肺がんのCT画像と遺伝子情報を結ぶAI研究 広島大学、薬の候補探索へ

2026.10.27
肺のCT画像と遺伝子情報を結び付ける研究を表したシンプルな模式図

肺がんのCT画像を解析し治療後の経過を予測するだけでなく、その背景にどのような遺伝子の働きがあるのかを探る研究が進んでいる。広島大学は2026年10月26日、非小細胞肺がんのCT画像と遺伝子情報を結び付け、薬の候補探索につなぐAI解析基盤を開発したと発表した。新たな治療の承認や提供開始ではなく、公開データを用いた研究成果である。 出典:広島大学

■ 402例でモデルを作り、別の110例で検証

研究では、治療前のCT画像から腫瘍と周囲の形状、濃度、模様などを数値化した。こうした画像特徴を解析する手法はラジオミクスと呼ばれる。402例を基に予後予測モデルを構築し、独立した110例で性能を調べた。対象は非小細胞肺がんであり、すべての肺がんを一括して評価したものではない。

独立した110例でのC-indexは0.785だった。これは予後を見分ける性能の指標であり、「78.5%の患者が治る」「78.5%の確率で診断できる」という意味ではない。研究は既存の公開データを分析した後ろ向き研究で、診療の場でこの仕組みを使った患者の治療成績を比較した試験ではない。 出典:Medical Physics論文

■ 画像の特徴から薬の仮説を探る

続いて研究チームは、画像の特徴と遺伝子情報を照合した。細胞増殖や炎症などに関わる遺伝子群との関連を調べ、遺伝子の働きを調節する因子の活動から、110例を3つの状態に分類した。これは腫瘍の性質を理解するための探索的な分類である。

さらに薬剤データベースの情報を使い、それぞれの状態に関連する遺伝子の働きを打ち消す可能性がある薬の候補を計算機上で探索した。画像による予測と遺伝子の解析を別々に終わらせず、治療法を検討するための仮説へつなげた点が今回の研究の特徴である。

■ 実際の治療に使えるかは、今後の検証課題

大学は、より大規模な複数施設のデータで予測性能と再現性を確かめる必要があるとしている。薬の候補についても、細胞・動物実験や臨床データによる検証が必要であり、今回の解析だけで患者に対する治療効果が示されたわけではない。

介護・福祉・医療の現場で患者や家族に研究情報を伝える際は、「画像から薬を選べるようになった」と受け取られないよう、研究の段階を分けて理解することが重要である。本成果は、将来の個別化治療を目指す解析基盤の報告であり、現在の診療を置き換える仕組みではない。論文は10月6日にMedical Physicsへ掲載された。

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