に準備しておくことも重要です。

更衣介助では、本人の羞恥心や尊厳への配慮も欠かせません。

カーテンや扉を閉め、着替えていない部分はタオルなどで覆い、肌の露出を必要最小限にしましょう。

介助を始める前に声をかけ、本人の希望を確認することも大切です。

介助しやすい環境とは、介助者にとって楽なだけでなく、本人が安心して着替えられる環境です。

更衣介助を楽にする衣服選びと環境調整のイラスト。前開きの服や伸縮性のある衣服、ウエストゴムのズボン、安定した椅子、室温調整、プライバシーへの配慮を紹介。

更衣介助でよくある質問

更衣介助では、基本的な手順を理解していても、ご利用者様の身体状況や気持ちによって対応に迷うことがあります。ここでは、介護現場や在宅介護でよくある3つの疑問に回答します。

Q1|脱健着患は必ず守らなければいけませんか?

脱健着患は、片麻痺がある方の更衣介助における基本原則ですが、必ずしもすべての方に当てはまるわけではありません。

痛みや関節の拘縮、衣服の形状、本人ができる動作によっては、別の順番の方が負担を軽減できる場合もあります。

大切なのは順番を守ること自体ではなく、安全で無理なく着替えられることです。 本人の状態に合わせて柔軟に対応しましょう。

Q2|片麻痺がある方は座って着替えた方がいいですか?

立位でバランスを崩しやすい方は、座って着替えることで転倒のリスクを減らせます。

ただし、座位でも身体が傾いたり、姿勢を保てなかったりする場合は注意が必要です。

足底が床につく安定した椅子を使用し、必要に応じて背もたれなどを活用しましょう。座位保持が難しい場合は、ベッド上で横になって着替える方法も選択肢になります。

Q3|着替えを嫌がる場合はどうすればいいですか?

まずは、着替えを嫌がる理由を確認しましょう。

寒さや痛み、疲労、羞恥心、着替える必要性が伝わっていないことなどが原因の場合もあります。

無理に進めず、本人の気持ちを確認しながら、室温の調整や声かけ、時間帯の変更などを試してみましょう。

本人の意思を尊重し、安心して着替えられる状況を整えることが大切です。

まとめ|更衣介助は本人の動きを活かすことが大切

更衣介助では、「脱ぐときは健側から、着るときは患側から」という脱健着患が基本となります。ただし、手順を守ることだけにとらわれず、ご利用者様の身体状況に合わせた対応が大切です。

特に片麻痺がある方の場合は、麻痺側の肩や腕を無理に引っ張らず、安定した姿勢で介助しましょう。また、着脱しやすい衣服を選び、環境を整えることも介助負担の軽減につながります。

そして何より重要なのは、本人ができる動作まで介助しないことです。

まずは次の更衣介助から、本人の動きをよく観察し、必要な部分だけを手伝うことを意識してみましょう。

小さな工夫の積み重ねが、安全で快適な更衣介助と自立支援につながります。

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この記事を書いた人

介護に関わる全ての人へ。
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理学療法士が現場で培った“考え方と介護技術”を伝える実践ブログです。

合同会社やしのき 代表
理学療法士/訪問看護ステーション・福祉用具貸与事業所を運営。
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