厚生労働省は2026年10月30日、2024年度の国民医療費を公表した。総額は48兆8,100億円で、前年度より7,185億円、1.5%増加した。人口一人当たりでは39万4,300円となり、前年度から7,600円、2.0%増えている。公表は2026年であるが、集計対象は2024年度の医療費である。
■ 「国民医療費」は何を集計した数字か
国民医療費は、保険診療の対象となり得る病気やけがの治療費を推計した統計である。医療保険などの給付だけでなく、公費負担や患者負担も合算する。今回の金額は患者が窓口で支払った額だけを示すものではない。
医科・歯科の診療、薬局調剤、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費などを含む。一方、正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種など、傷病の治療以外の費用は含まれない。厚労省の報道発表資料は、対象範囲と速報の概算医療費との違いを説明している。
■ 2025年度の概算医療費とは区別が必要
速報として公表される「医療費の動向」の概算医療費に対し、国民医療費は各制度の決算額に基づき、労働者災害補償保険なども対象とする確定値に位置づけられる。既に公表された2025年度の概算医療費と今回の数字は、年度だけでなく対象範囲や集計の段階も異なる。両者をそのまま並べて、増減や修正の有無を判断することはできない。
■ 介護・医療の現場で読む際の注意点
結果の概要によると、国内総生産(GDP)に対する国民医療費の比率は7.60%で、前年度の7.76%を下回った。医療費の総額が増えていても、GDPに対する比率まで同じ方向に動くとは限らない。
また、介護保険制度の開始に伴い介護保険の費用に移ったものは、2000年度以降の国民医療費には含まれていない。介護と医療の支出全体を足し合わせた数字と受け止めないことが重要である。人口一人当たりの金額も、個々の患者の自己負担額や利用額を表すものではない。対象年度、費用の範囲、総額と割合の違いを分けて読むことで、現場や利用者への説明に使いやすくなる。
