給湯器の点検を装い、高齢者に不要な交換工事を契約させて代金をだまし取ったなどとして、警視庁は10月9日までに、東京都新宿区のガス機器販売会社「大安設備」の実質的経営者や社員ら計8人を詐欺などの疑いで逮捕した。
逮捕容疑の対象となったのは、70~80代の男女4人への勧誘など。給湯器の安全性への不安をあおり、交換工事代金計99万3300円を詐取するなどした疑いが持たれている。認知症や視覚障害のある人も被害に遭ったとされ、高齢者の暮らしを支える家族や介護関係者にとっても、見過ごせない問題だ。
■「危険だ」と不安をあおり、不要な工事を契約させた疑い
8人は共謀し、2025年3~9月、東京、京都、広島の3都府県に住む高齢者の住宅を訪問。一酸化炭素の濃度が危険だなどと虚偽の説明をして、給湯器の交換工事代金をだまし取るなどした疑いがある。
勧誘では、交換する必要がないにもかかわらず、一酸化炭素の数値が基準を大きく超えている、放置すると火事になるなどと説明していたとされる。
給湯器は日々の入浴や炊事に使う設備であり、安全性に問題があると言われれば、すぐに対応しなければならないと感じやすい。今回の事件では、こうした不安につけ込み、不要な契約を結ばせた疑いが問題となっている。
警視庁は8人の認否を明らかにしていない。逮捕段階の事件であり、容疑の内容と、捜査で今後明らかになる事項を区別する必要がある。
■突然の「無料点検」に注意
給湯器の点検商法については、国民生活センターも以前から注意を呼びかけている。
同センターが紹介する相談事例には、契約中のガス会社だと思って点検を依頼したところ高額な交換契約になったケースや、自治体から委託されたという業者に交換を勧められたケースがある。無料点検をきっかけに、不安をあおり、「今なら割引できる」と契約を急がせる手口も示されている。
無料であることや、ガス会社・自治体との関係を名乗ることだけで、訪問者を信用しないことが大切だ。国民生活センターは、電話や訪問で点検を持ちかける業者に、安易に点検させないよう勧めている。
実際に点検が必要か気になる場合は、訪問者が示した連絡先だけに頼らず、契約しているガス会社や給湯器のメーカー、販売会社へ、自分から確認する方法がある。
■その場で契約せず、確認する時間を確保する
突然業者が訪問してきた場合、国民生活センターはインターホン越しに点検を断ることを案内している。点検後に交換を勧められても、その場で契約せず、必要性や価格を十分に比較・検討することが重要だ。
家族と離れて暮らす高齢者には、「点検と言われても、いったん断って相談する」「危険だと言われても、その場で契約しない」といった対応を、普段から具体的に共有しておきたい。
また、業者の説明で不安になったときに連絡できる相手や、相談先の電話番号を手元に置いておけば、ひとりで判断を迫られる状況を避けやすくなる。
■契約後でも、早めに消費生活センターへ
すでに契約した場合も、解約できないと決めつけず、早めに相談することが大切だ。
訪問販売に該当する契約では、原則として法律で定められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、クーリング・オフの対象となる。期間を過ぎた場合でも、事実と異なる説明で契約させられたときなどは、取り消しができる場合がある。
適用は契約内容や勧誘の状況によって異なるため、契約書、見積書、領収書などを手元に置き、消費生活センターへ相談したい。相談窓口が分からない場合は、消費者ホットライン「188」で最寄りの窓口の案内を受けられる。
■介護現場では、暮らしの変化から気づく視点も
訪問介護や訪問看護、ケアマネジャーなどは、利用者の自宅で日常生活を支える立場にある。今回の事件を踏まえると、見慣れない工事の契約書がある、急に設備交換の話が出る、業者から繰り返し電話が来ているといった変化は、本人に状況を確認するきっかけになる。
本人が契約をどう理解しているか、何を不安に感じているかを落ち着いて聞き、意向を確かめながら家族や相談窓口につなぐことが、支援の一つとなる。
契約してしまったことを責めると、次の相談をためらわせるおそれもある。「困ったら話してよい」と伝え、被害が疑われる段階で相談できる関係をつくっておくことが、高齢者の暮らしを守るうえで重要だ。
