はじめに

「最近、なんとなく元気がない」
「食事の量が減っている」
「立ち上がるとふらつくことが増えた」
高齢者にこうした変化がみられたとき、原因のひとつとして考えておきたいのが脱水です。
脱水というと、「暑い日に汗をたくさんかいて、水分が足りなくなる状態」をイメージする方も多いかもしれません。
しかし、高齢者は加齢によって身体に蓄えられる水分が少なくなったり、喉の渇きを感じにくくなったりするため、本人が気づかないうちに脱水が進んでしまうことがあります。
また、脱水による体調の変化は「喉が渇く」だけではありません。口の乾燥や尿量の減少、だるさ、食欲低下、ふらつきなど、普段の生活の中にさまざまなサインとして現れることがあります。
だからこそ、ご本人の訴えだけに頼らず、周囲の人が「いつもと少し違う」変化に気づくことが大切です。
高齢者の脱水とは?
脱水とは、簡単にいうと身体に必要な水分や電解質が不足した状態のことです。
私たちの身体には多くの水分が含まれており、血液の循環や体温調節、栄養素の運搬など、生命を維持するためのさまざまな働きに関わっています。
一方で、身体の水分は汗や尿だけでなく、呼吸などからも少しずつ失われています。そのため、飲み物や食事から摂る水分よりも、身体から失われる水分が多くなると、体内の水分バランスが崩れて脱水につながります。
特に高齢者は、若い人と比べて身体に蓄えられる水分が少なく、喉の渇きにも気づきにくい傾向があります。そのため、本人が「喉が渇いた」と感じていなくても、脱水が起こっている可能性があります。
なぜ高齢者が脱水になりやすいのかについては、次の章で詳しくみていきましょう。
脱水は水分だけが不足した状態とは限らない
「脱水」という言葉から、水だけが足りなくなった状態をイメージするかもしれません。
しかし、汗や下痢、嘔吐などによって身体から水分が失われるときには、ナトリウムなどの電解質(身体の働きを保つために必要な成分)も一緒に失われることがあります。
そのため、脱水への対応では単純に水を飲めばよいとは限らず、どのような状況で水分が失われたのかを考えることも大切です。
また、身体に入ってくる水分は飲み物だけではありません。ご飯やおかず、汁物、果物など、普段の食事にも水分は含まれています。
食事量が減れば、知らないうちに1日の水分摂取量も少なくなる可能性があります。



つまり脱水を考えるときは、「どれだけ飲んだか」だけではなく、食事や排泄、発汗なども含めた身体全体の水分の出入りを見ることが重要です。
脱水と熱中症は同じものではない
脱水と一緒によく聞く言葉に「熱中症」があります。
特に夏場は同じような場面で使われるため、同じものだと思われがちですが、脱水と熱中症は同じ状態ではありません。
脱水は、身体の水分や電解質が不足した状態です。
一方、熱中症は高温多湿な環境などによって身体の体温調節がうまく働かなくなり、さまざまな体調不良が起こる状態の総称です。
暑い環境で大量に汗をかけば、身体から水分や電解質が失われます。そのため、脱水は熱中症を引き起こす要因のひとつになります。
ただし、脱水が起こるのは暑い夏だけではありません。
冬場でも暖房によって室内が乾燥していたり、体調不良で食事や水分が十分に摂れなかったり、発熱・下痢・嘔吐が続いたりすれば、脱水につながることがあります。



「暑くないから脱水ではない」と考えず、高齢者の脱水は一年を通して注意が必要だと覚えておきましょう。
なぜ高齢者は脱水になりやすい?
高齢者の脱水を予防するためには、まず「なぜ高齢者は脱水になりやすいのか」を知っておくことが大切です。
単純に「水を飲む量が少ないから」という理由だけではありません。
加齢による身体の変化に加えて、食事量や排泄への不安、病気や薬など、いくつもの要因が重なることで脱水のリスクが高くなります。
身体に蓄えられる水分が少なくなる
人間の身体に含まれる水分の割合は、年齢によって変化します。
高齢になると若い頃よりも筋肉量が減少しやすくなります。筋肉は多くの水分を含む組織であるため、筋肉量が減ることで身体に蓄えておける水分も少なくなる傾向があります。



