タクティールケア
ひとことでいうと
タクティールケア
タクティールケアは、手を使って相手の手足や背中などにやさしく触れ、安心感や心地よさを支えるスウェーデン発祥のケア手法です。筋肉を強く押したりもんだりするのではなく、やわらかく包み込むような接触を用いることが特徴です。
認知症ケアや緩和ケアなどで、言葉以外の方法で気持ちを通わせる関わりとして用いられています。何かを説明して理解を求める場面とは異なり、落ち着いた環境で一緒に過ごし、本人が心地よく感じられるかを確かめながら関わります。単なる刺激の量よりも、安心できる関係が大切です。
タクティールケアは固有の手法名であり、触覚を使うケア全般の呼び名ではありません。学術資料ではTaktil Careという表記が使われています。一般のマッサージや、日常の介助で手に触れる行為と同一にせず、実施する場合は手法の目的や技術を適切に学ぶ必要があります。
認知症の行動・心理症状について実践研究がありますが、すべての人に同じ効果があるとはいえません。治療の代わりと考えず、本人が望むことを前提に、痛みや皮膚状態、触れられたときの反応を確認します。不快感や拒否がある場合は中止し、別の関わり方を選びます。
触れる前の同意と反応を大切にする
触れられることを心地よく感じるかは、生活歴、文化、相手との関係、その日の体調によって異なります。認知症があるから同意を確認しなくてよいわけではありません。何をするかを分かりやすく伝え、本人の選択を確かめてから始めます。
言葉で意思を伝えにくい人には、表情、手を引く、身体をこわばらせる、目をそらすなどの反応も手がかりにします。沈黙を同意と決めつけず、少しでも負担が疑われれば止めて確認します。家族が勧めた場合も、本人の現在の反応を優先することが重要です。
実施前には傷、発赤、皮膚の弱さ、腫れ、痛みなどを確認します。触れる部位や姿勢が適切か迷うときは看護職などへ相談し、皮膚への摩擦や無理な姿勢を避けます。落ち着ける室温、プライバシー、手指衛生にも配慮します。
評価は「おとなしくなったか」だけで行わず、本人の心地よさ、不安、会話、疲労、実施後の変化を記録します。症状を抑えることだけを目的にしないで、関係づくりの一つとして位置付け、本人に合わないときは方法を見直します。
現場で知っておきたいポイント
実施前に目的と方法を伝え、本人が受けたいかを確認します。決められた時間や手順を優先せず、反応に応じて調整します。
- 触れられたくない部位や過去の経験を尋ね、断る意思を尊重します。
- 傷、発赤、腫れ、痛みを確認し、判断に迷う部位は看護職などへ相談します。
- 手指衛生とプライバシーを確保し、楽な姿勢で落ち着いて過ごせる環境を整えます。
- 強く押したりもんだりせず、正式な手法を学んだうえで適切に実施します。
- 顔をしかめる、手を引く、緊張するなどの反応があれば止め、続けたいかを確認します。
実施した部位、時間、本人の反応とその後の様子を記録し、関わり方を共有します。心地よさと負担の両方を確認し、反応が乏しいからと刺激を強めないでください。
新たな痛み、皮膚の異常、急な体調変化があれば中止し、看護職へ報告して必要な対応を確認します。
参考情報・参考文献
日本スウェーデン福祉研究所「タクティール®ケアとは」
発祥、やわらかく触れる手法、医療行為との区別、望まない人には実施しないという方針を確認。
参照日:2026年10月11日
日本農村医学会雑誌「タクティール®ケアが認知症高齢者の行動・心理症状に及ぼす効果」
認知症高齢者に実施した看護研究の内容と、ケア前後のBPSD評価を確認。個別の研究結果を一律の効果保証としない。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/68/1/68_100/_article/-char/ja
参照日:2026年10月11日
国立国会図書館 NDLサーチ「看護研究報告 タクティールケアが認知症高齢者の行動・心理症状に及ぼす効果」
論文の並列英語タイトルと英文要約でTaktil Careの表記を確認。
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I029861955
参照日:2026年10月11日
