肝細胞がん治療、肝動注追加を第Ⅱ相で検証 主要評価項目は有意差なし

2026.10.31
肝細胞がんの肝動注併用試験をテーマに、肝臓の模式図と研究記録を配したイラスト

岡山大学は10月29日、切除が難しい肝細胞がんに対し、薬物療法の前に肝臓へ直接抗がん剤を届ける治療を加えた多施設共同の第Ⅱ相臨床試験の結果を発表した。がんの進行を抑える期間が延びる可能性が示された一方、主要評価項目では統計学的な有意差を認めなかった。

成果は「JHEP Reports」に8月29日付でオンライン掲載された。10月29日は大学の発表日であり、試験の実施日や治療の承認日ではない。

■ 70人を対象に治療の追加を比較

切除不能の肝細胞がんでは、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブと血管新生を抑えるベバシズマブの併用が標準治療の一つである。今回検証したのは、この薬物療法に肝動注化学療法を先行させる方法だ。細い管を肝臓の動脈まで進め、抗がん剤シスプラチンを直接投与する。

対象は18歳以上で、全身状態や肝機能などの条件を満たす患者に限られた。試験には2021年12月〜2024年12月に70人が参加し、無作為に35人ずつへ割り付けられた。追加群はシスプラチンの肝動注を1回行ってから薬物療法を開始し、比較群は薬物療法のみを受けた。

■ 奏効率と無増悪生存期間は分けて読む

原著論文によると、主要評価項目の奏効率は追加群45.7%、比較群28.6%だった。数値上は高かったが、p値は0.095で、主要評価項目の達成には至っていない。奏効率は画像検査でがんが一定以上小さくなった人などの割合で、治癒率ではない。

探索的解析では、がんの進行または死亡までの期間をみる無増悪生存期間の中央値が8.3か月対6.6か月となり、追加群で有意に長かった。一方、全生存期間の中央値は28.1か月対31.0か月で有意差はなく、延命効果が確立したとはいえない。

■ 次の大規模試験での確認が必要

大学の詳細資料では、重い副作用(グレード3〜4)は20.0%対22.9%で同程度とし、治療関連死亡は報告されていない。ただし、70人の試験であり、あらゆる患者で安全性が確立したという意味ではない。

医療職が患者・家族へ研究成果を伝える際には、主要評価項目と探索的解析、病勢の抑制と生存期間を区別することが重要だ。今回の結果は新たな組み合わせをさらに検証する根拠であり、研究グループは、より大規模な第Ⅲ相試験での評価が必要としている。

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