認知症による行方不明はなぜ起きる?1万7千人超の実態と今日からできる予防策

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もくじ

はじめに

認知症による高齢者の行方不明は、年々深刻な社会問題となっています。

警察庁のまとめによると、昨年1年間に届け出があった認知症による行方不明者は全国で1万7,345人にのぼり、前年より減少したものの、依然として高い水準が続いています。

行方不明は本人の命に関わるだけでなく、ご家族や介護職にとっても計り知れない不安や負担につながる重大な問題です。

しかし、

「認知症だから仕方ない」

と考えてしまうのは少し早いかもしれません。

認知症のある方が外へ出てしまう背景には、不安混乱帰宅願望など、その人なりの理由が隠れていることが少なくありません。原因を理解し、日頃から適切な対策を行うことで、行方不明のリスクを減らせるケースも多くあります。

この記事では、認知症による行方不明が起こる理由をはじめ、今日から実践できる予防策や、万が一行方不明になってしまった場合の対応方法まで、介護現場の視点を交えながらわかりやすく解説します。

長谷川

ご利用者様の安全を守るために、ぜひ最後までご覧ください。

認知症による行方不明の現状

昨年は全国で1万7千人以上が行方不明

警察庁のまとめによると、昨年1年間に届け出があった認知症による行方不明者は、全国で1万7,345人でした。前年と比べると776人減少したものの、依然として年間1万人を大きく超える状況が続いています。

認知症による行方不明は決して珍しい出来事ではなく、全国のどこでも起こり得る身近な問題です。

ご本人様の安全はもちろん、ご家族や介護職、地域住民を巻き込む大規模な捜索につながるケースも少なくありません。

高齢化が進む日本では、今後も認知症のある方の増加が予想されており、行方不明への対策はますます重要になるでしょう。

高齢になるほどリスクは高くなる

行方不明の原因に占める認知症の割合は、年齢が上がるほど高くなる傾向があります。

警察庁のデータでは、70代では62.1%、80歳以上では77.3%が認知症に関連した行方不明となっていました。

加齢とともに認知機能が低下し、時間や場所が分からなくなる「見当識障害」や、昔の記憶を頼りに行動してしまうことが増えるため、思いがけず自宅や施設から離れてしまうリスクが高くなります。

発見までの時間が命を左右する

長谷川

認知症による行方不明では、「どれだけ早く発見できるか」が非常に重要です。

実際に、発見された人の94.8%は届け出から3日以内に生存した状態で所在が確認されています。一方で、届け出から15日以上経過すると、死亡した状態で発見される割合が高くなることも報告されています。

また、GPS機器などの見守りサービスを活用していたケースでは、84.9%が届け出当日に発見されていました。

万が一に備えてGPSなどを活用することはもちろん、「少し様子を見よう」と判断せず、異変に気づいた時点で早めに警察へ届け出ることが、ご利用者様の命を守る大切なポイントになります。

