34歳で脳梗塞を発症した愛知県在住の男性(37)が、2027年10月の職場復帰を目指している。歩行の練習に加え、仕事に必要なパソコン操作にも取り組む日々。その一方で、介護保険の対象年齢に達しておらず、長く続ける民間のリハビリが重い費用負担になっている。東海テレビが9月27日、男性の現在の生活と復職への歩みを報じた。
■ 一歩を踏み出せるまで、発症から半年
男性は東京で商社に勤務していた約3年前、脳幹の脳梗塞を発症した。意識が戻らない状態が約1カ月続き、目覚めた後も体の両側にまひが残った。体を動かすことも、言葉を発することも難しかったという。
厳しい見通しを伝えられながらリハビリを続け、発症から半年ほどで一歩を踏み出せるようになった。会社を休職して実家に戻った現在も、毎日歩く練習をしている。車いすを使わずに生活し、靴も自分で履けるようになった。ただ、一つひとつの動作には時間がかかる。大きな横断歩道は一度で渡り切るのが難しく、2回に分けて渡っているという。
回復が進んでも、後遺症がなくなったわけではない。声を出しにくく、自分の意思とは関係なく笑いが止まらなくなることもある。歩けるようになった姿だけでは見えにくい困難が、日々の生活に残っている。
■ 続けたいリハビリと、費用の負担
男性は2年以上、民間のリハビリに通っている。費用は全額自己負担だという。障害年金を受け取っているものの、本人によると、週2回通うだけで年金の1カ月分を使い切ってしまう。
介護保険に加入するのは40歳から。40~64歳でサービスを利用できるのは、脳血管疾患などの特定疾病が原因で介護を要する場合などに限られる。男性は発症時34歳で、現在も40歳未満のため、介護保険は利用できない。
医療保険による脳血管疾患等のリハビリには、診療報酬上、発症などから180日という標準的な算定期間が設けられている。ただし、180日を過ぎれば医療保険でのリハビリが必ず終了するわけではない。状態や所定の要件によって、期間を超えた算定も認められる。男性が利用している民間のリハビリについては、報道で全額自己負担とされている。
介護保険の対象外でも、使える公的支援が一切ないわけではない。障害福祉サービスには、身体機能や生活能力の維持・向上を支える「自立訓練(機能訓練)」もある。ただし、利用の可否は個別に判断される。男性の民間リハビリの費用を、この制度で賄えると確認されたものではない。
■ 同じ経験を持つ人とつながる
男性は約2年前から、リハビリの様子をSNSで発信してきた。その発信をきっかけに、脳梗塞を経験した人たちとつながり、交流会も主催している。
東海テレビが取材した東京での交流会には、約10人が参加した。中学生のときに脳梗塞を発症した人や、すでに職場復帰した人もいた。参加者からは、発症前の自分を覚えているからこそのつらさや、男性の発信を見ながら自分もリハビリを続けているという声が上がった。男性自身も、仲間と会える場を開いてよかったと振り返っている。
■ 会社とのつながりを保ちながら復職へ
男性は、手で車を操作できる補助器具を使い、運転もできるようになった。取材では、休職中の会社を訪れ、上司に約2カ月ぶりに近況を報告する様子も伝えられた。
目標は2027年10月の復職。現在は週3回、パソコンのタイピングなど、仕事を見据えた訓練を受けている。歩行や日常生活の動作に加え、働くための準備も続けているところだ。
発症から約3年。男性の姿から見えてくるのは、退院後も続くリハビリの必要性と、その費用を誰がどう支えるかという問題だ。若い世代が病気の後遺症を抱えながら生活と仕事を立て直すには、利用できる支援を一つずつ確認し、長期にわたってつないでいく視点が求められる。
