はじめに
高齢になると、

「何か趣味を持ちましょう」
「頭を使うことを続けましょう」
と言われることが増えます。その中でも、私が特におすすめしたいのが読書です。
読書というと、「認知症予防のための脳トレ」というイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし、読書の魅力はそれだけではありません。
本や新聞を読むために身体を起こして座る時間が増えたり、内容を考えたり、人との会話が増えたりと、心や身体、そして生活全体にさまざまな良い影響をもたらしてくれます。
私自身、病院で理学療法士として勤務していた頃、長期間の入院によって認知機能や身体機能が低下していくご利用者様を数多く見てきました。
その一方で、毎日のように新聞や本を読んだり、日記を書いたりと、文字に触れる習慣を続けている方は、入院生活の中でも比較的いきいきと過ごされている印象がありました。
もちろん、読書だけで認知症や身体機能の低下を防げるわけではありません。



しかし、毎日の生活に読書を取り入れることは、健康的な生活習慣づくりの一つになると私は考えています。
① 読書をする高齢者は認知機能を保ちやすいと言われている
読書や新聞を読む習慣は脳への良い刺激になる
「読書は認知症予防に良い」と耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
もちろん、読書だけで認知症を予防できるわけではありません。しかし、普段から文字を読み、内容を理解し、自分で考える時間を持つことは、脳へ自然な刺激を与える生活習慣の一つと考えられています。
また、本だけでなく、新聞や雑誌を読んだり、その日の出来事を日記に書いたり、誰かに手紙を書いたりすることも、脳を使う大切な活動です。
「特別な脳トレを始めなければ」と考える必要はありません。毎日の生活の中で自然に文字へ触れることが、認知機能を維持するきっかけになる可能性があります。
「読む・考える・思い出す」が脳を自然に使う
読書が脳に良いと言われる理由は、単に文字を目で追っているだけではないからです。
本を読むと、文章を理解し、内容を考え、登場人物や場面を想像しながら読み進めます。
また、



「さっきはどんな内容だったかな」
と思い出しながら読むことで、自然と記憶も使っています。
つまり読書では、
- 文字を読む
- 内容を理解する
- 情景や人物を想像する
- 前後の内容を思い出しながら読み進める
という一連の流れの中で、脳のさまざまな働きを自然に使っています。
さらに、



「面白かった」
「勉強になった」
「誰かに話してみたい」
「誰かにおすすめしたい」
と感じることで感情も動き、その内容が家族や友人との会話につながることも少なくありません。
このように、読書は単なる知識を増やすためのものではなく、脳を無理なく幅広く働かせる習慣の一つと言えるでしょう。
もちろん、認知症予防には運動やバランスの良い食事、人との交流なども欠かせません。
しかし、その中の一つとして、読書や新聞、日記など「文字に触れる時間」を毎日の生活に取り入れることは、高齢者にとって続けやすく、取り組みやすい習慣ではないでしょうか。
私自身も病院で理学療法士として勤務していた頃、このことを実感する場面が何度もありました。次は、私が実際の臨床現場で感じた「読書をする方に共通していたこと」についてお話しします。


私が病院で勤務していて感じた「読書をする人」の共通点
入院中でも新聞や本を読む方は元気な印象があった
私が病院で理学療法士として勤務していた頃、多くのご高齢のご利用者様と関わる機会がありました。
入院生活では、どうしてもベッドで過ごす時間が長くなります。活動量が減ることで身体機能だけでなく、認知機能が低下してしまう方も少なくありません。
そのような中でも、毎朝新聞を読んだり、本を読んだり、日記を書いたりしている方が一定数おられました。
もちろん、年齢や病気の程度、もともとの生活習慣など、それぞれ背景は異なります。しかし、そうした方々は入院生活の中でも表情が明るく、会話の受け答えもしっかりしており、



