糞便塞栓
ひとことでいうと
糞便塞栓
糞便塞栓とは、硬くなった便などが直腸や大腸にたまり、自力で十分に排出することが難しくなった状態です。英語では「Fecal Impaction」と呼ばれます。
慢性的な便秘が背景にあることが多く、高齢者でもみられる排便トラブルの一つです。一方、日本の外来患者を対象とした報告では、糞便塞栓が確認された患者の中に、便秘を訴えていなかった人も含まれていました。
直腸の不快感や肛門痛などがみられることがありますが、症状の現れ方は一様ではありません。
また、便が詰まっているにもかかわらず、その周囲から軟らかい便や便汁が漏れ出すことがあります。 これを「溢流性便失禁(いつりゅうせいべんしっきん)」などと呼び、単純な下痢と見誤らないことが重要です。糞便塞栓に伴う溢流性便失禁は、認知症のある高齢者でも注意が必要とされています。
「宿便」と同じもの?
日常会話では、腸内に便がたまっている状態を「宿便」と表現することがあります。
一方、糞便塞栓は、排出できない便塊が直腸や大腸に貯留している状態を表す医学的な用語です。
そのため、「何日も便が出ていない=糞便塞栓」とは限りません。また、反対に便が少量出ているからといって、糞便塞栓を否定できるわけでもありません。
実際の診療では、症状や経過だけでなく、必要に応じて直腸診や画像検査などによって便の貯留状態を確認します。国内の臨床報告でも、直腸診、腹部単純X線、腹部CTなどによって糞便塞栓が診断されています。
現場で知っておきたいポイント
介護現場では、「便が出ているから便は詰まっていない」と判断しないことが重要です。
硬い便が直腸内などにたまっていても、その周囲から軟便や便汁が漏れることで、一見すると「下痢をしている」ように見える場合があります。
排便回数だけでなく、便の量や形状、腹部膨満、腹痛、肛門周囲の状態、食事・水分摂取量、下剤の使用状況、普段の排便パターンなどをあわせて観察します。便の性状は、ブリストル便形状スケールを用いて記録すると共有しやすくなります。
糞便塞栓が疑われる場合には、介助者だけで判断して処置を行うのではなく、医師・看護師などへ状態を共有します。
特に強い腹痛、嘔吐、著しい腹部膨満、血便、全身状態の変化などがある場合は、「いつもの便秘」と決めつけず、速やかに医療職へ相談することが大切です。
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参考情報・参考文献
足立亘ほか「外来患者における糞便塞栓の臨床的特徴」日本大腸肛門病学会雑誌
2022年・75巻7号・327–332頁
参照日:2026年9月17日
日本消化管学会「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」
2023年
参照日:2026年9月17日
