摩擦力
ひとことでいうと
摩擦力
摩擦力とは、接触している二つの面が互いに滑ろうとするとき、その滑る動きを妨げる方向に働く力です。介護の場面では、皮膚とシーツ、衣服、車椅子の座面などの間で生じる摩擦が問題になります。身体を支える力にも関わるため、摩擦をすべてなくせばよいわけではありません。
身体をベッドの上で引きずったり、タオルで皮膚を強く擦ったりすると、皮膚の表面に負担がかかります。高齢者など皮膚が弱い方では、小さな刺激でも擦り傷や皮膚が裂ける損傷につながる場合があります。湿りや乾燥、衣服のしわなども併せて確認します。
摩擦とずれは関係しますが、同じ概念ではありません。摩擦が接触面の滑りに抵抗するのに対し、ずれは皮膚や内部の組織を平行方向に変形させる負担に注目します。皮膚が寝具にとどまり、身体の内部が動こうとする場面では、両者が一緒に関わります。
褥瘡は圧迫、または圧迫とずれの組み合わせによる組織損傷です。摩擦だけで生じる表面の擦り傷を、そのまま褥瘡と判断しません。ケアでは動かし方と皮膚への接触を見直し、本人の動く力を活かした介助、適切な移動用具、やさしい清潔ケアを組み合わせます。
滑りやすさと姿勢の安定を両方考える
摩擦を減らす移動用具は、身体を寝具の上で動かす際の負担を軽くするために使います。ただし、用具の種類や使い方によっては、移動後も滑りやすさが残ることがあります。移動時の負担軽減と、その後の安定を分けて確認し、取り外しの要否などは製品の説明と専門職の助言に従います。
車椅子でお尻が前へ滑る場合、滑り止めを置くだけでは原因が解決しないことがあります。座面の奥行き、足の支え、骨盤の位置、クッションとの適合を評価します。滑りを止めても身体が前へ動こうとする力が残れば、皮膚の内側にずれの負担が生じる可能性があります。
清拭や排泄後のケアでは、汚れを落とそうとして強く擦らないことが大切です。皮膚の弱さや汚れに合わせて方法を選び、洗浄後はやさしく水分を取ります。赤みや傷の原因は摩擦だけとは限らないため、部位・経過・介助の場面を記録し、看護職と評価を共有します。
現場で知っておきたいポイント
皮膚が何に触れ、どの場面で擦れているかを確認します。移動の介助と清潔ケアの両方で、本人の皮膚の状態と反応に合わせて方法を調整します。
- 身体や衣服を引っ張って皮膚を引きずらないよう、移動用具と人数を準備する。
- 清拭では強く往復して擦らず、汚れや皮膚の弱さに合った方法を選ぶ。
- シーツや衣服のしわ、縫い目、寝具内の異物が当たっていないか確認する。
- 滑りやすい用具は使用後の姿勢と安定を確認し、説明に沿って扱う。
- 赤み、擦り傷、皮膚の裂け、痛みを観察し、起きた場面と一緒に記録する。
皮膚の保湿や保護は、個別のケア計画に沿って行います。座位のずり落ちを滑り止めだけで解決しようとせず、姿勢や用具の適合をリハビリ職などと相談します。
傷や出血、持続する赤みがある場合は看護職へ報告します。介護職が傷の種類を独断で診断したり、治療用薬剤を選んだりしません。
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参考情報・参考文献
NPIAP・EPUAP・PPPIA「The International Guideline:Glossary」
frictionとshearの定義、表皮の擦過損傷との関係を確認しました。
https://www.internationalguideline.com/glossary
参照日:2026年10月9日
日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」
体位変換時の摩擦・ずれへの対策、皮膚を強く擦らない清潔ケアを確認しました。
https://www.jspu.org/general/prevention/
参照日:2026年10月9日
