日本医療安全調査機構は、2026年10月の警鐘レポートNo.7「小児の急性腹症に関連した死亡」を公表した。腹痛や嘔吐などで受診した子どもの死亡事例をもとに、初期診断後の状態変化を捉え、診察と再評価につなぐ重要性を示した資料である。
厚生労働省は10月22日付の通知で公表を周知し、PMDAは10月28日に掲載を案内した。資料の作成月、通知日、掲載日はそれぞれ異なり、10月28日に新たな事故が起きたという発表ではない。
■ 小児の急性腹症に関連した死亡6例を分析
対象事例の概要によると、分析対象は幼児期から学童期の6例である。腹痛や嘔気・嘔吐などで受診し、腸管の絞扼などによる壊死や穿孔に関連して、当該医療機関の外来受診から12~24時間で死亡した事例が整理されている。
この6例は、医療事故調査報告書をもとに分析された事例数であり、小児の腹痛患者全体における発生率を示すものではない。個々の事例には死因が「疑い」とされるものもあり、すべてを同じ病態や経過として扱うことはできない。
■ 初期診断だけで経過を判断しない
機構作成の警鐘レポートは、胃腸炎や便秘症という初期診断が、その後の判断に影響する可能性を指摘する。痛みの訴えが減ったり、眠っているように見えたりしても、それだけで改善と捉えないことが論点となっている。
医療職に向けた対策として、処置後も腹痛や嘔吐が続く場合や、呼吸数・脈拍数などに異常がある場合の速やかな診察・再評価を挙げた。画像検査や外科的治療の適応を検討し、自施設で対応が難しい場合は高次医療機関への搬送を考慮するという内容である。
■ 引き継ぎと保護者への説明も再発防止の課題
レポートは、伝聞による引き継ぎだけでは状態を把握しにくいことや、子どもが症状を言葉で十分に伝えられないことにも触れている。医療チーム内で診断名を共有するだけでなく、その後の症状や観察情報を再評価につなげることが、資料を読む際の重要な視点である。
自宅で経過をみる場合については、普段と異なる様子や症状の持続があれば再受診するよう、医療職から保護者へ説明することを示した。対象は小児医療・救急診療であり、高齢者の腹痛にそのまま適用する指針ではない。
警鐘レポートは死亡事例から再発防止を考える資料である。対策がすべての事象を防げるとは限らず、個別の診療判断を置き換えるものでもない。小児に関わる医療職が、観察、引き継ぎ、保護者への説明を点検する材料として位置付けられる。
