肩手症候群
ひとことでいうと
肩手症候群
肩手症候群とは、脳卒中による片麻痺や外傷の後などに、肩と手の痛み、手の腫れ、関節の動かしにくさがみられる状態です。英語ではshoulder-hand syndromeといい、SHSと略されることがあります。
現在は複合性局所疼痛症候群(CRPS)の枠組みで理解され、明らかな末梢神経損傷を伴わないⅠ型として扱われます。ただし、CRPSは肩と手以外にも生じるため、両者をどの場面でも完全な同義語として置き換えることはできません。
症状には、触れるだけでも痛む、手が腫れる、左右で皮膚の温度や色が異なる、汗のかき方が変わるなどがあります。痛みで腕を使う機会が減ると、更衣や食事、リハビリテーションにも支障が生じます。症状の組み合わせや程度には個人差があります。
肩関節亜脱臼、骨折、感染などでも肩や手の痛みは起こります。痛みと腫れだけで診断しないことが重要で、医師が経過と診察所見、ほかの原因の有無を確認します。介護現場では、いつからどのような変化があるかを記録し、早期に医療職へ伝えます。
肩の痛みや手のむくみとの見分け方
脳卒中後の肩の痛みには、筋緊張の変化、関節の位置のずれ、腱の損傷など複数の原因があります。手のむくみも、腕を動かす機会の減少や姿勢などと関係します。そのため、肩手症候群を疑うときも、ほかの原因の評価が欠かせません。
観察では、安静時と動作時の痛み、軽い接触への反応、腫れの範囲、皮膚の色と温度、指を動かせる範囲を左右で比べます。本人がうまく説明できない場合は、顔をしかめる、手を引く、介助を避けるなどの反応も手がかりになります。
支援の目標は、痛みを強めずに生活動作と必要な運動を続けられるようにすることです。薬物療法やリハビリテーションの内容は個別に決まり、強いマッサージ、温めるケア、圧迫などを自己判断で追加しないようにします。
腕を支える位置や介助方法を職員間で揃えることも大切です。早期の相談によって治療と生活上の工夫を組み合わせ、痛みによる活動の減少を防ぎます。
現場で知っておきたいポイント
麻痺側の肩や手の痛みは、本人の訴えと皮膚の変化を合わせて確認します。腕を引っ張らない介助を徹底します。
- 痛みが始まった時期と、触れたときの反応を記録する。
- 手指の腫れ、色、温度、発汗の左右差を観察する。
- 更衣や移乗では肩と前腕を支え、手だけを持って引かない。
- 運動は専門職の指示に沿い、痛みを強める動きを避ける。
- 装具や指輪などの圧迫と、皮膚トラブルを確認する。
本人が痛みを訴えにくい場合は、睡眠や食事、表情の変化も合わせて確認します。症状の変化は「むくんでいる」だけでなく、どの指が腫れ、どの動作で痛み、生活に何が困るかまで共有します。安静のさせ方や腕を使う範囲も個別に相談し、痛いからといって長期間一律に動かさない対応は避けます。
急な強い腫れや熱感、発熱、外傷後の痛みは速やかに報告し、感染や骨折なども含めた診察につなげます。
参考情報・参考文献
カナダ心臓・脳卒中財団「Canadian Stroke Best Practices:Shoulder Pain and Complex Regional Pain Syndrome following Stroke」
脳卒中後のCRPSの症状、他原因の除外、早期評価と上肢の保護を確認。
参照日:2026年10月8日
