iPS由来心筋細胞、免疫細胞の攻撃を低減|藤田医科大などが培養実験で確認

2026.10.25
iPS由来心筋細胞への免疫細胞の攻撃を抑えるTAPBP研究を伝える概念図。培養実験のイメージで、実際の細胞画像や治療製品ではない。

藤田医科大学は10月20日、Heartseed、国立がん研究センターなどとの共同研究で、免疫細胞による傷害を受けにくいヒトiPS細胞由来心筋細胞を開発したと発表した。TAPBPという遺伝子を欠損させた細胞を用い、培養実験で免疫反応を調べた成果である。

■ 免疫に認識される仕組みを調整

他人由来の細胞を使う移植治療では、移植された細胞が異物と認識され、免疫の攻撃を受けることが課題になる。研究グループは、細胞表面にHLAクラスIという分子を提示する仕組みに関わるTAPBPに着目した。

研究グループは、ゲノム編集技術CRISPR-Cas9でTAPBPを欠損させ、HLAクラスIの発現が低い細胞株を選んだ。作製した細胞は、対照と同程度に心筋細胞へ分化する能力と、心筋細胞としての機能を保っていた。

■ T細胞による傷害が低下、NK細胞の攻撃は増えず

心筋細胞と細胞傷害性T細胞(CTL)を一緒に培養して調べたところ、TAPBP欠損株ではT細胞による細胞傷害が低減した。炎症に関わるインターフェロンγを加えた条件と、加えていない条件の両方で確認された。

HLAクラスIの低下は、別の免疫細胞であるナチュラルキラー(NK)細胞の攻撃を強める可能性がある。この点も共培養実験で調べた結果、TAPBP欠損株への細胞傷害は対照と同程度にとどまり、攻撃の増強は認められなかった。

■ 患者での治療効果を示した発表ではない

今回の発表は、免疫拒絶を起こしにくい移植用細胞の開発を目指す基礎研究である。患者に移植して心機能の改善や長期的な安全性を確認したという内容ではなく、新たな治療承認や保険適用を知らせるものでもない。

研究グループは、1つの遺伝子への改変を将来の細胞移植に生かす可能性を示している。ただし、この結果から免疫抑制薬が不要になる、拒絶反応を完全に防げると判断することはできない。培養条件で得られた知見と、患者が受けられる治療の進展を分けて捉える必要がある。

大学の発表によると、論文は科学誌「iScience」のオンライン版で2026年10月17日に公開された。

出典:藤田医科大学「細胞移植における免疫拒絶反応を低減するヒトiPS細胞由来心筋細胞を開発」(2026年10月20日、PDF)。論文情報:iScience、DOI: 10.1016/j.isci.2026.117933。

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