つまり、高齢者はもともと水分貯蔵の「余裕」が少ない状態と考えることができます。
若い人では大きな問題にならない程度の水分不足でも、高齢者では身体への影響が現れやすくなる可能性があります。
特に暑い日や発熱などで普段より水分を失いやすい状況では、注意が必要です。
喉の渇きを感じにくくなる
私たちは身体の水分が不足してくると喉の渇きを感じ、それをきっかけに水分を摂ります。
しかし、高齢になると喉の渇きを感じる感覚が鈍くなることがあります。
身体では水分が必要になっているにもかかわらず、



「特に喉は渇いていないから大丈夫」
と思ってしまい、水分補給が遅れることがあります。
そのため、高齢者の脱水予防では、「喉が渇いたら飲む」だけでは十分とはいえません。
本人から「水が欲しい」という訴えがなくても、生活の中で定期的に水分を摂ることが大切です。
食事量が減ると水分摂取量も少なくなる
水分というと、お茶や水などの飲み物を思い浮かべますが、私たちは食事からも水分を摂取しています。
そのため、
- 食欲がない
- 体調を崩している
- 暑さで食事が進まない
- 食事を残すことが増えた
といった状態では、食事と一緒に摂っていた水分も減ってしまいます。
高齢者の場合、「飲み物はいつもと同じくらい飲んでいる」という場合でも、食事量が大きく減っていれば、1日全体でみると水分摂取量が不足している可能性があります。
水分量だけを見るのではなく、最近の食事量に変化がないかも一緒に確認することが大切です。
トイレを気にして水分を控えてしまうことがある
高齢者の水分摂取量が少なくなる背景には、身体的な問題だけでなく、排泄への不安が隠れていることもあります。
たとえば、



「夜中に何度もトイレへ行きたくない」
「失禁したくない」
「何度も介助をお願いするのが申し訳ない」
と考えて、本人が意識的に水分を控えているケースです。
特に歩行が不安定な方やトイレまでの移動に介助が必要な方にとって、排泄は大きな負担になることがあります。
このような場合、「もっと水分を飲んでください」と声をかけるだけでは、なかなか解決しません。
トイレまでの移動方法や排泄環境、介助を頼みやすい関係づくりなど、水分を控えている理由そのものに目を向けることも必要です。
病気や薬の影響で脱水しやすくなることもある
高齢者では、病気や薬の影響によって身体から失われる水分が増えることもあります。
たとえば、発熱によって汗をかいたり、下痢や嘔吐が続いたりすれば、普段より多くの水分が身体から失われます。
また、高血圧や心不全などの治療で使用されることがある利尿薬は、尿として水分やナトリウムを排出する作用があります。



ただし、薬が脱水に関係している可能性があるからといって、自己判断で服薬を中止してはいけません。
また、心臓や腎臓などの病気によっては、水分や塩分の摂取量について医師から指示を受けている場合があります。
「脱水が心配だから、とにかくたくさん飲んでもらう」という対応が、すべての高齢者に適しているわけではありません。
持病や服薬がある方では、医師や看護師などの指示を確認しながら、その方に合った水分管理を行うことが大切です。
このように、高齢者の脱水には身体の変化だけでなく、食事・排泄・病気・薬などさまざまな要因が関係しています。
だからこそ、「水分を飲んでいない」という一部分だけを見るのではなく、普段の生活や体調の変化まで含めて考えることが、脱水を防ぐ第一歩になります。


