被害妄想

(ひがいもうそう)とは?
Persecutory Delusion
(パーセキュトリー・ディリュージョン)
別名・関連する表現:被害妄想, 迫害妄想, Persecutory Delusion, 嫌がらせを受けるという確信

ひとことでいうと

被害妄想は、根拠との整合性が乏しくても「害を加えられている」などと強く確信し、説明による修正が難しい状態です。認知症や精神疾患などでみられますが、実際の被害の可能性を確認し、不安と安全に配慮します。

被害妄想

(ひがいもうそう)の意味

被害妄想は、他者から嫌がらせや監視、危害などを受けているという内容を、十分な根拠がない場合にも強く確信し、修正しにくい状態を指します。英語ではPersecutory Delusionと表します。単なる心配や疑い、実際に起きている被害とは区別して、専門的に評価する必要があります。

内容は「誰かが自分を狙っている」「食事に害のある物を入れられた」など多様です。本人には現実の脅威として感じられ、不安や怒り、警戒、食事や外出を避ける行動につながることがあります。妄想は信念や解釈に関する変化で、実在しない声が聞こえる幻聴などの知覚の変化とは異なります。

物盗られ妄想は、持ち物やお金を盗まれたという内容を中心とするもので、被害的な妄想の一つに位置づけられます。被害妄想は盗難以外の内容も含むため、両者は同義ではありません。認知症だけでなく統合失調症などでもみられ、急な出現ではせん妄や身体・薬剤要因も検討します。

認知症の診断や訴えの強さだけで妄想と決めつけません。実際の盗難、虐待、不適切な関わりがないか確認することが大切です。評価には発症時期、確信の強さ、生活への影響、普段との違いを用い、本人の不安や環境変化も把握して医療・介護で対応を考えます。

訴えの事実確認と、不安に寄り添う対応を両立する

疑われた介助者も、悲しさや怒りを感じることがあります。正しさを証明しようと長く反論すると、対立が強まる場合があります。まず「心配なのですね」と感情を受け止め、落ち着いた短い言葉で話します。内容を事実として肯定する必要はありません。会話が難しいときは担当者を替える、時間を置くなどの工夫も検討します。

環境が変わった、説明のないまま持ち物を移された、相手の声がよく聞こえなかったなど、不信につながる出来事がないかを確かめます。物の定位置や支援の手順を本人と共有し、できるだけ予測できる生活を整えます。環境調整だけで必ず改善するわけではなく、原因と苦痛の評価も続けます。

家族や特定の職員が疑われ続けると支援が途切れることもあります。本人と介助者の双方に相談先を設け、記録をもとに多職種で対応をそろえます。危害への恐れが強いときや、食事・服薬・睡眠に支障があるときは早めに医療職へ相談します。薬の使用や変更は自己判断せず、効果と副作用を共有します。

現場で知っておきたいポイント

訴えを症状と即断せず、事実と本人の気持ち、安全上の懸念を分けて確認します。

  • 事実確認:持ち物や支援の経緯を落ち着いて確認します。実際の被害や不適切な対応がないか、複数の情報で確かめます。
  • 対話:長い反論や説得を避け、不安や怖さを受け止めます。被害内容に同調して確信を強めるような説明もしません。
  • 環境:物の場所や介助の手順を共有し、変更前に説明します。聞こえや見え方、慣れない人や場所の影響も確認します。
  • 安全:食事拒否、逃げ出す動き、相手を攻撃しそうな様子を共有します。切迫時は距離と応援を確保し、一人で対応しません。
  • 連携:発症時期、睡眠、身体症状、薬の変更を記録します。家族や疑われた介助者の負担も医療・介護チームで支えます。

急な混乱、注意や反応の変化、発熱などを伴う場合は、せん妄や身体疾患の評価を急ぎます。強い苦痛や生活への支障が続く場合も早めに相談し、薬を自己判断で変更しません。

関連する用語

参考情報・参考文献

国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト:統合失調症」

確認内容:妄想と幻覚の違い、被害的な内容と確信、専門的相談。

https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=tQtLd1xVUp1wHJMQ

参照日:2026年10月16日

国立精神・神経医療研究センター掲載「統合失調症 情報提供ガイド(家族心理教育編)」

確認内容:不安の受容、対立を避ける対応、行動化と家族支援。

https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiiki/documents/kazokushinrikyoikuhen.pdf

参照日:2026年10月16日

国立長寿医療研究センター「認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版」

確認内容:認知症の行動・心理症状、せん妄との鑑別、身体・薬剤・環境要因。

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

参照日:2026年10月16日

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