「今日は新聞でこんな記事を読んだよ」
「この本が面白くてね」
と、自分から話しかけてくださることも多くありました。
一方で、長時間ベッドで過ごし、テレビを見る以外に楽しみが少ない方では、日付や曜日が分からなくなったり、意欲が低下したりする場面を目にすることも少なくありませんでした。
こうした経験から、私は「文字に触れる習慣」は、高齢者の生活にとって大きな意味を持つのではないかと感じるようになりました。
読書だけが理由ではないが大きな違いを感じた
もちろん、「読書をしているから認知症にならない」「読書だけで元気でいられる」と言いたいわけではありません。
認知機能には、運動習慣や食生活、人との交流、持病の有無など、さまざまな要因が関係しています。
それでも、病院で数多くのご利用者様と関わる中で、読書や新聞、日記など、日常的に文字へ触れる習慣がある方ほど、自分で考え、周囲と会話を楽しみ、前向きにリハビリへ取り組まれている印象を受ける場面が何度もありました。
これは科学的な研究結果ではなく、あくまで私自身が臨床で感じてきた経験です。
しかし、だからこそ私は、ご利用者様やご家族から



「何か始められることはありますか?」
と相談を受けた際には、読書や新聞を読む習慣をおすすめすることがあります。
そして、私が読書をおすすめしたい理由は、認知症予防だけではありません。



実は読書には、身体機能の維持や廃用症候群の予防にもつながる大きなメリットがあると考えています。
② 読書は身体を動かす「きっかけ」になる
読書をするためにはまず身体を起こす
私が読書をおすすめしたい理由は、認知症予防だけではありません。



理学療法士として考えると、読書には「身体を動かすきっかけをつくる」という大きなメリットがあります。
本を読むためには、まず身体を起こす必要があります。ベッドで横になったままでは読みにくいため、多くの方は起き上がり、椅子やソファへ座って本を開きます。
この何気ない動作の中には、
- 起き上がる
- 座る
- 姿勢を保つ
- ページをめくる
といった、さまざまな身体活動が含まれています。
一つひとつは小さな動作かもしれません。しかし、高齢者にとっては、この「身体を起こして活動する時間」そのものがとても大切なのです。
「読書」は”座る理由”をつくってくれる
高齢者に「座って過ごしましょう」と声をかけても、目的がなければ長く座り続けることは意外と難しいものです。
一方で、



「本の続きを読みたい」
「新聞を最後まで読みたい」
という目的があると、自然と椅子に座る時間が増えていきます。
この“目的を持って座る”ことがとても大切です。
読書は単なる暇つぶしではありません。



「知りたい」
「続きを読みたい」
という気持ちが、自然と身体を起こし、座る時間を増やしてくれるのです。
座って過ごす時間が増えれば、それだけ臥床時間は短くなります。
高齢者では、寝ている時間が長くなるほど筋力や体力、バランス能力が低下しやすくなり、廃用症候群につながることがあります。
本を取りに行くことも生活動作になる
読書は、本を開いている時間だけが運動ではありません。



「今日はあの本を読もう」と思えば、本棚まで歩いて行き、本を取り、椅子へ座るという一連の動作が自然と生まれます。
- 歩く
- 方向を変える
- 手を伸ばす
- 立ったり座ったりする
こうした動作は、私たち理学療法士がリハビリで大切にしている基本的な生活動作そのものです。
運動のために無理をするのではなく、「本を読みたい」という気持ちが結果として身体を動かすきっかけになるのです。
私はリハビリの現場で、「生活そのものがリハビリになる」と何度もお伝えしてきました。
特別な運動だけが健康につながるのではありません。
読書という趣味を楽しみながら自然と身体を動かし、座る時間を増やすことも、高齢者にとっては大切な健康づくりの一つだと考えています。


③ 読書は心を元気にする習慣でもある
新しい知識が毎日の楽しみになる
読書の魅力は、脳や身体への良い影響だけではありません。
本を読むことで新しい知識に触れたり、知らなかった世界を知ったりすることは、毎日の生活に楽しみや刺激を与えてくれます。



「今日はどこまで読もうかな。」
「続きが気になる。」
「こんな考え方もあるんだ。」
このような小さな楽しみがあるだけでも、毎日の生活に張り合いが生まれます。
高齢になると、仕事や子育てを終え、家で過ごす時間が増える方も少なくありません。そのような中で、何かに興味を持ち、好奇心を持ち続けることは、心の健康を保つうえでも大切なことです。
読書には年齢制限はありません。
歴史や小説、健康に関する本、旅行、園芸、料理など、自分の好きな分野を読むだけでも十分です。
「学ぶ」というよりも、「楽しむ」という気持ちで続けることが、長く読書を続けるコツではないでしょうか。
家族や周囲との会話も増えやすい
読書は、一人で楽しむ趣味というイメージがありますが、実は人との会話を増やすきっかけにもなります。