高齢者の脱水でみられる症状とサイン
高齢者の脱水は、必ずしも「喉が渇いた」というわかりやすい症状から始まるとは限りません。
むしろ介護の現場や家庭では、



「なんとなく元気がない」
「食事が進まない」
「いつもより動かない」
といった、ちょっとした変化から気づくことがあります。
脱水が進む前に対応するためにも、普段からどのようなサインがみられるのか知っておきましょう。
まず気づきたい脱水の初期症状
脱水が疑われるときには、次のような変化がみられることがあります。
- 口の中や唇が乾いている
- 尿の量や回数が少なくなる
- 尿の色がいつもより濃い
- 食欲が落ちている
- 身体がだるそうにしている
- 元気がなく、活動量が減っている
こうした変化は、どれも脱水だけにみられる特別な症状ではありません。
たとえば「今日は食欲がない」「少し疲れている」というだけなら、脱水以外にもさまざまな原因が考えられます。



大切なのは、ひとつの症状だけを見て脱水と決めつけるのではなく、複数の変化や普段との違いを確認することです。
特に高齢者では、自分から体調の変化をうまく伝えられない場合もあります。
本人から「大丈夫」と言われた場合でも、口の乾燥や排尿状況、食事・水分摂取量など、周囲から確認できる変化にも目を向けましょう。
ふらつきや立ちくらみにも注意する
脱水によって体内の水分が不足すると、循環する血液量が減少し、血圧が低下することがあります。
その影響で、



「立ち上がったときにフラッとする」
「歩き始めが不安定になる」
「立っていると気分が悪くなる」
といった症状が現れることがあります。
特に高齢者の場合、ふらつきは転倒につながる可能性があるため注意が必要です。
普段は安定して歩いている方が急にふらつくようになった場合、「足腰が弱くなった」と考えるだけではなく、脱水や体調不良など身体の状態が変化していないか確認することも大切です。
また、立ち上がった際に血圧が低下し、めまいやふらつきなどが現れる状態として起立性低血圧があります。
脱水は起立性低血圧を引き起こしたり、症状を悪化させたりする要因のひとつです。
「いつもと違う様子」も重要なサイン
高齢者の脱水を早く見つけるうえで、数値やわかりやすい症状だけでなく、普段との違いに気づくことも重要です。
たとえば、
- いつもより会話が少ない
- 呼びかけへの反応が鈍い
- ぼんやりしていることが増えた
- 横になっている時間が長い
- 食事や活動への意欲が低下している
など、一見すると脱水とは結びつきにくい変化がみられることもあります。
こうした状態を



「高齢だから仕方ない」
「今日は疲れているのだろう」
と年齢だけで判断してしまうと、身体から出ているサインを見逃してしまう可能性があります。
特に、普段から関わっている家族や介護職は、その方のいつもの表情や会話、食事量、活動量などを知っています。
だからこそ、「昨日までと何か違う」「今日はいつもより元気がない」という感覚も大切な情報のひとつです。
脱水に限らず、高齢者の体調変化を早く見つけるためには、「何の症状があるか」だけではなく、その人の普段の状態と比べてどう変わったのかという視点を持っておきましょう。
脱水かも?介護者が確認したいチェックポイント
「もしかして脱水かも?」と思ったとき、介護者は何を確認すればよいのでしょうか。
高齢者の場合、自分から「水分が足りない」「体調がおかしい」と訴えられるとは限りません。
だからこそ、普段の介助や会話の中で得られる情報を組み合わせて、身体や生活に変化がないか確認することが大切です。
口・尿・食事・水分・体調を確認する
脱水が疑われる場合は、次のようなポイントを確認してみましょう。
【口の中】
- 口の中や唇がいつもより乾燥していないか
- 舌が乾いていないか
【尿・排泄】
- 尿の回数や量が減っていないか
- 尿の色がいつもより濃くなっていないか
- 下痢や嘔吐が続いていないか
【食事・水分】
- 水分を普段どのくらい摂れているか
- 食事量が減っていないか
- 水分を勧めても飲みたがらないことが増えていないか
【身体・体調】
- 発熱や多量の発汗がないか
- いつもよりだるそうにしていないか
- ふらつきや立ちくらみがないか
- 会話や呼びかけへの反応に変化がないか



