腱板断裂
ひとことでいうと
腱板断裂
腱板断裂は、肩甲骨から上腕骨につながる筋肉の腱が集まった腱板が切れた状態です。腱板は腕の動きを助けながら、上腕骨の頭を肩の関節の中で安定させます。腱の厚みの一部が切れる不全断裂と、厚み全体に及ぶ完全断裂があります。
転倒などのけがだけでなく、腱の加齢変化や日常的な負担を背景に起こることがあります。中高年以降に多く、明確なきっかけを覚えていない人もいます。肩関節周囲炎、いわゆる五十肩とは異なる病気ですが、似た痛みが出たり、両者が重なったりする場合があります。
腕を動かしたときの肩の痛みや、夜間に痛んで眠れない症状、腕を上げる際の力の入りにくさなどがみられます。ただし、断裂があっても腕を上げられる人はいます。更衣、洗髪、物を持つ動作に支障が出るため、介護では痛みの強さだけでなく生活上の変化も確認します。
診断では肩の動きや筋力などを診察し、X線やMRIなどで評価します。治療は薬、注射、運動療法などを行い、症状や機能障害が続く場合には手術を検討します。術後の固定や運動の進め方は修復した腱の状態によって異なり、本人への指示に合わせた介助が必要です。
腕が上がっても断裂がないとは限らない
腱板の一部が切れても、残っている腱や周囲の筋肉が働くため、腕を上げられる場合があります。そのため「頭まで手が届くから切れていない」とは判断できません。反対に、腕が上がらない原因も断裂だけではなく、痛み、関節の硬さ、神経の問題などさまざまです。動きだけで診断しないことが大切です。
保存療法で痛みや動作が改善しても、切れた腱が元どおりにつながったことを意味するとは限りません。治療の目的には、残る機能を生かし、日常生活の負担を減らすことも含まれます。症状が軽くなったからといって急に重い物を持たせたり、強い筋力訓練を追加したりせず、医療職に相談します。
手術で腱を修復した後は、痛みが減っていても腱を保護する時期があります。痛みの有無と動作の許可を分けて考え、装具を外してよい場面、腕を自分で動かせる範囲、体重をかけてよいかを確認します。更衣や起き上がりで腕を引くことを避け、本人と介助者が同じ指示を共有します。
現場で知っておきたいポイント
痛みの出る場面と、腕を使う生活動作の変化を確認します。
- 夜間痛の有無、眠れた時間、寝返り時の痛みを記録する。
- 洗髪、更衣、物を取る動作で困る場面と左右差を共有する。
- 腕を上げる際の力の入りにくさや、けがのきっかけを伝える。
- 介助で患側の腕を引っ張らないようにし、支え方を相談する。
- 術後は装具、運動範囲、杖や手すりに体重をかける可否を確認する。
痛みを我慢させて肩を繰り返し動かさず、着替えの方法や物の置き場所を調整します。運動は医療職の計画に沿って進めます。
転倒後に急に腕を動かせなくなった場合や、強い腫れ・しびれが出た場合は速やかに医療職へ連絡します。
参考情報・参考文献
日本整形外科学会「肩腱板断裂」
腱板の加齢変化、完全・不全断裂、症状と診断・治療を確認。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html
参照日:2026年10月7日
