東北大学は11月5日、歯の喪失が認知症発症に関わる人口レベルの影響を、既知のリスク因子と比較した研究を発表した。高齢者約4.7万人の追跡データによる推計で、口腔の健康維持を認知症予防の取り組みに位置付ける意義を考える成果である。
■全国22自治体の高齢者を追跡
大学の発表によると、日本老年学的評価研究(JAGES)の65歳以上47,293人を対象に、2013年から2022年まで約9年間のデータを解析した。歯の喪失は現在の歯数が20本未満と定義した。
比較したのは、国際的な認知症予防の議論で挙げられた14の修正可能なリスク因子のうち、データで評価できた12因子である。これらに歯の喪失を加え、同じ枠組みで影響を推計した。歯の状態だけで認知症の有無を判断する検査を開発した研究ではない。
■7.2%は個人の発症率ではない
歯の喪失の人口寄与割合は全体で7.2%と推計され、比較対象の中では抑うつ傾向、社会的孤立に次ぐ位置だった。人口寄与割合は、ある要因が存在しなかったと仮定した場合に、集団全体の発症のどの程度を防げた可能性があるかを示す指標である。
したがって、歯が20本未満の人の7.2%が認知症になるという意味ではない。また、観察データに基づく推計であり、歯科治療や口腔ケアによって認知症を7.2%減らせると実証したものでもない。
■口腔保健を予防の視点から考える
介護現場でも身近な口の健康を、食事や生活の支援に加え、認知症との関連から捉える研究である。大学は、将来の予防ガイドラインや公衆衛生施策への反映に期待を示しているが、今回の発表でガイドラインが変更されたわけではない。研究成果は11月2日に学術誌JAMDAへ掲載された。
