BPSDケア
ひとことでいうと
BPSDケア
BPSDケアとは、認知症の行動・心理症状に対し、本人の苦痛と生活への影響を評価し、状況に合う支援を行うことを指します。特定の一つの技法の名称ではなく、評価・対応・見直しを続けるケアとして捉えます。BPSDという症状概念の理解を土台に、具体的な支援を組み立てる点に重点があります。
まず、何が、いつ、どこで起きたか、本人が何を感じ、求めていたかを確認します。痛み、感染、便秘、脱水、睡眠の乱れ、薬剤の影響などの身体的要因に加え、騒音、照明、慣れない環境、声かけや対人関係も検討します。急な変化は、せん妄などの可能性を含めて医療職と評価します。
緊急性を判断したうえで、本人に合わせた非薬物的対応を基本に、環境調整、伝え方の工夫、生活リズムの支援、好みや能力に合う活動などを選びます。同じ行動でも背景は異なるため、一律の方法を当てはめず、本人の意思、尊厳、生活歴を尊重します。
対応後は苦痛や安全、生活の変化を確認し、家族と多職種で情報を共有します。非薬物的対応だけで十分でない場合や危険・強い苦痛がある場合には、医師が薬物療法等を検討します。薬を使用しても日常のケアを続け、効果と不利益を見直します。
ケアの評価は「行動の回数」だけで判断しない
ケアの目標は、介護する側が困る行動をなくすことだけではありません。本人の不安や痛みが減ったか、食事や睡眠、活動が保たれたか、安心して過ごせたかを含めて評価します。周囲の安全と介護者の負担も、継続できる支援を考えるうえで大切な情報です。
例えば、入浴を拒む場合には、寒さや痛み、裸になる不安、説明の伝わりにくさなどを考えます。時間や担当者を変える、短い説明で見通しを伝える、別の清潔保持方法を相談するなど、本人が受け入れられる方法を探します。拒否を意思表示として受け止める視点も必要です。
記録には行動の前後の状況、続いた時間、試した対応、本人の反応を残します。効果があった方法だけでなく、嫌がったことや負担が増した方法も共有すると、担当者が変わっても支援を引き継ぎやすくなります。
落ち着いて見えても、薬の影響で眠気が強まり、食事や歩行が難しくなっている場合があります。生活機能の低下も観察し、医師や看護師、薬剤師に伝えます。効果を決めつけず、本人の状態に合わせて方法を調整しましょう。
現場で知っておきたいポイント
本人の苦痛と生活上の困りごとを知るために、普段との違いと行動の前後を具体的に確認します。
- 起きた行動、時間、場所、直前の出来事、対応後の反応を記録する。
- 痛み、発熱、排便、食事・水分、睡眠、薬の変更などを確認し、医療職へ共有する。
- 本人の言葉や表情を受け止め、否定や説得を重ねず、短く分かりやすく伝える。
- 音や光、人の多さを調整し、慣れた活動や休息を本人の希望に合わせる。
- 試した方法と生活への影響を家族・職員で共有し、支援を見直す。
方法を変えるときは本人の反応を確かめます。落ち着いたかだけでなく、食事、睡眠、活動、安全への影響も確認し、家族が休める支援も相談しましょう。
急な混乱や体調悪化、本人・周囲への危険がある場合は、無理に一人で対応せず安全確保と専門職への連絡を優先します。薬を自己判断で増減しないでください。
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参考情報・参考文献
国立長寿医療研究センター「認知症の精神行動症状の薬物治療に関する基本的な対応」
非薬物的介入の位置付け、身体・薬剤要因の確認、薬物療法と並行するケア、多職種連携を確認しました。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/111.html
参照日:2026年10月10日
厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))について」
緊急対応を除く非薬物的対応の優先、薬物有害事象への注意、生活状況の観察と多職種の役割を確認しました。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4324&dataType=1&pageNo=1
参照日:2026年10月10日
AMED支援研究(研究代表者:數井裕光・山口晴保)「介護職・医療職向け BPSD 予防・治療包括指針」
BPSDの予防から出現時の評価・対応、薬物治療までの包括的な支援と、ケアシステムの位置付けを確認しました。
https://bpsd-web.com/html/medical.html
参照日:2026年10月10日
