東邦大学は2026年10月26日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者30人を対象に、下肢に装着するロボット「HAL」を用いた治療前後の歩行機能と生活の質(QoL)を調べた研究を発表した。2分間歩行距離は延長したが、QoLには統計学的に有意な変化がなかった。運動の検査値と本人が感じる暮らしの質を、分けて捉える重要性を示す結果である。
■歩こうとする動きを補助するHAL
ALSは筋力の低下が進行する病気で、移動や日常生活に必要な機能をできるだけ保つことが課題となる。HALは、体を動かそうとした際に皮膚表面に現れる微弱な電気信号をセンサーで検出し、脚の動きを補助する装置である。今回の研究は、こうした治療の後に歩行とQoLがどう変わるかを調べた。
■介助などで10m以上歩ける30人を評価
原著論文は10月14日、学術誌「Frontiers in Neurology」に掲載された。研究は単施設の観察研究で、独力では10m歩けないが、介助や歩行補助具を使えば10m以上歩ける成人など、所定の条件を満たした患者が対象である。すべてのALS患者に当てはまる結果ではない。
患者は4~5週間に9回のHAL治療を受け、HALを使わない日には通常の理学療法も行った。評価時の歩行テストはHALを装着せずに実施した。
■歩行距離は延長、QoLは有意差なし
2分間で歩けた距離の平均は治療前92.27mから治療後104.16mへ、約12m延びた。一方、10m歩行テストの速度や歩幅、歩行率には有意な変化がなかった。質問票SF-36で測ったQoLも、身体面・精神面・社会的役割の各指標に有意な変化は認められなかった。
■短期の数値と生活上の効果を区別する
研究にはHAL治療を受けない対照群がなく、歩行距離の変化をHALだけの効果とは断定できない。約12mの延長が生活上どれほど意味を持つかも不確実であり、病気の進行を抑える効果を示したものではない。
介護・福祉の現場にとっても、歩行の数値が良くなることと、本人の生活のしやすさや満足度が変わることは同じではない。今回の結果は短期間の評価であり、研究チームは、より多い人数と対照群、長期の経過観察による検証が必要としている。
