記憶障害
ひとことでいうと
記憶障害
記憶障害とは、情報を取り込んで覚える記銘、覚えた内容を保つ保持、必要な内容を思い出す想起などの記憶の過程が損なわれた状態です。病気の名前ではなく症状を表す言葉で、どの種類の記憶が、どの程度難しくなるかは原因や本人の状態によって異なります。
記憶には、体験した出来事、言葉の意味や知識、身につけた技能、これから行う予定など、さまざまな側面があります。新しいことを覚えにくい、過去の出来事を思い出せない、約束や服薬の予定を忘れるなどの形で生活に影響します。すべての記憶が同じように失われるとは限りません。
認知症でみられるほか、脳卒中や頭部外傷などによる高次脳機能障害でも生じます。注意が十分に向かず情報を取り込めない場合には、記憶の問題のように見えることもあります。本人の訴え、家族からの情報、生活場面の観察、専門的な検査を合わせて特徴を確認します。
加齢に伴う物忘れと生活に支障を来す変化は区別して考えます。進行する変化や繰り返す困難がある場合は、年齢だけで説明せず相談します。保たれている力を生かし、手帳や予定表、物の定位置などを用いて、安心して生活できる方法を整えます。
覚える負担を減らし、保たれている力を生かす
支援を考えるときは、何を忘れたかだけでなく、いつ、どの場面で、どのような手がかりがあれば思い出せたかを確認します。口頭の説明より写真の方が伝わりやすい人もいれば、慣れた動作を続けられる人もいます。記憶の得意な側面を生活の支えに利用します。
手帳、カレンダー、メモ、アラームなどは、記憶を補う外的な手段です。道具を用意するだけでなく、本人が見つけやすい位置に置き、使う場面や確認方法を一緒に練習します。複数の記録場所を増やすと混乱することがあるため、記録と確認の場所をそろえます。
新しい行動を覚える際には、失敗を繰り返させるより、適切な手がかりを使って成功しやすい手順にする方法が検討されます。支援の効果は個人差があり、訓練だけで記憶の問題が解消するとは限りません。生活の安全と本人の希望を基準に、家族と専門職が継続して方法を見直します。
現場で知っておきたいポイント
忘れたことを責める前に、本人が情報を理解し、確認できる条件を整えます。記録を使える仕組みを生活の流れに組み込むことが大切です。
- 予定は一つのカレンダーや手帳にまとめ、毎日一緒に確認する。
- よく使う物は定位置に置き、必要に応じて写真や表示をつける。
- 説明は短くし、重要な内容は文字や図でも残す。
- 服薬や火の使用は忘れた場合の危険を考え、確認方法を決める。
- 思い出せた手がかりや、うまくできた手順を支援者間で共有する。
同じ質問が繰り返されても、試すような質問を重ねず、必要な情報を落ち着いて伝えます。本人が不安を感じていることもあるため、表情や反応を見ながら安心できる対応を考えます。
忘れる頻度が増える、生活上の支障が続く場合は医療機関に相談します。急な混乱や反応の変化を伴うときは、体調の急変も考えて医療職へ速やかに報告します。
関連する用語
参考情報・参考文献
日本認知神経科学会『認知神経科学』長田乾「記憶障害」
記銘・保持・想起、記憶の種類、症状としての位置付けと英語表現を確認しました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/12/2/12_2_91/_pdf
参照日:2026年10月11日
国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター「医学的リハビリテーションプログラム」
記憶障害の評価、環境調整、外的補助手段、誤りのない学習を確認しました。
https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/how04/medlegal/
参照日:2026年10月11日
国立長寿医療研究センター「よくある質問・Q&A」
加齢による物忘れと、進行する変化や生活に影響する症状の違い、相談の目安を確認しました。
https://www.ncgg.go.jp/dementia/about/answer.html
参照日:2026年10月11日
