量子科学技術研究開発機構(QST)は10月24日、分子標的薬トラスツズマブが効きにくくなった子宮体部漿液性がんについて、標的アルファ線治療による増殖抑制をマウスで確認したと発表した。日本医療研究開発機構(AMED)も26日に掲載した。人を対象とした治験の結果ではなく、動物実験の成果である。
■ 薬剤耐性を持つがんをマウスで再現
対象は、がん細胞の表面にHER2というタンパク質が多くある子宮体部漿液性がんである。研究では、患者由来のがん細胞株をマウスの腹腔内に移植し、腹膜にがんが広がる「腹膜播種」の状態を再現した。
トラスツズマブの投与で耐性を誘導し、細胞の採取・培養と別のマウスへの移植を繰り返して、薬剤が効きにくいモデルを作製した。患者由来の細胞を使っているが、患者本人に薬剤を投与した研究ではない。
■ 放射性物質を付加した薬剤で増殖を抑制
研究チームが用いたのは、トラスツズマブにアルファ線を放出するアスタチン211を付加した複合体である。HER2を標的とする抗体に放射性物質を組み合わせ、がん細胞のDNAを損傷させる仕組みを利用した。
実験では、生理食塩水、通常のトラスツズマブ、アスタチン211を付加した複合体をそれぞれ1回投与した。がん細胞の発光を画像で測定して比較したところ、前の2群では増殖した一方、複合体の投与群では増殖が抑えられた。
■ 人での安全性や有効性は今後の課題
今回確認されたのは、特定のがん細胞を使ったマウスモデルでの結果である。すべての子宮体がんに当てはまるものではなく、人で同様の効果が得られるかは、この研究から判断できない。
QSTは今後、臨床試験の実施に向けて安全性や有効性の検討を進めるとしている。現段階で新しい治療が受けられるようになったという発表ではない。患者や家族に情報を伝える際も、動物実験の成果と、診療で使える治療を区別する必要がある。
成果は「Journal of Nuclear Medicine」に10月24日付でオンライン掲載されたと発表されている。
■ 出典
