肝性脳症
ひとことでいうと
肝性脳症
肝性脳症は、肝臓の働きの低下や、血液が肝臓を十分に通らない経路の形成などを背景に起こる脳機能の障害です。通常は肝臓で処理されるアンモニアなどの物質が血液中に増え、脳に影響します。肝硬変などでみられ、注意力や睡眠、行動、意識の変化として現れます。
症状は軽い集中力の低下や昼夜逆転から、場所や日時が分からなくなる、会話がかみ合わない、強い眠気が出るといった変化まで幅があります。手を伸ばした際などに不規則な震えがみられることもあり、重症では昏睡に至ります。目立つ症状が少ない段階でも生活の安全に影響する場合があります。
便秘や脱水などが発症のきっかけとなることがあります。診断は肝臓の病気の経過、意識や神経症状、血液検査などを合わせて行い、アンモニアの数値だけで状態を決めるものではありません。認知症やせん妄などと似た変化が出るため、新しい症状を年齢や性格のせいと決めつけないことが大切です。
治療では誘因への対応とともに、腸内でのアンモニアの産生や吸収を抑える薬などが用いられます。食事や栄養の管理も本人の状態に合わせて行います。介護では薬や食事内容を独自に変更せず、排便状況、飲食量、睡眠、呼びかけへの反応などを記録し、変化を早めに医療職へ共有します。
いつもの反応との違いを捉える
本人をよく知る家族や職員の「いつもと違う」という気づきが情報になります。返事にかかる時間、同じ作業での間違い、日中の眠気などを具体的な出来事として伝え、曖昧な印象だけで終わらせません。
転倒や誤嚥につながるおそれがあるため、意識や注意力に変化があるときは移動や食事の安全を見直します。反応が悪い人に無理に飲食させず、医療職と対応を確認し、必要な見守りを調整します。
タンパク質を一律に減らすと低栄養につながることもあります。栄養や水分、排便の目標は主治医・看護師・管理栄養士の指示を確認し、支援者が交代しても同じ内容で支援できるよう共有します。
現場で知っておきたいポイント
介助者は病状や治療を判断せず、体調と生活の変化を観察・記録し、医療職へ共有します。
- 呼びかけへの反応、会話、見当識を普段の状態と比較する。
- 日中の眠気、夜間の覚醒、行動の変化を時刻とともに記録する。
- 排便回数と性状、食事量、水分摂取の変化を共有する。
- 服薬状況を確認し、便の状態だけで薬を中止・増量しない。
- 移動や食事の安全を確認し、注意力の低下に合わせて見守りを調整する。
認知症がある人でも、新たな意識や行動の変化は別の原因を含めて医療職へ相談します。介護者だけで肝性脳症と診断することはできません。
呼びかけに反応しにくい、急に意識が低下した、飲み込みが難しいなどの場合は直ちに医療職へ連絡し、緊急手順に従います。
参考情報・参考文献
済生会「肝性脳症」
仕組み、症状、診断、治療と日常生活での気づきについて確認。
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/hepatic_encephalopathy/
参照日:2026年10月5日
国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター「肝硬変」
肝性脳症の背景となる肝機能低下と血流の変化を確認。
https://www.kanen.jihs.go.jp/sick/kinds/kankouhen.html
参照日:2026年10月5日