ここで大切なのは、現在の状態だけでなく、「普段と比べてどうなのか」を見ることです。
たとえば、もともと水分摂取量が少ない方と、普段はよく飲んでいるのに急に飲まなくなった方では、同じ摂取量でも受け止め方が変わります。



「昨日はどのくらい飲めていたか」
「最近、食事を残すことが増えていないか」
「トイレの回数がいつもと違わないか」
など、時間の経過も含めて確認すると変化に気づきやすくなります。
介護施設や在宅サービスなど複数の人が関わる場合には、食事量や水分摂取量、排泄状況などを記録して共有することも、体調変化の早期発見につながります。
一つの症状だけで脱水と判断しない
チェックポイントに当てはまるものがあったとしても、それだけで脱水と判断できるわけではありません。
たとえば尿の色が濃くなることや、食欲が落ちること、ふらつきがみられることには、脱水以外の原因が関係している場合もあります。
反対に、「口が乾いていないから脱水ではない」と、一つの症状がないことだけで否定することもできません。
大切なのは、
「何か一つ当てはまるか」ではなく、「複数の変化が重なっていないか」を見ること。
さらに、その方の普段の状態と比べながら考えることです。
また、高齢者では体調が短時間で変化することもあります。
一度確認して問題がなかったから終わりではなく、気になる変化がある場合には、その後の水分摂取量や排尿、表情、活動量なども継続して確認しましょう。
介護者の役割は、チェック項目だけを使って脱水を診断することではありません。



「いつもと違う変化を見つけ、必要な対応や医療につなげること」が重要です。
特に、水分をほとんど摂れない、意識がもうろうとしているなど明らかな異変がある場合には、チェックを続けることよりも医療機関への相談や受診を優先しましょう。
具体的にどのような状態で受診を考えるべきかについては、後半で詳しく解説します。


高齢者の脱水を防ぐ水分補給と予防のポイント
高齢者の脱水を防ぐためには、「たくさん水を飲んでもらう」ことだけを考えるのではなく、無理なく水分を摂れる環境や習慣をつくることが大切です。
その日の体調や食事、排泄、活動量などによっても必要な対応は変わります。
ここでは、家庭や介護現場で意識したい水分補給と予防のポイントを紹介します。
① 喉が渇く前にこまめに水分を摂る



高齢者の水分補給では、喉が渇いてから一度にたくさん飲むのではなく、生活の中でこまめに摂ることを意識しましょう。
たとえば、
- 起床したとき
- 朝・昼・夕の食事
- 午前・午後の休憩
- 入浴の前後
- 運動や外出の前後
など、普段の生活動作と水分補給をセットにすると習慣にしやすくなります。
介護者側も「水分を摂ってください」と何度も声をかけるより、



「おやつと一緒にお茶を飲みましょう」
「お風呂に入る前に少し飲んでおきましょう」
など、自然なタイミングで勧める方が受け入れてもらいやすいことがあります。
一度に多く飲めない方には、少量ずつ回数を増やすなど、その方が続けやすい方法を探すことも大切です。
僕はテレビの視聴している方には、



「CMになったらなったら、ひと口飲んでください」
そう促しています。
大切なのはちょこちょこ飲みです。
② 飲み物以外からも水分を摂る
水分補給というと、水やお茶を何杯飲んだかに目が向きがちですが、食べ物にも水分は含まれています。
たとえば、
- 味噌汁やスープ
- ゼリー
- ヨーグルト
- 果物
- 水分を多く含む料理
なども、水分を摂る方法のひとつです。
水やお茶をあまり飲みたがらない方でも、好みの食べ物であれば摂取しやすい場合があります。



