進行性核上性麻痺
ひとことでいうと
進行性核上性麻痺
進行性核上性麻痺は、脳の神経細胞やグリア細胞への異常なタウたんぱく質の蓄積に関連する、進行性の神経変性疾患です。英語ではProgressive Supranuclear Palsy、略してPSPと表します。姿勢保持や眼球運動、動作、嚥下などに多彩な障害が生じます。
典型例では早期から姿勢が不安定となり、繰り返す転倒で気づかれることがあります。動作が遅い、足がすくむ、首や体幹がこわばるなどもみられます。上下、特に下向きに目を動かしにくくなることが特徴ですが、眼球運動の障害が初期には明らかでない場合もあります。
パーキンソン病に似た運動症状を示す一方、典型例では早期の転倒、体幹優位の症状、垂直方向の眼球運動障害などが鑑別の手がかりとなります。レボドパの効果は限定的な場合が多いものの、反応する病型もあります。薬の効き方や一つの症状だけで診断はできません。
話しにくさ、嚥下障害、注意や判断、意欲の変化を伴うこともあります。症状の組み合わせと進行速度には個人差があり、典型像と異なる病型も知られています。診断は経過、神経学的診察、画像などを合わせて医師が判断し、生活支援は現在の機能と本人の希望に沿って調整します。
転倒と食事の困りごとを早めに共有する
転倒予防では「気をつけて」と伝えるだけでは不十分な場合があります。立ち上がり、方向転換、排泄後、物に手を伸ばすときなど、実際にバランスを崩す場面を共有します。眼球運動と姿勢・注意の両面を踏まえ、物の位置、動線、見守りや介助方法を理学療法士・作業療法士などと検討します。
必要な物を無理なく取れる範囲にまとめ、家具の角や足元の障害物を確認します。福祉用具は病名だけで決めず、姿勢や操作能力に合わせます。転倒を恐れて活動をすべて制限するのではなく、安全な参加方法と必要な援助を考えます。無理な首の動きで下を見させることも避けてください。
食事に時間がかかる、むせる、声や呼吸が変わる、体重が減る場合は、医師や言語聴覚士へ相談します。むせが少ないことだけで嚥下が安全とは判断しません。姿勢、食形態、一口量などは評価に基づいて調整し、首を力任せに曲げたり一律にとろみを増やしたりせず、本人に合う指示を共有します。
現場で知っておきたいポイント
運動症状だけでなく、見え方、注意、飲み込みの状態も捉え、生活場面ごとの安全な方法をそろえます。
- 転倒:立ち上がりや方向転換、排泄後などの危険場面を記録します。注意だけに頼らず、見守りと介助量を検討します。
- 見え方:下方の見にくさを踏まえ、必要な物の位置や段差を確認します。首や身体を無理に動かして見させないようにします。
- 環境:無理な手伸ばしを減らし、動線や家具の角を整えます。福祉用具は姿勢と操作能力を評価し、専門職と選びます。
- 食事:むせ、声の変化、食事時間、摂取量や体重を共有します。食形態や姿勢は嚥下評価に沿って調整してください。
- 連携:症状や進み方の個人差を踏まえ、医師・看護職・リハビリ職と支援を見直します。薬は自己判断で変更しません。
転倒後の意識の異常や強い痛み、急な呼吸困難は緊急対応が必要です。繰り返すむせ、発熱、食事量の減少も進行のせいと放置せず、早めに医療職へ相談します。
参考情報・参考文献
難病情報センター「進行性核上性麻痺(指定難病5)―病気の解説」
確認内容:症状と病型の多様性、眼球運動・転倒・嚥下障害。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4114
参照日:2026年10月15日
難病情報センター「進行性核上性麻痺(指定難病5)―診断・治療指針」
確認内容:英語・略語、タウ病理、姿勢保持障害とパーキンソン病との鑑別。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4115
参照日:2026年10月15日
国立病院機構 宇多野病院「進行性核上性麻痺」
確認内容:転倒予防と食事支援、症状・経過の個人差。
https://utano.hosp.go.jp/outpatient/other_know_neurology_10.html
参照日:2026年10月15日
難病情報センター「進行性核上性麻痺―FAQ」
確認内容:病期に応じたリハビリと多職種連携、転倒・誤嚥関連の合併症。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4116
参照日:2026年10月15日