なぜ認知症の人は行方不明になるのか

「帰りたい」という気持ちが強くなる

認知症のある方が外へ出てしまう理由として多いのが、「家へ帰りたい」という帰宅願望です。

しかし、この「家」は今住んでいる自宅ではなく、子どもの頃に暮らしていた家や、長年住み慣れた実家を指していることも少なくありません。

認知症では新しい記憶よりも昔の記憶が残りやすいため、自分が今どこで生活しているのか分からなくなり、「家に帰らなければ」と感じてしまうことがあります。

長谷川

本人にとっては自然な行動であり、決して目的もなく歩き回っているわけではありません。

「帰りたい」と訴える背景には、不安や安心できる場所を求める気持ちが隠れていることを理解することが大切です。

不安や混乱が外出につながる

認知症では、時間や場所、人との関係が分からなくなる見当識障害がみられることがあります。

そのため、

「ここはどこだろう」
「家族がいない」
「仕事へ行かなければ」

など、不安や焦りを感じて外へ出てしまうケースがあります。

また、入院や施設入所、引っ越しなど環境が大きく変わった直後は、慣れない生活への戸惑いから行方不明のリスクが高まることもあります。

介助者から見ると突然外へ出ていったように感じても、本人の中では

「やるべきことがある」
「早く行かなければならない」

という思いが強くなっている場合があります。その背景にある不安や混乱に目を向けることが、予防への第一歩です。

本人には必ず”理由”がある

認知症による行方不明は、「徘徊」という言葉だけでは十分に説明できません。実際には、一人ひとりの行動には必ず何らかの理由があります。

例えば、

「会社へ出勤しなければならない」
「子どもを迎えに行かなければ」
「買い物を頼まれていた」

など、過去の生活習慣や役割を果たそうとして外へ向かうことがあります。本人にとっては今も現実であり、責任感から行動しているケースも少なくありません。

そのため、「歩き回るから危ない」と行動だけを止めようとしても、根本的な解決にはつながりません。

大切なのは、

「なぜ今、この行動をしているのだろう」

と背景を考えることです。

介護現場では、

「どこへ行こうとしているのですか?」
「何かお困りですか?」

と穏やかに声をかけることで、不安が和らぎ、外出を思いとどまることもあります。

認知症の方の行動には、その人なりの思いや目的があります。「徘徊」という一言で片付けるのではなく、その行動の理由を理解しようとする姿勢こそが、行方不明を防ぐ第一歩になるのです。

今日からできる行方不明の予防策

不安を減らせる生活環境をつくる

認知症による行方不明を防ぐためには、「外へ出ないようにする」ことよりも、不安なく過ごせる環境を整えることが大切です。

認知症のある方は、不安や混乱を感じた時に

「帰らなければ」
「誰かを探さなければ」

と考え、外へ出てしまうことがあります。そのため、生活リズムを整え、安心して過ごせる時間を増やすことが予防につながります。

例えば、毎日決まった時間に起床・食事・散歩・就寝を行うだけでも生活に見通しが生まれ、不安の軽減が期待できます。また、介助者が穏やかに声をかけたり、ご本人様が役割を持てるような関わりを意識したりすることも安心感につながります。

「行方不明を防ぐ」という視点だけではなく、「安心して生活できる環境をつくる」という考え方が大切です。

家族や介護職で情報共有する

認知症のある方の行動には、その人なりのパターンがあります。そのため、家族や介護職が日頃から情報を共有しておくことも重要な予防策です。

例えば、

  • 夕方になると帰宅願望が強くなる
  • 昔住んでいた家の方向へ歩いて行こうとする
  • 散歩に出ると同じ道を選ぶことが多い

など、普段の様子を把握しておくことで、異変にも早く気づけます。

また、デイサービスや訪問介護、訪問看護、地域包括支援センターなどとも情報を共有しておくことで、万が一外出してしまった際にも迅速な対応につながります。

行方不明の予防は、一人の介助者だけで取り組むものではありません。

長谷川

家族や地域、介護サービスが連携しながら見守ることが、ご利用者様の安全につながります。

GPSや見守り機器を上手に活用する

近年は、GPS機器や見守りサービスを活用するご家庭も増えています。

警察庁のデータでも、GPSを利用していたケースでは、多くの方が届け出当日に発見されており、早期発見に大きく役立っていることが分かっています。

GPSには、

  • 小型端末を持ち歩くタイプ
  • 靴・杖・衣服などに取り付けられるタイプ
  • スマートフォンと連携して位置情報を確認できるタイプ

など、さまざまな種類があります。ご本人の生活スタイルに合わせて選ぶことで、万が一の際の安心材料になります。

ただし、GPSは「行方不明を防ぐ道具」ではありません。あくまでも行方不明になった後に早く見つけるための道具です。本人が持ち忘れたり、途中で外してしまったりすることもあるため、GPSだけに頼るのは危険です。

本当に大切なのは、普段から行動パターンを把握し、不安を減らせる生活環境を整えることです。そのうえでGPSや見守り機器を組み合わせることで、より安全性を高めることができます。