「水を飲んでもらわなければ」と一つの方法にこだわるのではなく、本人の好みや食べやすさに合わせて選択肢を増やすといいと思います。
ただし、糖分や塩分などの制限がある方では、食品の種類や量にも注意が必要です。
③ 水・お茶・スポーツドリンク・経口補水液は使い分ける
水分補給に使われる飲み物にはさまざまな種類がありますが、すべてを同じように考える必要はありません。
普段の水分補給であれば、水やお茶などを中心に摂取できます。
一方、大量に汗をかいたときなどは、水分とともに塩分なども失われます。そのような場面では、状況に応じてスポーツドリンクなどが選択肢になることもあります。
そして、脱水時の水分・電解質補給を目的として利用されるのが経口補水液(ORS)です。
経口補水液は、水分とナトリウムなどの電解質を効率よく補給できるように調整されていますが、普段のお茶や水の代わりとして日常的にたくさん飲むものではありません。
スポーツドリンクと経口補水液も同じものではなく、含まれる糖分や電解質などのバランスが異なります。



「身体によさそうだから」と何となく選ぶのではなく、普段の水分補給なのか、汗を多くかいた場面なのか、脱水が疑われる状況なのかによって使い分けましょう。
なお、心臓や腎臓の病気などで水分・塩分・カリウムなどの摂取について指示を受けている方は、自己判断で摂取量を増やさず、医師などから指示されている内容を優先してください。
④ 飲み込みに不安がある場合は無理に飲ませない
水分を摂ってほしいからといって、飲み込みに不安がある方へ無理に飲ませることは避けましょう。
特に、
- 水分を飲むとよくむせる
- 飲んだあとに声が変わる
- 口の中に水分をため込む
- 飲み込むまでに時間がかかる
といった様子がみられる場合には注意が必要です。
水やお茶のようなサラサラした液体は、飲み込みの状態によってはむせやすいことがあります。
必要に応じて、とろみをつけたり、姿勢や一口量を調整したりする場合もありますが、適切な方法はその方の嚥下機能によって異なります。
水分補給を優先するあまり誤嚥につながっては本末転倒です。
むせなどが繰り返される場合には、医師や看護師、言語聴覚士などの専門職に相談し、安全に水分を摂れる方法を確認することが大切です。
⑤ 室温や湿度を調整する
脱水予防では、飲む量だけでなく水分を失いやすい環境をつくらないことも重要です。
特に夏場は、室内にいても室温や湿度が高くなり、知らないうちに汗をかいていることがあります。
高齢者の中には暑さを感じにくい方もいるため、



「本人が暑くないと言っているから大丈夫」
とは限りません。
エアコンや扇風機などを適切に使いながら、温度計や湿度計で室内環境を確認するのもひとつの方法です。
また、冬場も暖房による室内の乾燥や、水分を摂る機会が減ることなどがあります。
季節だけで判断するのではなく、一年を通して過ごしている環境と水分摂取の両方を見ることを意識しましょう。
⑥ 食事・排泄・活動量も一緒に見る
脱水を予防するとき、



「今日は何mL飲んだか」
を記録することはもちろん大切です。
しかし、それだけでは身体の水分状態を十分に把握できないことがあります。
たとえば、いつもと同じ量を飲んでいても、暑い日に長時間外出して汗を多くかけば、身体から出ていく水分は増えます。
反対に、食事量が減っていれば、飲み物以外から摂っている水分も少なくなります。
そのため、
水分摂取量+食事量+排泄+発汗+活動量+体調
をセットで考えることが大切です。
介護現場では、水分摂取量だけを単独で見るのではなく、



