京都大学は2026年11月4日、レム睡眠行動障害のある人の脳で、睡眠に関わる脳幹の小さな領域に萎縮がみられると発表した。死後脳から作った詳細な解剖図を、生きている人のMRI解析に生かした研究である。成果は10月8日に学術誌「Brain Communications」に掲載された。
■睡眠中の症状と神経疾患の関わりを調べる
レム睡眠行動障害では、通常は筋肉が脱力するレム睡眠中に、大声を出したり手足を激しく動かしたりする。京都大学の発表では、後にパーキンソン病やレビー小体型認知症などを発症する人が多く、神経疾患を早い段階で捉える手がかりとして注目されていると説明する。
ただし、脳幹には小さな神経核が複雑に入り組み、通常のMRIだけでは個々の領域を見分けにくい。研究グループは、どの部位に変化があるのかを調べるため、位置の目安となるアトラスを作成した。
■患者98人と健常高齢者114人のMRIを比較
研究の詳細資料によると、死後脳10例を高磁場MRIで撮影し、睡眠や覚醒に関わる7つの神経核の位置を示した。組織の顕微鏡観察でも位置を確かめ、このアトラスを使って60歳以上の孤発性レム睡眠行動障害の患者98人と健常高齢者114人の頭部MRIを解析した。
比較した領域のうち、背外側被蓋核の腹側部(LDTgV)で最も強い萎縮がみられた。死後脳の組織では、この領域に、マウスのレム睡眠に関わる神経細胞と同じタンパク質が豊富に存在していた。ヒトのレム睡眠を担う部位の候補を示す結果である。
■将来の発症予測には経過を追う検証が必要
原著論文では、今回の解析はある時点の状態を比較した横断研究であると説明する。MRIで将来のパーキンソン病などの発症を確定できるようになったという結果ではない。今後、同じ参加者の経過を追い、発症予測に役立つかを検証する必要がある。
介護の現場でも関わる睡眠中の行動と神経疾患について、脳のどの部分が関係するかを探る知見が加わった。症状の仕組みを調べた今回の成果と、個人の診断や将来の発症を予測する検査の実用化は、区別して受け止める必要がある。
