血管性認知症
ひとことでいうと
血管性認知症
血管性認知症は、脳血管障害によって認知機能が低下し、日常生活に支障を来す状態です。英語ではVascular Dementia、略してVaDと表します。脳血管病変が存在することに加え、それが認知機能低下を説明できるかを検討することが診断の重要な点です。
原因には脳梗塞や脳出血のほか、脳の細い血管に関連する白質病変やラクナ梗塞などがあります。注意の維持や情報処理、段取りが難しくなる場合があり、記憶障害、意欲の低下、歩行障害などもみられます。障害される部位や範囲が異なるため、症状の組み合わせには個人差があります。
脳卒中の後に変化が現れたり、再発に伴って段階的に悪化したりする例もありますが、緩やかに進む例もあります。脳卒中後の認知機能障害は軽度の状態も含み、すべてが認知症とは限りません。また、脳卒中後という時間関係だけで、原因をすべて血管病変に求めることもできません。
混合型認知症は、アルツハイマー病理と脳血管病変など複数の要因が関わる点に焦点を当てた言葉です。血管性認知症と関係しますが同義ではありません。画像だけで診断を確定せず、経過、認知機能、生活の自立度、他の原因の可能性を合わせて医師が判断します。
脳卒中の再発予防と暮らしの支援を組み合わせる
支援では、身体の動かしにくさと認知面の困難を分けて捉えます。着替えが進まない場面でも、麻痺で手が届かないのか、手順が分からないのか、注意がそれるのかで援助が異なります。短い声かけや道具の配置を試し、本人ができた条件を家族と多職種で共有します。能力のばらつきを意欲の問題と決めつけません。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙などへの対応は、新たな脳血管障害を防ぐうえで大切です。服薬、食事、活動を本人の状況に合わせて支えます。血圧や血糖の目標、薬の増減は医療職の方針を確認し、食事量低下やふらつきがあるときも報告します。一つの数値だけを下げることを目標にしません。
認知機能の変化に気づいたら、発症前の生活や脳卒中の時期、その後の経過を整理します。もの忘れの訴えが少なくても段取りや歩行の変化は相談材料になります。本人の不安や家族の負担を聞き、リハビリ職、介護支援専門員、地域の相談窓口と生活目標を調整します。
現場で知っておきたいポイント
認知と運動の両面を見て、再発予防と本人らしい生活の継続を支えます。
- 経過:脳卒中の時期、認知や動作の変化、以前できていた活動を具体的に記録します。急な変化と緩やかな変化を分けます。
- 手順:一度に一つずつ伝え、作業に必要な物をそろえます。注意がそれやすい場合は刺激を減らし、できた方法を共有します。
- 移動:麻痺、ふらつき、段差の認識を確認します。移動を一律に制限せず、リハビリ職と安全な介助量を決めます。
- 健康管理:服薬や指示された測定を支え、食事量、脱水の兆候、立ちくらみも報告します。薬を自己判断で変更しません。
- 連携:本人の希望と家族の困りごとを確認し、医療・介護の目標をそろえます。判断力を診断名だけで決めつけません。
突然の片麻痺、顔のゆがみ、言葉の出にくさなどは脳卒中を疑い、発症時刻を確認して救急要請につなげます。急な混乱や反応の低下も認知症の進行と即断せず、医療職に相談します。
参考情報・参考文献
日本神経学会監修「認知症疾患診療ガイドライン2017」第14章 血管性認知症
確認内容:定義、英語・略語、診断と経過、血管危険因子。
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_14.pdf
参照日:2026年10月16日
国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」
確認内容:脳小血管病、生活上の変化、再発予防と家族支援。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/059.html
参照日:2026年10月16日
猪原匡史「III.血管性認知症」日本内科学会雑誌 2020;109:1519–1525
確認内容:認知機能と脳血管病変の関係、VCIと混合病理。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/8/109_1519/_pdf/-char/ja
参照日:2026年10月16日
