鉄欠乏性貧血
ひとことでいうと
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄不足によってヘモグロビンを十分に作れず、血液中のヘモグロビン濃度が低下する貧血です。ヘモグロビンは赤血球の中で酸素を運ぶたんぱく質で、その材料となる鉄が不足すると、全身へ酸素を届ける働きが低下します。
原因には消化管などからの出血、食事からの鉄の摂取不足、胃や腸の病気・手術後などによる吸収の低下があります。高齢者では胃潰瘍やがんなどによる出血が背景にあることもあり、食事の問題だけと決めつけないことが重要です。
主な症状は疲れやすさ、動いたときの息切れ、動悸、めまいなどです。爪や舌などの変化を伴う場合もあります。ゆっくり進むと症状が目立たず、活動量の低下として表れることもあります。これらは別の病気でも起こるため、見た目や訴えだけで診断できません。
診断にはヘモグロビン、赤血球の大きさ、貯蔵鉄を反映するフェリチンなどの血液検査を用います。必要に応じて出血の原因も調べます。治療は鉄剤による補充と原因への対応が基本です。症状が軽くなっても自己判断で中止しないようにし、食事量、薬の使用、生活上の負担を医療職へ共有します。
鉄剤で便が黒くなることと出血の区別
鉄剤を内服すると、吸収されなかった鉄の影響で便が黒くなることがあります。一方、胃や十二指腸などから出血した場合にも黒い便が出ることがあります。黒い便をすべて鉄剤のせいと判断しないことが大切です。服薬開始との時間関係、便の変化、腹痛、ふらつきなどを記録し、医療職へ伝えます。
便の見た目だけで原因を確定することはできません。新たな黒い便や血便があり、冷汗、強いだるさ、息苦しさなどを伴う場合は早い連絡が必要です。鉄欠乏性貧血そのものの原因として消化管出血が隠れていることもあるため、「鉄剤を飲んでいるから安心」と考えず、本人への説明と受診時の指示を確認します。
鉄剤では吐き気、腹痛、便秘や下痢などが起こる場合もあります。飲みにくさや便通の変化は我慢させず相談します。また、ヘモグロビンが改善しても体内の鉄を補う治療が続くことがあります。継続期間は検査と医師の指示で確認し、薬やサプリメントを独自に追加・中止しないようにします。食事は特定の食品に偏らず、栄養全体を考えて支援します。
現場で知っておきたいポイント
症状と活動の変化、食事・服薬の状況を合わせて医療職へ共有します。
- 歩行や更衣などで息切れ、動悸、休憩が増えていないか確認する。
- 疲れやすさ、めまい、ふらつきと転倒の危険を共有する。
- 食事量の変化と、鉄剤を飲めているかを確認する。
- 吐き気、腹痛、便秘や下痢など服薬後の変化を記録する。
- 便の色、血便の有無、出現時刻と全身状態を伝える。
鉄剤やサプリメントを独自に増減しないことが大切です。検査と原因の評価を受けられるよう支援します。
黒い便や血便と強いふらつき、冷汗、失神、強い息苦しさなどは速やかに連絡し、緊急手順に従います。
参考情報・参考文献
慶應義塾大学病院 KOMPAS「鉄欠乏性貧血、その他の造血因子不足による貧血」
鉄不足の仕組み、血液検査、鉄剤の継続と便・消化器症状を確認。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000022/
参照日:2026年10月6日
国立長寿医療研究センター「貧血の原因は?」
高齢者の鉄欠乏性貧血と消化管出血などの原因を確認。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/11.html
参照日:2026年10月6日
