肩関節亜脱臼
ひとことでいうと
肩関節亜脱臼
肩関節亜脱臼は、肩甲骨の関節窩という受け皿に対して上腕骨の頭がずれ、関節の接触が部分的に失われる状態です。完全に外れた脱臼とは区別します。肩の不安定性や外傷に伴う場合もあり、脳卒中後の麻痺側だけに起こるものではありません。
脳卒中後には肩周囲の筋肉の働きや筋緊張が低下し、腕の重みを支えにくくなることがあります。腕が下がる力や不適切な扱い方が肩の位置関係に影響します。肩のくぼみや腕の位置の変化が手がかりになりますが、外観や触診だけで状態を確定しません。
痛みを伴う場合も、目立つ痛みがない場合もあります。脳卒中後の肩痛には筋緊張の変化や腱・関節周囲の損傷など複数の要因が関わり、痛みと亜脱臼を同一視しないことが大切です。感覚低下がある人では本人の訴えだけでは負担を捉えきれません。
医療職は姿勢、筋緊張、動き、痛み、必要な画像検査などを合わせて評価します。支え方の調整やリハビリ、状態に応じた装具等を検討します。介護では更衣や移乗時に腕を引かず、医療職から教わった支持と動かし方を共有し、安全な生活動作を支えます。
腕を支える場面と、本人が使う場面を分けて考える
肩を守るために腕を支えることと、腕を一日中固定することは同じではありません。座位では前腕を台やクッションで支え、移乗では腕が置き去りにならないようにします。生活場面に合った支持を選び、肩だけでなく体幹の姿勢や肘の位置も確認します。
三角巾やスリングは、筋緊張が低い時期などに検討されることがありますが、全員に常時必要なものではありません。長時間の使用は腕を使う機会や肘・肩の動きに影響する場合があります。装着の目的、使う場面、外してよい時間を担当の医師やリハビリ職に確認します。
亜脱臼があるからといって、許可された腕の活動まで一律に止める必要はありません。一方、痛みがないことだけを理由に腕を大きく引き上げたり、肩を自己流で動かしたりしません。支持方法と運動の指示を具体的に申し送りし、本人・家族も同じ扱い方ができるよう説明を受けます。支え方を変えた後は痛みや動作のしやすさを確かめます。
現場で知っておきたいポイント
腕の位置だけでなく、普段の姿勢と介助中の負担を確認します。
- 麻痺側の左右、肩の痛み、腫れ、動かしにくさの変化を記録する。
- 座位・臥位では前腕を支え、腕が垂れたままにならないよう確認する。
- 移乗や起き上がりで腕を引っ張らない。体幹などの支持方法を共有する。
- 更衣は袖や衣服を操作し、腕を無理に引いて通さない。
- 装具の使用場面と運動範囲を確認し、ずれや皮膚の圧迫を観察する。
言葉で痛みを伝えにくい人では、表情や動作の拒否、介助量の変化も手がかりにします。肩の隙間を介助者が押し戻して整えようとせず、支え方に迷ったらリハビリ職に実際の場面を見てもらいます。
転倒後の強い痛みや変形、新しいしびれ・手の冷たさなどは速やかに医療職へ連絡します。無理に動かしたり整復したりせず、緊急性に応じて受診・救急対応につなげます。
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参考情報・参考文献
Mayo Clinic「Shoulder instability」
亜脱臼と脱臼の違い、肩の構造と外傷・不安定性の関係を確認。
https://sportsmedicine.mayoclinic.org/condition/shoulder-instability/
参照日:2026年10月8日
Heart and Stroke Foundation of Canada「Shoulder Pain and Complex Regional Pain Syndrome (CRPS) following Stroke」
脳卒中後の肩の評価、腕の支持、牽引を避ける介助、スリングの個別判断を確認。
参照日:2026年10月8日
日本赤十字社「脱臼・肉離れ・アキレス腱断裂」
外傷後の脱臼を自己流で整復せず、医師の診療につなげる対応を確認。
https://www.jrc.or.jp/study/safety/dislocation/
参照日:2026年10月8日
