NECは10月22日、患者ごとに設計する経口投与型のがん治療用ワクチン「NECVAX-NEO1」について、トリプルネガティブ乳がんを対象とした第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験のデータを公表した。標準的な薬物療法に追加して投与する開発段階の治療であり、飲み薬だけでがんを治すという発表ではない。
■患者ごとのがんの目印を狙う
NECVAX-NEO1は、患者のがんに固有の「ネオアンチゲン」を標的とする。AIで候補を選び、弱毒化した細菌を利用してその情報を届け、免疫細胞の反応を促す設計である。感染症を防ぐ一般的なワクチンとは目的が異なり、すでにがんがある患者の治療に用いることを目指している。
今回の対象は、早期トリプルネガティブ乳がんの患者8人である。手術前に化学療法と免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブによる治療を受け、その途中からNECVAX-NEO1を追加した。経口投与であっても、手術や点滴治療を置き換える試験ではない。
■8人中5人で病理学的完全奏効
公表された学会ポスターでは、手術時点で8人中5人に病理学的完全奏効(pCR)が認められた。標的としたネオアンチゲンに対する免疫反応も確認された。成果は10月23日から27日にマドリードで開かれる欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の年次会議で発表される。
pCRは、治療後に手術などで採取した組織を調べ、がんが残っている兆候が見つからない状態を指す。ただし、この評価だけで将来の再発がないことや、治癒したことまで確定するわけではない。
■有害事象も報告、効果の上乗せは未確定
ポスターには、NECVAX-NEO1との関連があると評価された有害事象として、グレード3の免疫介在性副腎不全1件、グレード2の嘔吐、疲労、自己免疫性肝炎の計3件が記載されている。また、投与を開始した8人のうち3人がNECVAX-NEO1の投与を中止し、その理由は2人が有害事象、1人が医師の判断だった。「飲めるから副作用がない」とは受け取れない。
臨床試験登録では、比較対照群を置かない単群の試験とされている。他の抗がん治療も併用しているため、5人のpCRをワクチン単独の効果とみなしたり、標準治療より優れていると結論づけたりすることはできない。
■一般診療への導入ではなく、検証の途上
臨床試験登録での予定参加者数は計28人である。今回の発表は、患者ごとに設計した経口ワクチンを既存治療に組み合わせる研究の進展を示す一方、承認や一般診療での提供開始を知らせるものではない。今後は、より多くの患者での安全性と有効性、長期的な経過の検証が重要となる。
