動脈血酸素分圧
ひとことでいうと
動脈血酸素分圧
動脈血酸素分圧(PaO₂)は、動脈血中に溶けている酸素が示す分圧です。肺から血液へ酸素を取り込む状態を評価する指標として、動脈血ガス分析で測定します。単位にはmmHg(Torr)が用いられます。酸素をどのくらい吸入しているかによって値が変わるため、検査条件が重要です。
PaO₂は、ヘモグロビンのうち何%が酸素と結合しているかを表す酸素飽和度(SaO₂)とは別の指標です。SpO₂はパルスオキシメータによって酸素飽和度を推定した値で、PaO₂を直接測っているわけではありません。PaO₂とSpO₂は同じ数値にはなりません。
PaO₂と酸素飽和度は酸素解離曲線で関係しています。PaO₂が低下してもSpO₂が比較的保たれる範囲があり、さらに低下するとSpO₂が急に下がる場合があります。この関係はpH、体温、二酸化炭素の状態などにも影響されます。
PaO₂は加齢、肺疾患、換気と血流の不均衡などによって変化します。呼吸不全の評価ではPaO₂が重要ですが、数値だけで原因疾患を確定することはできません。呼吸困難、意識、呼吸数、酸素投与条件、検査の推移と合わせて医療職が評価します。
現場での評価と注意点
室内気で測定したPaO₂と、酸素投与中に測定したPaO₂は、そのまま同じ条件の値として比較できません。吸入酸素濃度(FiO₂)や投与方法を確認することが重要です。酸素投与中に値が高くても、酸素を外したときに十分な酸素化が保たれるとは限りません。
PaO₂は年齢とともに低くなる傾向があり、検査施設の参考範囲や測定条件も異なります。成人の一般的な参考値を示す資料はありますが、すべての高齢者に一律の正常値を当てはめるのは適切ではありません。
SpO₂は連続的な観察に役立つ一方、末梢循環不良や体動などで誤差が生じます。PaO₂は動脈血ガス分析で確認する別の指標であり、どちらも呼吸状態の一部を示すものです。症状が強いときは数値だけに頼らず報告します。
低酸素血症が疑われる場合は、呼吸数、会話のしやすさ、顔色、意識なども確認します。酸素流量の変更は医師の指示に従い、介助者が独自に調整しません。
酸素化の評価では、PaO₂だけでなく必要に応じて吸入酸素濃度との関係も確認します。酸素を使っている人では、検査時の条件が記録されているかを確認することが大切です。
現場で知っておきたいポイント
現場では単独の検査値だけで判断せず、普段の状態と検査条件を照らし合わせて観察します。
- 酸素投与条件を確認:室内気か酸素投与中か、投与方法や流量を把握します。条件が違うPaO₂を単純に比較しないことが大切です。採血時刻と体位の変化も記録します。
- SpO₂と混同しない:PaO₂は動脈血中の酸素分圧、SpO₂は酸素飽和度の推定値です。測定方法も意味も異なります。
- 年齢と病態を考える:PaO₂の参考値は年齢や肺の状態で変わります。単一の数値だけで正常・異常を決めつけません。
- 呼吸困難を観察:息切れ、会話のしにくさ、努力呼吸、意識の変化を確認します。値が保たれていても症状を軽視しません。普段の歩行や移乗時の様子との違いも確認します。
- 経時的な変化を共有:前回の検査値、酸素条件、測定時刻、症状を整理します。急な悪化では数値の再確認より連絡を優先します。検査値を伝えるときは単位と測定条件も併記します。
記録では観察した時刻、症状、酸素投与条件、医療職への報告内容を残します。急変時は記録より安全確保と緊急連絡を優先してください。
参考情報・参考文献
動脈血ガス分析
日本薬学会。PaO₂・PaCO₂・pHの位置づけと一般的な参考範囲。
https://www.pharm.or.jp/words/word00771.html
参照日:2026年10月27日
Arterial Blood Gas (ABG) Test
MedlinePlus/米国国立医学図書館。検査項目、pH 7.35〜7.45・PaCO₂ 35〜45mmHgの参考範囲と検査条件。
https://medlineplus.gov/lab-tests/arterial-blood-gas-abg-test/
参照日:2026年10月27日
Blood gases
MedlinePlus/米国国立医学図書館。酸素分圧と酸素飽和度の区別、採血時の酸素条件。
https://www.medlineplus.gov/ency/article/003855.htm
参照日:2026年10月27日
