iPS細胞で早老症の心臓病変を再現 京大などが立体組織の研究成果を発表

2026.10.29
iPS細胞由来の立体心臓組織を使った早老症研究を表す培養皿と細胞の概念図

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は2026年10月26日、大阪大学などとの研究グループが、早老症の一つ「プロジェリア」の心臓病変を、患者由来のiPS細胞から作った立体組織で再現したと発表した。今回の成果は、病気の仕組みを調べるための研究モデルの開発であり、患者に心臓組織を移植したという発表ではない。

■ 心筋だけでは捉えにくい変化を調べる

プロジェリアは、遺伝子の変異によって急速な老化や重い心血管障害が生じる、まれな疾患である。研究では、患者と健康な両親のiPS細胞から心筋細胞と心外膜細胞を作り、それぞれ立体的な心臓組織に組み立てた。

心外膜細胞の一部は、組織を支える線維芽細胞や血管平滑筋細胞へ変化した。心筋細胞だけでなく複数の細胞を含む点が特徴であり、細胞同士の関わりを含めて病変を調べることを目指している。

■ 培養の経過とともに病変の特徴が現れた

患者由来の組織では、培養28日目には検出されなかった異常タンパク質「プロジェリン」の蓄積が60日目に確認された。コラーゲンの増加や、電気刺激に応答する組織の割合の低下なども認められた。

一方、生物学的な老化の指標であるエピジェネティック年齢には、対照との明確な差がなかった。心臓の老化や病気のすべてを再現したわけではなく、研究グループは培養期間を延ばすことなどを今後の課題に挙げている。

■ 治療の提供ではなく、仕組みを理解する段階

研究論文は科学誌Biofabricationに2026年8月28日付でオンライン掲載されており、今回の研究所発表とは日付が異なる。期待されるのは、病変が進む過程の解析や治療法の評価への活用である。

介護・医療の現場でiPS細胞のニュースを読む際は、「病気を調べるモデル」と「患者に提供する治療」を分けて捉えることが重要である。今回の成果から、一般の高齢者の心疾患に対する治療効果や、臨床で使える時期が示されたとはいえない。

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