順天堂大学などの研究グループは2026年11月1日、肺動脈のカテーテル治療「BPA」について、施設や術者の治療件数と合併症との関係を全国データで調べた結果を発表した。治療件数は医療機関の経験を知る手がかりになるが、今回の研究では、安全性との関係を単純には捉えられないことが示された。
■ 肺動脈を広げる治療を全国データで検証
対象は、肺動脈に血栓が残って血流が妨げられ、息切れなどを生じる慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する治療である。BPAは狭くなった血管などを小さなバルーンで広げる方法で、手術が難しい場合などの選択肢となっている。一方、血痰や肺障害などの合併症が起こることもある。
研究には、日本心血管インターベンション治療学会の全国登録データを使用した。2021~2024年のBPA5,403件を解析し、各治療時点から過去3年間の施設・術者それぞれの実施件数との関係を検討した。
■ 解析方法によって異なった結果
全体の751件、13.9%に何らかの治療関連合併症が記録された。施設を過去3年間の150件未満と150件以上に分けた主解析では、150件以上の施設で合併症の調整オッズ比が高かった。しかし、施設と術者の件数を連続的な数値として同時に評価すると、どちらにも独立した関連は認められなかった。
■ 件数が多い施設は危険、と結論できない
今回のデータでは、病変の形や処置の難しさなどを細かく評価できていない。施設と術者の経験も互いに関連しており、それぞれの影響を切り分けることは難しい。結果から、治療件数の多い施設ほど危険だとも、件数と合併症は無関係だとも結論づけることはできない。
■ 医療の質を捉える複数の視点
研究グループは、患者の背景、病変や手技の特徴、治療戦略、多職種チームの体制なども組み合わせた評価が必要としている。介護・福祉に携わる人が患者や家族と治療情報を共有する際にも、実施件数という一つの数字だけでは安全性の全体像を表せない点は重要である。
■ 出典
