動脈血ガス分析
ひとことでいうと
動脈血ガス分析
動脈血ガス分析(arterial blood gas analysis:ABG)は、動脈から採血して血液中のガスと酸塩基平衡を評価する検査です。PaO₂は酸素化、PaCO₂は主に肺胞換気、pHは酸性・アルカリ性の状態を把握するために用いられます。検査機器や項目によっては重炭酸イオン(HCO₃⁻)なども算出されます。
PaO₂は動脈血に溶け込む酸素の分圧で、指先のパルスオキシメータで推定するSpO₂とは測っているものが異なります。SpO₂だけではPaCO₂やpHはわかりません。酸素飽和度が保たれていても換気不足によって二酸化炭素が蓄積している場合があるため、必要に応じて血液ガスで確認します。
検査結果を読む際は、採血時に酸素を投与していたか、吸入酸素濃度がどの程度だったかを把握します。年齢、体温、循環状態、既往疾患なども解釈に影響します。数値が基準範囲から外れていることだけで病名や緊急性を決めることはできません。
採血は医療職が実施し、結果は症状や診察、他の検査と合わせて評価されます。介護・リハビリ現場では、採血そのものよりも呼吸数、意識、SpO₂、酸素投与条件などを観察し、医療職に正確に伝えることが大切です。
現場での評価と注意点
検査票では、まずpH、PaCO₂、HCO₃⁻の組み合わせから酸塩基平衡の異常を整理し、PaO₂と酸素投与条件から酸素化を考えます。一つの数値だけを切り取らず、複数項目の関係を確認することが重要です。混合性の酸塩基異常では解釈が複雑になるため、医療職による判断が必要です。
一般的な成人の参考範囲として、pHは7.35〜7.45、PaCO₂は35〜45mmHg程度が使われます。ただし、検査施設の基準範囲や病態により解釈は異なります。PaO₂は年齢や吸入酸素濃度によって変わるため、単一の「正常値」だけで比較しません。
慢性的にPaCO₂が高い人では、腎臓による代償が働いてpHが正常に近づくことがあります。数値が以前と比べてどれほど変化したかも大切です。呼吸状態の急変や強い眠気がある場合は、検査結果を待つ間も適切な緊急対応を行います。
検査値を共有するときは採血時刻、酸素流量・投与方法、症状、意識の状態を添えます。介助者が結果を独自に解釈して酸素流量や治療方針を変更することは避けます。
現場で知っておきたいポイント
現場では単独の検査値だけで判断せず、普段の状態と検査条件を照らし合わせて観察します。
- 採血時の酸素条件:酸素を使用していたか、投与方法と流量を確認します。酸素投与中のPaO₂を室内気の値と同じ条件で比較しないようにします。採血前後に酸素設定が変わっていないかも確認します。
- PaO₂とSpO₂を区別:PaO₂は酸素分圧、SpO₂は酸素飽和度の推定値です。指先の数値だけでは血液ガスの全項目はわかりません。
- PaCO₂と換気を見る:PaCO₂は換気の評価に役立ちます。呼吸数だけでなく深さや意識の変化を確認し、二酸化炭素貯留の可能性を考慮します。
- pHとHCO₃⁻を合わせる:酸塩基異常はpHだけでは分類できません。PaCO₂やHCO₃⁻との関係を医療職が判断します。
- 急変時の情報を共有:採血時刻、呼吸状態、SpO₂、意識、酸素投与条件を整理して伝えます。強い呼吸困難や反応低下では救急対応を優先します。
記録では観察した時刻、症状、酸素投与条件、医療職への報告内容を残します。急変時は記録より安全確保と緊急連絡を優先してください。
参考情報・参考文献
動脈血ガス分析
日本薬学会。PaO₂・PaCO₂・pHの位置づけと一般的な参考範囲。
https://www.pharm.or.jp/words/word00771.html
参照日:2026年10月27日
Arterial Blood Gas (ABG) Test
MedlinePlus/米国国立医学図書館。検査項目、pH 7.35〜7.45・PaCO₂ 35〜45mmHgの参考範囲と検査条件。
https://medlineplus.gov/lab-tests/arterial-blood-gas-abg-test/
参照日:2026年10月27日
Blood gases
MedlinePlus/米国国立医学図書館。酸素療法中の評価、検査室による参考範囲の違い。
https://www.medlineplus.gov/ency/article/003855.htm
参照日:2026年10月27日
