宗教団体「エホバの証人」は9月18日、他人の血液に由来する赤血球、白血球、血漿、血小板の4つの主要成分を医療に使用するかどうかを、信者個人の判断に委ねると発表した。これまで信者は、全血だけでなく主要成分の輸血も受け入れない立場だった。全血輸血を拒む立場は、今回も変えていない。
教団は、血液の主要成分を受け入れるかどうかは信者本人が決めることで、地域の信者組織はその判断に関与しないと説明している。また、他人に血液成分や血液分画を提供するための献血についても、各自が判断するとした。3月には、医療目的で自己血を使うかどうかも個人の判断に委ねていた。
日本赤十字社によると、現在の国内医療では、患者に必要な成分だけを補う「成分輸血」が主流だ。医療機関への輸血用血液製剤の供給は、赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤でほぼ全てを占める。今回、これらの成分を信者が受け入れられるようになったことについて、元信者らを支援する「エホバの証人問題支援弁護団」は、輸血拒否の教理が事実上撤廃されたと評価している。
一方、弁護団は、今後の選択肢が広がることと、過去に起きた問題への対応は別だと指摘する。9月21日に公表した見解では、輸血を拒否したことで死亡したり、重い障害を負ったりした人とその家族への説明や補償を教団に求めた。また、過去に輸血を受け入れたことで信者との交流を絶たれた人についても、今回の変更後にどう扱うのか明らかになっていないとしている。
子どもの意思をどう守るかも課題として挙げた。弁護団が2023年に公表した調査には、親から輸血拒否の意思を示すカードを持つよう求められたという回答が寄せられている。今回の見解でも弁護団は、信者の家庭で育つ未成年者が、親とは独立して成分輸血を受ける判断をできるのか疑問を示した。
厚生労働省は、医師が必要と判断した子どもの輸血を保護者が拒むことは、ネグレクトに当たるとの見解を示している。保護者への説明を尽くしても治療に同意が得られない場合は、医療機関が児童相談所に速やかに連絡し、子どもの安全を確保する対応を求めている。
今回の発表によっても、信者全員が成分輸血を受け入れるわけではない。医療現場では成人の患者本人がどの製剤を受け入れるかを個別に確認するとともに、子どもの治療では、親の信仰上の意向と子どもの安全を分けて考える必要がある。
