厚生労働省は8月28日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、2027年度介護報酬改定に向けた介護現場のカスタマーハラスメント対策を議論した。介護報酬や運営基準を通じ、未然防止と発生時の対応を実効性のあるものにする方策を検討する。
介護現場では、職員が利用者や家族から暴言、暴力、著しい迷惑行為などを受けるケースがある。特に訪問介護、訪問看護、居宅介護支援では、職員やケアマネジャーが利用者宅で一人になることがあり、安全確保が課題となっている。
現在、訪問介護と訪問看護では、利用者や家族等の同意を得たうえで、暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為などが認められる場合に、複数名でサービスを提供した際の報酬上の評価が設けられている。
訪問介護では、条件を満たして2人の訪問介護員等がサービスを提供した場合、所定単位数の100分の200を算定できる。訪問看護では、同行する職種や訪問時間に応じた複数名訪問加算が設けられている。
ただし、複数名でのサービス提供は利用者側の自己負担増につながるため、利用者や家族等の同意が前提となる。厚労省は、実際の算定率が低いことを課題として挙げた。
一方、ケアマネジャーが安全確保のために複数名で利用者宅を訪問しても、現在は介護報酬上の加算がない。地域医療介護総合確保基金を活用した経費支援はあるものの、2025年度補正予算による事業であり、継続的な予算確保が課題となっている。
厚労省の資料では、6月1日に埼玉県でケアマネジャーが利用者宅で危害を加えられ、死亡した事案にも触れている。今後は訪問介護や訪問看護だけでなく、ケアマネジャーを含む介護従事者の複数名訪問や安全対策をどのように支えるかが検討される。
カスタマーハラスメント対策を巡っては、改正労働施策総合推進法が10月1日に施行される。介護事業者を含むすべての事業主に、職員を保護する方針の明確化、相談窓口の整備、事実確認、被害を受けた職員への配慮、再発防止などが義務付けられる。
介護現場では、職員の安全確保だけでなく、利用者に必要なサービスを継続する視点も欠かせない。介護事業者は、正当な理由なくサービス提供を拒否できないとされているため、どのような場合にサービスの中止や提供方法の変更が認められるかも論点となった。
厚労省は、運営基準における安全対策の位置付けや、サービスを提供しない場合の柔軟な対応について検討する必要性を示している。
また、事業所だけでは対応が難しいケースに備え、自治体、地域包括支援センター、医師、ケアマネジャー、法律の専門家、警察など、地域の関係機関との連携を進める方策も検討する。
現段階では、複数名訪問に対する新たな加算や、サービス提供を中止できる具体的な条件が決まったわけではない。今後の議論で、職員の安全と利用者へのサービス継続を両立する仕組みがどこまで具体化されるかが焦点となる。