「環境づくり」「情報共有」「見守り機器」。この3つをバランスよく取り入れることが、認知症による行方不明を防ぐための大切なポイントといえるでしょう。

行方不明になった時に取るべき行動

迷わず警察へ届け出る

認知症のある方が行方不明になった場合は、

「そのうち帰ってくるかもしれない」

と様子を見るのではなく、できるだけ早く警察へ届け出ることが何より大切です。

警察庁のデータでも、認知症による行方不明者の多くは、届け出から3日以内に発見されています。一方で、発見までに時間がかかるほど、事故や熱中症、低体温症などのリスクが高まり、命に関わる可能性も高くなります。

「まだ数時間だから大丈夫」

と考えず、

「いつもと違う」
「戻る時間を過ぎても帰ってこない」

と感じた時点で、迷わず警察へ相談しましょう。早期の届け出が、早期発見につながります。

本人が向かいやすい場所を探す

長谷川

警察へ届け出た後は、ご本人が普段向かいやすい場所を確認してみましょう。

認知症のある方は、昔の記憶を頼りに行動することがあります。

そのため、

  • 以前住んでいた自宅や実家
  • 長年勤めていた職場
  • よく買い物に行っていたお店
  • 散歩コース
  • 公園

などが向かう先になっている場合があります。

また、「家へ帰りたい」という帰宅願望がある場合は、昔の生活圏へ向かおうとしていることも少なくありません。

日頃から本人の生活歴や習慣を把握しておくことで、捜索の手がかりになる可能性があります。

地域ネットワークも活用する

認知症による行方不明は、家族だけで探そうとすると時間がかかり、精神的な負担も大きくなります。そのため、地域全体で協力しながら捜索することが重要です。

地域包括支援センターや担当のケアマネジャー、利用しているデイサービスや訪問介護・訪問看護事業所などへ速やかに連絡し、情報を共有しましょう。また、多くの自治体では、認知症高齢者の行方不明時に協力者へ情報を配信する「SOSネットワーク」や見守り事業を実施しています。

日頃から家族や介護職、地域とのつながりを築いておくことで、万が一の際にも迅速な対応が可能になります。認知症による行方不明は、一人や一つの家庭だけで抱え込まず、地域全体で支えることが大切です。

まとめ|行方不明を防ぐために一番大切なこと

「止める」ではなく「理解する」ことが予防につながる

認知症による行方不明を防ぐためには、「外へ出ないように止める」ことだけを考えるのではなく、なぜ外へ出ようとしているのかを理解することが大切です。

「家へ帰りたい」
「仕事へ行かなければならない」

など、一見理解しにくい行動にも、ご本人なりの理由があります。その背景にある不安や混乱に寄り添い、安心できる環境を整えることが、行方不明の予防につながります。

小さな変化への気づきが命を守る

「最近帰宅願望が増えてきた」
「落ち着きなく歩き回ることが増えた」

など、小さな変化は大切なサインかもしれません。日頃からご利用者様の様子をよく観察し、いつもとの違いに早く気づくことが、重大な事故を防ぐ第一歩になります。

一人で抱えず、地域全体で支えることが大切

認知症による行方不明は、ご家族だけ、あるいは一人の介護職だけで防げるものではありません。家族、介護職、地域包括支援センター、医療・介護サービス、地域住民など、多くの人が連携することで、安心して暮らせる環境が生まれます。

認知症のある方を「見守る」のではなく、「支え合う」という視点を持つことが、ご利用者様の命と尊厳を守ることにつながるでしょう。

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この記事を書いた人

介護に関わる全ての人へ。
心あるケアは、技術にできる。
理学療法士が現場で培った“考え方と介護技術”を伝える実践ブログです。

合同会社やしのき 代表
理学療法士/訪問看護ステーション・福祉用具貸与事業所を運営。
現場での経験をもとに、
・介護技術を YouTube(登録者15万人) で発信。
・介護分野の書籍出版にも携わる。
・CayluBase(ケイルベース) を運営。
(居宅介護サービス事業所向けに事務・帳票・運営を支える)

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