厚生労働省は10月9日、有料老人ホームの新たな登録制度に向け、登録基準や対象施設などの考え方を取りまとめた資料を検討会に示した。入居者が介護・医療サービスを自由に選べるよう、担当ケアマネジャーの変更を強要したり、施設と関係のある事業所の利用を入居条件にしたりすることを、不当な条件として扱う方針だ。
新制度はまだ施行されていない。厚労省は今後、政省令や自治体の条例などを整備し、2027年12月の施行を予定している。
■ 入居を条件にケアマネや医療機関の変更を求めない
資料では、ホームに併設する事業所や、運営法人と関係・提携のある介護事業所、居宅介護支援事業所、医療機関、訪問看護事業所、薬局などの利用を入居の条件にすることを、不当な条件として整理した。かかりつけ医や担当ケアマネジャーの変更を強要することも含まれる。
さらに、関係する事業所を利用した場合だけ家賃を軽減するなど、料金面で特定のサービスへ誘導する行為も対象とした。入院や心身の状態の変化を理由に、本人との合意なく居室を変更したり、契約を解除したりする条件も認めない方向だ。
ただし、地方部などで利用できる事業所が限られ、特定の事業所を使うことが事実上不可欠な場合は、その事情だけで不当な条件とは判断しないとしている。
■ 契約とケアプランの独立性も重視
運営基準案には、入居契約とケアマネジメント契約の独立性を確保するため、契約やケアプラン作成の手順書・ガイドラインを整えること、重要事項説明で入居希望者に明示することなどが盛り込まれた。近隣の介護事業所の情報提供も求め、ホームの関係事業者にサービスを限定したり、入居者の選択を妨げたりしないことを基準にする。
住まいと介護サービスの契約が別であっても、入居後に利用先を自由に選べなければ、入居者にとって実質的な選択肢は狭まる。今回の案は、契約条件だけでなく、説明や日々の運営にも目を向けている。
■ 日中の職員体制と夜間・緊急時の対応
人員面では、管理者と生活相談員をそれぞれ1人以上置き、提供する介護などの内容に応じた職員体制を確保する案を示した。夜間を除き、原則としてホーム職員が常駐することを想定している。
夜間・緊急時は、職員の配置またはオンコールで対応できる体制を求める。オンコールの場合も、連絡や通報装置によって状況を把握し、必要なときに職員などが出勤できることが前提となる。ホームが責任を持って速やかに対応することも明記した。夜間の対応が「職員の常駐」なのか「オンコール」なのかは、入居者や家族が施設を選ぶうえでも重要な情報になる。
■ 登録対象と情報公開の仕組みも整理
登録制度では、中重度の要介護者を入居対象とするホームに加え、一定以上の認知症や医療ニーズがある要介護者を入居対象とするホームも対象にする方針だ。すべての有料老人ホームが一律に同じ登録対象になるという意味ではない。一方、登録対象とならず従来の届出を行うホームにも、入居者の尊厳や適切な処遇に関わる事項を、おおむね同様に求める考えが示された。
登録申請では、入居対象者やホームが提供するサービス、提携先、職員配置などを確認する。新たなシステム上で申請・審査・情報公表まで扱い、利用者が条件を探しやすくする構想も盛り込まれた。
厚労省が示した予定では、制度の施行は2027年12月。既存の有料老人ホームには、対象施設の移行に向けて1年間の経過措置を設け、2028年12月に終了する。具体的な規定は今後の政省令などで変わる可能性がある。施設側には契約書や説明内容、提携先との関係、夜間の対応体制を確認する準備が求められる。
