溢流性便失禁
ひとことでいうと
溢流性便失禁
溢流性便失禁とは、直腸などに硬い便がたまって排出しにくくなり、その周囲を通った軟らかい便や便汁が漏れ出す状態です。
「溢流(いつりゅう)」には、あふれて流れ出るという意味があります。
特に糞便塞栓がある場合に起こることがあり、本人が便意や漏れていることを十分に感じられないケースもあります。日本大腸肛門病学会のガイドラインでも、直腸感覚が低下して便意を感じにくく、糞便塞栓を生じた結果、溢流性便失禁として漏出性便失禁が起こる場合があると説明されています。
重要なのは、軟便や水様便が出ているからといって、必ずしも「下痢」とは限らないことです。
便が詰まっているにもかかわらず便汁などが漏れている場合があるため、排便回数や便の性状だけでなく、それまでの排便状況も含めて確認する必要があります。
「下痢」とどう見分ける?
溢流性便失禁では、軟らかい便や水様の便が漏れることがあるため、見た目だけでは下痢と区別しにくい場合があります。
しかし、その背景には直腸などに排出できない便がたまっている糞便塞栓が隠れていることがあります。
国内の糞便塞栓患者60例を調べた研究では、8例に溢流性便失禁が確認され、特に認知症を併存する患者で注意が必要と報告されています。
そのため、「水っぽい便が漏れた」という情報だけで判断せず、それ以前に便秘が続いていなかったか、十分な量の便が出ていたか、腹部膨満や排便困難がなかったかなどを確認することが重要です。
また、溢流性便失禁が疑われるからといって、介助者だけで糞便塞栓の有無を判断するのではなく、医師・看護師などへ状態を共有し、必要な評価につなげます。
現場で知っておきたいポイント
介護現場では、オムツやパッドに軟便・水様便が付着していると「下痢」と記録してしまうことがあります。
しかし、便秘が続いたあとに少量の軟便や便汁が繰り返し漏れている場合には、溢流性便失禁の可能性も考える必要があります。
確認したいのは、そのときの便だけではありません。
最後に十分な量の排便があったのはいつか、普段の排便回数、便の量・性状、腹部膨満、排便困難、下剤・浣腸の使用状況などを経時的に確認することが大切です。便失禁診療ガイドラインでも、日常の排便習慣や便性状、下剤・浣腸などの使用状況を含む詳細な排便記録が推奨されています。
便の性状についてはブリストル便形状スケールを使い、排便記録表と組み合わせると情報共有しやすくなります。
「便が漏れる=下痢」と決めつけず、便秘や糞便塞栓が隠れていないかという視点を持つことが重要です。
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参考情報・参考文献
日本大腸肛門病学会「便失禁診療ガイドライン2024年版(改訂第2版)」
2024年
参照日:2026年9月19日
安達亙・塩澤秀樹・小松修「外来を受診したfecal impaction症例の臨床像」日本大腸肛門病学会雑誌
2022年・75巻7号・327–332頁
参照日:2026年9月19日
