大阪府豊中市は、生成AIが市民の悩みを聴く「話せる入口」の実証を2026年11月1日から始める。AIが困りごとへの答えを出すのではなく、気持ちを整理する対話を通じて、必要な人を人間の相談支援につなぐ試みである。市の案内は10月21日付で更新された。
■相談する前のためらいに着目
福祉の相談窓口があっても、本人が相談に踏み出せるとは限らない。市は、人に話しにくい、相談するほどではないと思う、困りごとを言葉にしづらいといった事情に着目した。夜間や休日の相談のしにくさも背景にある。
今回の実証は、市の「ケアと暮らしの重なりデザイン事業」の一環で、市、豊中市社会福祉協議会、株式会社ZIAIが連携して実施する。AIとの対話が地域の相談支援につながる入口として機能するかを確かめる取り組みだ。
■全市民が対象、24時間・匿名で利用
対象は豊中市民で、全市民に公開する。実証期間は2026年11月から2027年1月までの3か月間。利用者の費用負担はなく、24時間、匿名でAIと対話できる予定である。全国向けの相談サービスとして始まるわけではない。
市は11月1日に公式案内ページへ利用用のQRコードを掲載するとしている。10月27日時点では開始前である。利用する際は、同ページから案内される注意事項や個人情報の取り扱いを確認する必要がある。
■AIの傾聴と、人による支援を分ける
AIの役割は話を聴き、気持ちや考えの整理を支えることに限定される。悩みに対する回答や判断は行わない。本人の希望や状況に応じ、社会福祉協議会のCSW(コミュニティソーシャルワーカー)などの相談支援や、制度、専門機関、地域資源につなぐ仕組みである。
このため、「24時間利用できる」のはAIとの対話であり、人の相談員が24時間対応するとの発表ではない。介護・福祉の現場が利用者や家族へ紹介する場合も、AIに話せることと、専門職による相談・支援を受けることの違いを伝えることが重要になる。
■相談支援につながるかは、これから検証
市は、従来相談につながりにくかった人に届くか、話しやすい場になるか、人の支援につながるか、把握しにくかった課題を捉えられるかを検証する。安全性や運用体制も確認し、結果を踏まえて今後の展開を検討する方針だ。相談支援の改善効果が既に実証されたという発表ではなく、AIと地域の支援をどう結び付けるかが今回の焦点である。
