厚生労働省は11月6日の社会保障審議会介護給付費分科会で、介護現場のカスタマーハラスメント対策に関する案を示した。職員の安全を確保しながら必要な介護サービスをつなぐため、提供の継続が難しい場合の考え方や、事業所としての対応を明確にする内容である。
本サイトが9月2日に報じた検討開始に対し、今回は、段階的な対応や組織としての判断、疾病・障害の背景への配慮を、運営基準の解釈通知などに明記する方向が具体案として示された点が新しい。
■提供拒否の理由と段階的な対応を整理する案
厚労省の資料では、正当な理由のないサービス提供拒否が禁止されていることを踏まえ、その「正当な理由」の考え方を明確化するとしている。すでにサービスを提供している利用者への継続が困難になった場合も、事案の状況に応じて段階的に対応を検討することを、運営基準の解釈通知などに示す案である。
現時点で新たな扱いが決定したものではない。資料は具体的な判断や対応について、今後の調査研究などを通じて具体化し、関係するマニュアルに反映することも挙げている。今回の案をもって、事業所が一律に契約を解除できるようになったと受け取ることはできない。
■疾病や障害の背景に配慮し、安全も守る
認知症などの疾病や障害特性、環境要因を背景とする言動には、その背景を踏まえた対応が必要となる。一方、そのような場合でも、職員に危険が及ぶおそれがあれば安全確保の対応を講じるという考え方を示している。
判断が難しいケースを現場の職員個人に委ねず、施設・事業所として検討し、必要に応じて関係者と連携することも明確化する案である。利用者への支援と職員の安全を、どちらか一方だけの問題として扱わないことが焦点となる。
■事業所だけで抱え込まない体制へ
対応が難しい事案では、市町村・保険者、地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療・福祉の専門職、警察や法律専門職などと、内容に応じて連携する考え方も示された。平時から相談・支援先につながれるようにすることを含む案である。
今回の論点は、ハラスメント発生後に個々の職員の対応力へ頼るのではなく、組織の判断と地域の支援をどう結び付けるかにある。介護事業者にとっては、今後示される具体的な基準や通知を確認し、自事業所の相談・連携体制との関係を整理していくことになる。