「今日は食事も半分しか食べていない」
「いつもより尿が少ない」
「外出して汗をたくさんかいた」
などの情報も共有しておくと、より小さな変化に気づきやすくなります。
脱水予防で大切なのは、決められた量をただ飲んでもらうことではありません。
その日の生活や身体の状態に合わせて、水分の「入る量」と「出る量」のバランスを見ること。
こうした日々の小さな確認が、高齢者の脱水を防ぐことにつながります。
こんなときは医療機関への相談・受診を考える
脱水が疑われる場合、軽い状態であれば水分を補給しながら様子を確認できることもあります。
しかし、高齢者は体調が変化しやすく、脱水だと思っていた症状の背景に別の病気が隠れている可能性もあります。
「とりあえず水分を飲ませておけば大丈夫」と考えず、水分が十分に摂れない場合や症状が改善しない場合には、早めに医療機関へ相談することが大切です。
水分が摂れない・症状が改善しない場合
脱水が疑われても、本人が自分で水分を摂れるとは限りません。
たとえば、
- 吐き気や嘔吐があり、水分を飲んでも吐いてしまう
- 食事や水分をほとんど摂れない状態が続いている
- 強いだるさなどがあり、自分で飲むことが難しい
- 下痢や発熱が続いている
- 水分を摂っても体調が改善しない
- 尿が極端に少ない、長時間出ていない
- 普段と比べて明らかに元気がない
といった状態がみられる場合には注意が必要です。
特に、嘔吐や下痢が続いている場合には、水分を摂っていても、それ以上に身体から水分や電解質が失われている可能性があります。
また、高齢者では脱水だけでなく、感染症など別の体調不良によって食事や水分が摂れなくなっている場合もあります。



そのため、「水分を飲ませること」だけで解決しようとせず、なぜ摂れなくなっているのかを考えることも重要です。
介護施設や在宅サービスで異変に気づいた場合には、看護師や主治医などへ相談し、普段の状態と何が違うのか、水分や食事をどの程度摂れているのか、排尿や発熱などの状況を伝えましょう。
意識状態がおかしい場合は緊急対応を
脱水が進行すると、意識状態に異常がみられることがあります。
- 呼びかけても反応が鈍い
- 会話がうまくできない
- 意識がもうろうとしている
- 自力で身体を起こせない
- 水分を安全に飲み込めない
など、明らかに普段と様子が違う場合には緊急性の高い状態も考えられます。
このような状態の方に、「脱水だから水を飲ませなければ」と無理に水分を飲ませるのは危険です。



意識が低下していると、うまく飲み込めず、水分が気管へ入ってしまう可能性があります。
無理に飲ませず、状態に応じて救急要請を含めた緊急対応を検討してください。
また、暑い環境で過ごしていた方に意識障害などがみられる場合には、重い熱中症の可能性も考える必要があります。
脱水は家庭や介護現場で気づき、予防できることも多い一方で、介護者だけで重症度を判断しようとしないことも大切です。



「いつもと明らかに違う」
「水分を摂れない」
「状態が悪くなっている」
と感じたときには、無理に様子を見続けず、医療機関や医療職につなげるようにしましょう。
まとめ|高齢者の脱水は「いつもとの違い」に気づくことが大切
高齢者は、加齢による身体の変化や喉の渇きを感じにくくなることなどから、脱水になりやすい傾向があります。
さらに、食事量の低下やトイレへの不安、発熱・下痢などの体調不良、病気や薬の影響など、さまざまな要因が重なることもあります。



脱水を予防するために大切なのは、「喉が渇いたら水分を摂る」だけに頼らないことです。
普段からこまめに水分を摂る習慣をつくり、飲み物だけでなく食事から摂る水分も意識しましょう。また、室温や湿度、食事量、排泄、活動量など、生活全体から身体の水分バランスを考えることも大切です。
そして、介護するうえで特に意識してほしいのが、「いつもとの違い」に気づくことです。



「今日はあまり食べていない」
「トイレの回数が少ない」
「いつもより会話が少ない」
「立ち上がると少しふらついている」
こうした一つひとつの変化は、小さなことに見えるかもしれません。
しかし、普段の様子を知っている家族や介護職だからこそ、その小さな変化に気づけることがあります。
もちろん、すべての変化を脱水と結びつける必要はありません。
大切なのは、「高齢だから」「いつものことだから」と決めつけず、身体から出ているサインのひとつとして捉えることです。
水分が十分に摂れない、体調が改善しない、意識状態がおかしいなどの異変がある場合には、無理に様子を見続けず医療職へ相談しましょう。
高齢者の脱水は、暑い季節だけに起こるものではありません。
日頃から水分を摂りやすい環境をつくり、普段の食事や排泄、表情、活動量などを知っておくこと。
その積み重ねが、脱水の予防と早期の気づきにつながります。










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