クスマウル呼吸

(くすまうるこきゅう)とは?
Kussmaul breathing
(クスマウル・ブリージング)
別名・関連する表現:深大呼吸

ひとことでいうと

クスマウル呼吸は、深く大きな呼吸が規則的に続く異常な呼吸パターンです。重い代謝性アシドーシスでみられ、糖尿病性ケトアシドーシスなどが原因となる場合があります。呼吸の速さだけでなく、深さや全身状態の確認が重要です。

クスマウル呼吸

(くすまうるこきゅう)の意味

クスマウル呼吸(Kussmaul breathing)は、深く大きな呼吸が比較的規則的に続く呼吸パターンです。重度の代謝性アシドーシスに対して、身体が二酸化炭素を多く排出しようとする代償反応として現れることがあります。単に呼吸数が増えた状態を指す頻呼吸とは区別されます。

代謝性アシドーシスとは、血液が酸性側に傾く病態です。身体は二酸化炭素の排出を増やすことで酸性化を和らげようとします。その結果、呼吸が深く大きくなることがあります。糖尿病性ケトアシドーシスや重い腎機能障害などが背景にある場合がありますが、呼吸の見た目だけで原因を確定することはできません。

チェーン・ストークス呼吸では呼吸の大きさが周期的に増減し、無呼吸を挟むのに対し、クスマウル呼吸は深い呼吸が持続する点が特徴です。過換気との関係はありますが、過換気という言葉は必要量を超える肺胞換気と二酸化炭素低下を示すため、観察所見と病態の用語を混同しないようにします。

強い口渇、頻尿、脱水、吐き気、腹痛、意識の変化などを伴う場合は、糖尿病性ケトアシドーシスを含む重い病態を考慮します。深い呼吸が続く場合は緊急の医学的評価が必要となることがあります。呼吸を無理に抑えさせず、原因の評価と治療につなげることが重要です。

現場での観察と注意点

現場では呼吸回数だけでなく、胸腹部が大きく動くか、深い呼吸が持続するかを観察します。深さと規則性を具体的に記録すると、単なる頻呼吸との違いを医療職に伝えやすくなります。呼吸が速く見えても、回数だけでクスマウル呼吸と判断しません。呼吸の変化が起きた時刻や、それまでの体調も一緒に記録します。

糖尿病がある人では、血糖管理の状況、食事や水分摂取、発熱、嘔吐などの情報が重要です。高血糖やケトアシドーシスが疑われる場合でも、介助者が独自にインスリン量や薬を変更してはいけません。

強い脱水がある人では、口腔内の乾燥、尿量の変化、血圧、脈拍、意識などを確認します。呼吸の異常と全身状態の変化を一緒に伝えることが重要です。深呼吸のように見えるからといって、本人に呼吸を浅くするよう求めることは避けます。

急な意識低下、持続する嘔吐、強い脱力などを伴う場合は緊急性があります。測定値がすべてそろうまで待たず、発症時刻と確認できた症状を整理して医療職や救急へ連絡します。

現場で知っておきたいポイント

呼吸の特徴だけで病名を決めつけず、普段との違いを観察して医療職と情報を共有します。日頃の呼吸の様子を知る職員や家族からも情報を集め、変化の経過を具体的に伝えることが大切です。

  • 呼吸の深さを観察する:胸腹部の動きが大きく、深い呼吸が持続しているかを確認します。回数だけでなく、深さと規則性を記録します。
  • 他の異常呼吸と区別する:チェーン・ストークス呼吸のような周期的な増減や無呼吸があるかを確認します。呼吸の特徴をそのまま伝え、現場で診断を確定しません。
  • 糖尿病の状況を把握する:糖尿病の既往、最近の血糖値、食事や薬の状況、強い口渇や多尿の有無を確認します。薬剤量は独断で変更しません。
  • 脱水と意識を確認する:口腔内の乾燥、嘔吐、尿量、脈拍、反応の変化を確認します。本人が話せない場合は家族や職員から経過を聞き取ります。
  • 緊急連絡を優先する:深い呼吸が続き、意識の変化や強い全身症状がある場合は速やかに医療職や救急へ連絡します。呼吸を意図的に抑えさせません。

観察時刻、呼吸の変化、意識や症状、連絡内容を記録します。緊急時には記録より安全確保と救急対応を優先してください。

関連する用語

参考情報・参考文献

クスマウル大呼吸
日本救急医学会。代謝性アシドーシスに伴う深く規則的な呼吸の定義。
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0716.html
参照日:2026年10月25日

糖尿病診療ガイドライン2024 第20章 糖尿病における急性代謝失調・シックデイ(感染症を含む)
日本糖尿病学会。ケトアシドーシスの呼吸徴候と緊急評価の必要性。
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/20.pdf
参照日:2026年10月25日

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
MSDマニュアル プロフェッショナル版。深い呼吸、脱水、腹部症状・意識変化と診断上の注意。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/10-内分泌疾患と代謝性疾患/糖尿病と糖代謝異常症/糖尿病性ケトアシドーシス-dka
参照日:2026年10月25日

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