千葉西総合病院(千葉県松戸市)で起きた患者動画の無断撮影・投稿問題では、職員側がグループ内で共有しているつもりでも、患者の情報が外部に広がった実態が明らかになった。
病院は2026年10月10日、動画の撮影・作成・投稿に関与した職員2人の解雇を決定したと公表した。今回の問題は、医療・介護現場で患者や利用者の画像を扱う際、SNSの公開範囲だけに頼ることの危うさを示している。
閲覧できる相手を限定する設定と、映像の保存・再共有を防ぐことは別である。病院が公表した経緯を踏まえ、限定公開SNSの仕組みと、現場で必要な情報管理を整理する。
■ グループ内で共有した動画がX上に
病院の10月9日付の第2報によると、動画は10月5日の夜間勤務中に撮影され、看護師3人のグループ内で共有されていた。病院は、3人には不特定多数へ拡散したという自覚がなく、グループ内で共有する認識だったと説明している。
一方、病院が問題を把握したのは10月8日である。グループ病院の職員から、X上に同院職員が作成したと思われる動画が投稿されているとの連絡を受け、存在を確認した。
10月10日付の第3報では、撮影・作成・投稿に関与したのは2人で、残る1人は閲覧のみだったと整理した。病院は2人の解雇を決定し、閲覧のみの1人は厳重注意の人事指導とした。
■ 「友達限定」でも保存・再共有の可能性
今回、撮影・共有に使われたとされる「setlog(セットログ)」は、友人らと短い動画を共有し、それらをまとめたVlogを残すアプリである。参加メンバーは、他のメンバーの映像を含むVlogを端末に保存し、別のSNSへ共有できる。
こうした保存・共有機能がある場合、アプリ内で閲覧できる相手を限定していても、保存された映像まで同じ範囲にとどまるとは限らない。映像が別のSNSや端末へ移れば、当初想定していなかった相手に届く可能性がある。
「友達しか見られない」という設定は、患者や利用者の映像が外部に出ないことを保証するものではない。公開範囲を限定していることだけを理由に、業務中の画像を私的なグループへ持ち込んでよいと判断することはできない。
■ 具体的な流出経路は公表資料から確認できず
アプリに保存・共有機能があることと、今回その機能を使って動画が拡散したことは、分けて考える必要がある。
病院の第2報・第3報では、グループ内での共有とX上での投稿確認は説明されているが、その間の具体的な経路や、誰がXへ投稿したかまでは示されていない。
このため、特定のSNSを経由したと断定したり、アプリの脆弱性が原因だったと結論づけたりすることはできない。確認できるのは、職員側の共有範囲に関する認識と、実際に映像が広がった範囲に隔たりがあったという点である。
■ 写真も個人情報、撮影と掲載の目的を確認
個人情報保護委員会の医療・介護分野の公式Q&Aは、個人を識別できる写真も個人情報に当たると説明している。ホームページや機関誌への掲載、施設内への展示などで第三者の閲覧に供する際には、本人の同意を得る必要があるとしている。
事業所の広報や行事写真を扱う際にも、撮影への同意だけでなく、何の目的で、どこに掲載し、誰が見るのかという利用範囲を確認する必要がある。
業務上認められた記録・広報と、職員個人のSNSへの投稿や私的な共有を混同しない運用が求められる。業務で撮影した画像を、個人の判断で私用端末へ保存したり、私的なグループに送ったりしないルールを明確にしておきたい。
■ 撮影から保存・共有まで一貫した管理を
医療・介護現場では、患者や利用者の画像を扱う各段階について、次の点を具体的に定めることが重要となる。
・撮影の目的と、事前に承認を得る手順
・使用できる端末と、画像・動画の保存先
・業務上の共有に使えるシステムと閲覧できる職員
・広報などへの掲載前に、同意の範囲を確認する担当者
・誤投稿や紛失、無断共有を把握した際の報告先
これらは現場での運用を考えるための確認事項であり、すべてが今回の病院事案で確認された不備という意味ではない。
千葉西総合病院は10月10日の発表で、全職員を対象とする個人情報保護・SNSの取り扱いに関するeラーニングを実施中とし、患者の権利と医療倫理に関する研修も早急に行う方針を示した。
患者や利用者の情報を守るには、公開範囲の設定に加え、撮影する必要があるか、どこに保存し、誰と共有するかまで一貫して管理することが求められる。
