陥没呼吸
ひとことでいうと
陥没呼吸
陥没呼吸は、息を吸うときに肋骨の間や鎖骨の上、胸骨の周囲などの軟らかい部分が内側へ引き込まれる呼吸の状態です。吸気時に呼吸の負担が増していることを示す徴候の一つで、特に小児の呼吸状態を評価する場面でも重視されます。成人でも気道の狭窄や呼吸困難の際にみられることがあります。
通常の吸気では横隔膜などが働いて胸腔内の圧力が下がり、肺に空気が入ります。気道が狭くなるなどして吸い込むために強い力が必要になると、胸壁の軟らかい部分が引き込まれて見えることがあります。鎖骨上窩、肋間、胸骨下など、どの部位に陥没がみられるかを観察します。
陥没呼吸は努力呼吸の具体的な観察所見ですが、両者は同義ではありません。努力呼吸には首や肩の補助呼吸筋の使用、鼻翼呼吸、姿勢の変化なども含まれます。陥没が見られない場合でも、呼吸の負担が強いことはあります。
呼吸数、SpO₂、会話のしやすさ、意識、顔色を合わせて評価します。吸気性の強い異常音や急な呼吸困難を伴う場合は上気道の狭窄などを考慮し、緊急の評価が必要になることがあります。胸の動きだけで原因疾患を決めつけないことが重要です。
現場での観察と注意点
陥没呼吸を確認するときは、本人の呼吸を妨げない姿勢で胸郭の動きを観察します。吸気時にどの部位が引き込まれるかを記録すると、医療職に具体的な状態を伝えられます。衣服で見えにくい場合も、本人のプライバシーに配慮して確認します。
肋骨の間だけでなく、鎖骨の上や胸骨の下に陥没がみられることがあります。小児と高齢者では胸壁の特徴が異なり、見え方にも差があります。陥没の有無だけで重症度を決めないようにし、会話や意識、呼吸数なども合わせて観察します。
陥没が強い人に無理な歩行や移乗を求めると、呼吸の負担を増やす可能性があります。本人が楽に呼吸できる姿勢を保ち、動作を中断して医療職へ相談します。酸素流量や吸入薬の変更は指示に従います。
急に吸気時の異常音が強くなる、言葉が出ない、顔色や反応が悪くなる場合は緊急性があります。胸郭の動きを観察し続けるより、安全確保と連絡を優先してください。
小児では胸壁が柔らかく陥没が目立つことがあります。成人や高齢者でも呼吸困難の程度は個人差があり、見た目だけで重症度を決めないことが大切です。
現場で知っておきたいポイント
陥没呼吸を観察する際は、本人の普段の状態と比べて変化を確認し、必要に応じて医療職に相談します。
- 陥没部位を記録:鎖骨上、肋間、胸骨下など、息を吸うときにどこがへこむかを確認します。位置を具体的に伝えます。
- 吸気との関係を見る:胸壁が引き込まれるタイミングを観察します。呼気にも異常な動きがある場合は併せて記録します。
- 会話と意識を確認:普段どおり話せるか、返答が遅くないかを確認します。短い言葉しか話せない場合は注意が必要です。
- 負担の少ない体位:本人が楽な姿勢を保ち、無理な移動や運動を避けます。必要な観察を行いながら医療職に相談します。
- 急変を見逃さない:強い吸気性の音、急な顔色の変化、反応低下などがあれば緊急評価につなげます。測定を優先して連絡を遅らせません。
観察時刻と症状、本人の訴え、対応後の変化を記録します。急変時は記録より安全確保と緊急連絡を優先してください。
陥没呼吸が現れた時刻と、その前後の活動や体位、呼吸数の変化を記録します。本人が不安を訴える場合は落ち着いて声をかけ、楽な姿勢を保ちます。急な悪化や意識の変化があれば、観察を続けるより緊急連絡を優先します。
参考情報・参考文献
Intercostal retractions
MedlinePlus/米国国立医学図書館。胸腔内圧低下による胸壁の引き込みと、呼吸困難時の緊急対応。
https://medlineplus.gov/ency/article/003322.htm
参照日:2026年10月25日
Respiratory Distress Syndrome in Neonates
MSD Manual Professional Edition。新生児における胸骨上・胸骨下の陥没などの呼吸徴候。
https://www.msdmanuals.com/professional/pediatrics/respiratory-problems-in-neonates/respiratory-distress-syndrome-in-neonates
参照日:2026年10月25日
呼吸困難
MSDマニュアル プロフェッショナル版。呼吸困難の観察、普段との比較、緊急性の評価。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/05-肺疾患/肺疾患の症状/呼吸困難
参照日:2026年10月25日
