呼吸性アルカローシス
ひとことでいうと
呼吸性アルカローシス
呼吸性アルカローシスは、二酸化炭素分圧の一次性低下によって血液をアルカリ性側へ傾ける酸塩基平衡障害です。身体の二酸化炭素産生量に対して肺胞換気が多くなることが背景にあり、動脈血ガスのPaCO₂、pH、HCO₃⁻で評価します。
呼吸が速くなったり深くなったりすると、二酸化炭素の排出が増えます。疼痛や不安だけでなく、低酸素血症、発熱、中枢神経系の障害などでも起こります。肺塞栓症などの身体疾患を考慮する必要があり、過換気が見られる人を最初から心理的な問題と決めつけてはいけません。
急性ではふらつき、めまい、口周囲や手足のしびれ、筋のつっぱりなどが現れる場合があります。慢性では腎臓による代償が進んでHCO₃⁻が低下し、pHが正常範囲に近い場合もあります。症状は特異的ではないため、血液ガスと病歴・診察を合わせて判断します。
PaCO₂が低いことだけで呼吸性アルカローシスと確定することはできません。代謝性アシドーシスに対する代償としても低下するため、一次性の異常を区別します。現場では呼吸数と深さ、胸痛、発熱、意識の変化を確認し、強い呼吸困難や急変があれば原因の評価を急ぎます。
過換気の背景にある身体疾患にも注意
過換気が見られたら、呼吸の回数と深さ、症状が始まった場面を確認します。胸痛、発熱、息切れの急な悪化、服薬状況なども聞き取ってください。「不安で呼吸が速いだけ」と決めつけないことが、身体疾患を見逃さないために重要です。
めまいやしびれを訴える場合は、無理に歩かせず転倒を防ぎます。症状の部位や出現時刻、会話のしやすさ、SpO₂、意識を記録します。これらの症状だけで酸塩基異常の種類を特定することはできず、必要な検査を医療職が判断します。
血液ガスではpH、PaCO₂、HCO₃⁻の関係を確認します。急性と慢性では代償の程度が異なり、代謝性の異常が同時にある場合は解釈が複雑になります。過去の検査値と、今回の採血時の酸素条件も添えて情報共有します。
紙袋などで吐いた息を再び吸わせる対応は自己判断で行いません。低酸素など別の原因がある場合に危険となり得ます。落ち着いて声をかけ、安全な姿勢を保ちながら連絡し、酸素や薬剤の変更は医師の指示に従います。
現場で知っておきたいポイント
過換気に伴う症状を落ち着いて観察し、心理的要因と身体疾患の両面から医療評価につなげます。
- 呼吸の特徴:回数だけでなく胸腹部の大きな動きや呼吸の深さを確認します。始まった時刻と直前の活動、痛み、不安の訴えを具体的に記録します。
- 身体症状を探す:胸痛、発熱、急な息切れ、反応の変化を確認します。不安そうに見えても肺塞栓や低酸素などを現場だけで除外せず、医療職へ報告します。
- しびれと転倒予防:口周囲・手足のしびれ、ふらつきがあれば無理な歩行を避けます。安全な姿勢を保ち、本人の訴えを聞き取りながら症状の推移を観察します。
- 検査の関係を確認:PaCO₂低下だけで判断せずpHとHCO₃⁻も合わせます。代謝性アシドーシスへの代償との区別や、混合性の異常は医療職の評価を受けます。
- 再呼吸を独断で行わない:紙袋で吐いた息を吸わせる方法を自己判断で使いません。強い呼吸困難や意識の変化がある場合は、呼吸を整える練習より緊急連絡を優先します。
声かけは短く落ち着いて行い、原因を断定する言葉は避けます。酸素投与の有無と流量、観察時刻、対応後の変化を看護師や医師へ伝えてください。
参考情報・参考文献
呼吸性アルカローシス
MSDマニュアル プロフェッショナル版。PaCO₂の一次性低下、代償、しびれ・めまいと身体疾患の鑑別。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/10-内分泌疾患と代謝性疾患/酸塩基の調節と障害/呼吸性アルカローシス
参照日:2026年10月27日
アルカローシス
日本救急医学会。呼吸性アルカローシスの機序と代償性反応との区別。
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0614.html
参照日:2026年10月27日
Arterial Blood Gas (ABG) Test
MedlinePlus/米国国立医学図書館。検査項目、pH 7.35〜7.45・PaCO₂ 35〜45mmHgの参考範囲と検査条件。
https://medlineplus.gov/lab-tests/arterial-blood-gas-abg-test/
参照日:2026年10月27日
