徘徊
ひとことでいうと
徘徊
徘徊とは、歩き回る行動などを表す言葉で、認知症の介護では繰り返し歩く、外へ向かう、道に迷うといった状況に使われます。英語ではWanderingと表されます。ただし、目的のない行動と決めつけないことが大切です。本人が仕事や家族のもとへ向かおうとしている場合もあります。
室内を往復して歩くこと、外出中に現在地や道順が分からなくなること、帰宅できず行方不明になることは、同じ状況ではありません。歩く距離や回数だけで危険性を判断せず、本人がどこへ行こうとしているか、道を認識できるか、安全に戻れるかを確認します。
背景には、記憶や見当識の変化、不安、退屈、過去の役割や生活習慣などが関わることがあります。空腹、排泄の必要、痛みなど、満たされていない身体的なニーズも考えます。行動の理由が説明されないときも、観察と生活歴から理解を深めます。
「徘徊」は一般的な検索語ですが、本人の意思を見落としやすい表現でもあります。記録では「玄関へ向かい、会社へ行くと話した」など事実を具体化します。安全確保と移動の自由・尊厳を両立させ、歩く機会を一律に奪わず支援を考えます。
歩きたい気持ちと安全をどう両立する?
歩くことは活動や気分転換の機会でもあるため、歩き回るという理由だけで制止する対応は避けます。まず、行きたい場所、探している物、会いたい人などを穏やかに尋ねます。説明が難しい場合も、本人の言葉と直前の出来事を手がかりに、トイレや休息など必要な支援を考えます。
歩行能力、疲れやすさ、道順の理解、道路や階段など周辺の危険を個別に確認し、安全な散歩や見守りの方法を相談します。本人に合う時間帯と経路を選び、慣れた活動や役割を生活に取り入れます。本人の希望を聴きながら、家族や支援者が無理なく付き添える方法を整えることも大切です。
帰宅困難が心配な場合は、連絡先を持つ方法、写真や向かいやすい場所の共有、地域の見守り体制を検討します。GPSなどの機器は補助手段で、持ち忘れや電池切れもあります。機器だけで安全が保証されるわけではありません。行方が分からなくなった場合は、普段の行動と決めつけて待たず、速やかに警察や関係者へ連絡します。
現場で知っておきたいポイント
ご利用者様が歩く理由を理解し、安全に移動できる方法を考えます。行動の名称より、実際の状況と本人の思いを記録します。
- 観察:時刻、場所、行き先の訴え、歩き始めるきっかけ、戻るときの様子を確認します。室内の往復と帰宅困難は区別します。
- 背景:生活歴や役割、不安、痛み、空腹、排泄の必要を確認し、歩くことで満たそうとしているニーズを考えます。
- 環境:通路の障害物、段差、照明、履物、休める場所を整え、本人の歩行能力に合う動線を確保します。
- 支援:否定や叱責を避け、希望に沿う散歩や付き添いを検討します。身体拘束や閉じ込めを安易に行いません。
- 共有:向かいやすい場所、連絡先、写真、見守り方法を家族・多職種で共有し、行方不明時の連絡手順を決めます。
急に歩き方や混乱の程度が変わった場合は、体調や薬剤の変化も医療職へ報告します。行方が分からない場合は早めに警察へ連絡し、対応を記録して引き継ぎます。
もっと詳しく|関連ブログ
参考情報・参考文献
Alzheimer’s Society「Walking and dementia(Factsheet 501)」
確認内容:歩く理由や未充足のニーズ、Wanderingという表現への配慮、安全と自立を支える考え方。
https://www.alzheimers.org.uk/sites/default/files/pdf/factsheet_walking_about.pdf
参照日:2026年10月14日
Alzheimer’s Association「Wandering」
確認内容:道に迷う兆候、活動や見守りの工夫、行方不明に備えた情報共有と対応計画。
https://www.alz.org/help-support/caregiving/stages-behaviors/wandering
参照日:2026年10月14日
Cleveland Clinic「When Someone With Alzheimer’s Disease Wanders」
確認内容:過去の役割や帰宅の訴え、身体的ニーズの確認、安全な歩行機会と事前の備え。
https://health.clevelandclinic.org/what-to-do-when-alzheimers-patients-wander
参照日:2026年10月14日