「今日の新聞にこんな記事が載っていたよ。」
「この本、とても面白かったよ。」
「今度あなたも読んでみない?」
こうした何気ない一言から会話が始まり、家族や友人とのコミュニケーションが生まれることも少なくありません。
また、図書館や読書会などへ足を運ぶきっかけになれば、新しい人との出会いや地域とのつながりが生まれることもあります。
高齢になると、退職や身体機能の変化などにより、人と話す機会が少なくなってしまう方もいます。会話の機会が減ることで、家に閉じこもりがちになり、孤立につながってしまうケースも少なくありません。
そのような中で、読書は「誰かに話したい」「感想を伝えたい」という気持ちを自然と引き出してくれる趣味でもあります。
もちろん、読書をするだけで孤立を防げるわけではありません。しかし、本をきっかけに家族や友人との会話が増えれば、それは心の健康を支える大切な時間になります。



読書は知識を増やすためだけではなく、「毎日を少し楽しくする習慣」でもあると感じています。
今日から始められる読書習慣のコツ
長時間読む必要はない



「読書は苦手だから続かない。」
「本を1冊読むのは大変そう。」
そのように感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、読書は何時間も続ける必要はありません。
1日5分でも、10分でも十分です。
朝食後のひとときや、お昼休み、寝る前など、自分が続けやすい時間に少しだけ本を開いてみましょう。
大切なのは、「たくさん読むこと」ではなく、「続けること」です。
毎日少しずつ文字に触れる習慣ができれば、それが自然と生活の一部になっていきます。
無理に難しい本を読む必要もありません。



自分が「読んでみたい」と思える本を選ぶことが、長く続ける一番のコツです。
本だけでなく新聞や日記でも大丈夫
「読書」と聞くと、本を読むことだけをイメージする方もいるかもしれません。
しかし、文字に触れる習慣は本だけではありません。
例えば、
- 新聞を読む
- 雑誌を読む
- 日記を書く
- 手紙を書く
- 俳句や短歌を楽しむ
- クロスワードや漢字パズルに挑戦する
こうした活動も、文字を読み、考え、思い出す機会になります。



大切なのは、「本を読むこと」ではなく、「毎日少しでも文字に触れる時間をつくること」です。
好きなことや興味のあることなら、自然と続けやすくなります。



「今日は新聞だけ読もう。」
「寝る前に5分だけ本を開こう。」
そのくらいの気持ちで始めることが、長く続ける秘訣です。
読書は特別な趣味ではありません。
毎日の生活の中で無理なく取り入れられる、心と身体、そして生活を元気にする習慣の一つなのです。
まとめ|読書は「脳」だけでなく生活全体を元気にする
読書は認知症予防だけではない
読書というと、「認知症予防のために良い」と紹介されることが多くあります。
もちろん、読書や新聞、日記など、文字に触れる習慣は脳へ良い刺激を与えると考えられています。



しかし、今回お伝えしたかったのは、それだけではありません。
読書をするために身体を起こし、座る時間が増えることは活動量の維持につながります。また、本を取りに行く、椅子へ座るといった何気ない動作も、生活の中で自然と身体を動かす機会になります。
さらに、新しい知識に触れる楽しみや、人との会話が増えるきっかけにもなり、心の健康や生活の充実にもつながります。
このように読書は、「脳」「身体」「心」、そして「生活」全体を支えてくれる、とても魅力的な習慣だと私は考えています。
毎日少しでも文字に触れる習慣をつくろう



「本を読むのは苦手だから……」
と感じる方もいるかもしれません。
そんな方は、新聞を読む、雑誌をめくる、日記を書く、俳句や短歌を楽しむなど、自分に合った方法から始めてみてください。
大切なのは、本を何冊読んだかではありません。
毎日少しでも文字に触れ、自分で考え、楽しむ時間を持つことです。
私は、
「認知症予防のために読書をしてください。」
とはお伝えしたくありません。
それよりも、



「毎日少しでも文字に触れる時間をつくってください。」
そうお伝えしたいと思っています。
その積み重ねが、脳への刺激だけでなく、身体を動かすきっかけとなり、心の豊かさや生活の充実にもつながっていきます。
読書は、年齢を重ねてからでも今日から始められる、とても身近で価値のある健康習慣です。ぜひ、ご自身のペースで楽しみながら続けてみてください。










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