高齢者が転倒・転落したときの対応は?骨折・頭部打撲の確認と動かす前の注意点を解説

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もくじ

はじめに

「訪室すると、ご利用者様が床に倒れていた」
「ベッドから転落しているところを発見した」
「転倒したけれど、本人は『大丈夫』と言っている」

介護現場や家庭では、このような場面に遭遇することがあります。

そんなとき、

「すぐに起こしていい?」
「骨折していない?」
「頭を打っていたらどうする?」

と、対応に迷う方も多いのではないでしょうか。

転倒・転落した高齢者を目の前にすると、まず起こしてベッドや椅子へ戻してあげたくなるかもしれません。しかし、転倒・転落後はすぐに身体を起こすのではなく、まず状態を確認することが大切です。

骨折や頭部打撲などが隠れている可能性もあり、状態によっては無理に動かさない方がよい場合もあります。

この記事では、高齢者の転倒・転落を発見したときの初期対応から、骨折や頭部打撲を疑うポイント、救急要請を考える症状、安全が確認できたあとの介助方法まで、わかりやすく解説します。

高齢者の転倒・転落を発見したら、すぐに起こさない

高齢者が床に倒れているのを発見すると、「早く起こしてあげないと」と反射的に身体を起こしたくなるかもしれません。

しかし、転倒・転落によって骨折や頭部打撲などが起きている可能性もあります。

そのため、まず意識したいのは、「起こす」よりも「確認」が先ということです。

まず周囲の安全と本人の状態を確認する

転倒・転落を発見したら、すぐに身体を動かすのではなく、まず周囲の安全を確認しましょう。

床に物が散乱していないか、車椅子や家具などが不安定な状態になっていないかなど、本人や介助者にさらなる危険がないことを確認します。

そのうえで本人に声をかけ、反応があるか、普段どおり受け答えができるかなどを確認します。

この段階では、無理に立たせたり、手足を動かして状態を確かめたりする必要はありません。

まずはその場で状態を確認し、次に何をするべきかを考えます。

転倒した瞬間を見ていない場合は特に注意する

介護現場では、転倒・転落した瞬間を目撃しているとは限りません。

訪室したときにはすでに床に倒れていて、いつ・どのように転倒したのか、身体のどこをぶつけたのか、頭を打ったのか分からないこともあります。

本人に確認することも大切ですが、認知機能の状態や転倒直後の混乱などによって、状況を正確に説明できない場合もあります。

また、本人が

「大丈夫」
「痛くない」

と話していても、それだけで安全とは判断できません。

だからこそ、転倒・転落後は本人の言葉だけで判断せず、身体の状態を一つずつ確認してから、動かしてよいかを考えることが大切です。

では、実際に何を確認すればよいのか、次に詳しくみていきましょう。

転倒・転落後にまず確認したいこと

転倒・転落後は、すぐに起こすのではなく、「今どのような状態なのか」を順番に確認します。

ここで大切なのは、介助者が骨折などを診断することではありません。普段と違う状態や異常のサインを見つけ、必要な対応につなげるための確認です。

日本赤十字社でも、傷病者を発見した際は周囲の安全を確保したうえで、反応(意識)や呼吸などを確認することが示されています。

① 意識と呼吸を確認する

まず本人に声をかけ、呼びかけに反応するか、普段どおり会話ができるかを確認します。

あわせて、呼吸の様子にも目を向けましょう。反応がない、普段どおりの呼吸が確認できないといった場合は、転倒後の身体チェックを続けるのではなく、119番通報や必要な救命処置など、緊急対応を優先します。

② 痛みの場所を確認する

次に、痛みがないかを本人に確認します。

「どこか痛いですか?」だけでなく、頭や首、肩、腰、股関節、腕や脚など、どの場所に痛みがあるのかを確認しましょう。

ただし、痛みの有無を確かめるために、無理に手足を曲げたり、立たせたりする必要はありません。

③ 腫れ・出血・変形・左右差を確認する

身体を見て、出血や腫れ、変形などがないかも確認します。

左右を見比べて、普段とは違う姿勢になっていないか、手足の向きに明らかな違いがないかを見ることも大切です。

これらは骨折を確定するためではなく、「いつもと違う異常がないか」を見つけるための観察です。

④ 転倒時の状況を確認する

身体だけでなく、転倒・転落したときの状況も確認しておきましょう。

いつ頃転倒したのか、どこで発見したのか、目撃者はいるのか、周囲にぶつかった可能性のある家具や物がないかなどを整理します。

こうした情報は、その後に医療職へ報告・相談するときの重要な手がかりになります。

次からは、転倒後に特に注意したい「骨折」と「頭部打撲」について詳しく見ていきます。

高齢者の転倒・転落後に意識や痛み、外傷などを確認するポイントを示したイラスト

高齢者が転倒しやすい原因や、転倒を防ぐためのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
高齢者が転倒する本当の原因|筋力低下だけではない転倒リスクとは?

骨折を疑うのはどんなとき?

高齢者の転倒・転落では、骨折が起きていないか注意して確認する必要があります。

ただし、介助者が見た目だけで骨折の有無を判断することはできません。日本赤十字社でも、少しでも骨折が疑われる場合は、患部を動かさず安静にすることが基本とされています。

強い痛み・腫れ・変形がある

転倒後に

  • 強い痛みを訴えている
  • 時間とともに腫れてきた
  • 皮膚の色が変わっている
  • 手足の形や向きが普段と明らかに違う

などは、骨折を疑うサインになります。

一方で、こうした症状が目立たないからといって、骨折していないとは限りません。

「見た目に変形がない=骨折していない」と自己判断しないことが大切です。

足に体重をかけられない・動かせない

転倒前まで歩いていた方が、転倒後に

「足が痛い」
「立てない」
「足を動かせない」

と訴えている場合も注意が必要です。

特に高齢者では、転倒によって股関節周囲などを痛めている可能性も考えながら観察します。

このときに避けたいのが、「骨折しているか、立たせて確認してみよう」という対応です。

立てるかどうかを確認するために、無理に身体を起こしたり、痛みのある手足を動かしたりする必要はありません。

なお、高齢者が急に立てなくなったり歩けなくなったりする原因は、骨折だけではありません。転倒以外も含めた原因や確認したいポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
高齢者が急に歩けなくなった原因は?確認したいポイントを理学療法士が解説

骨折が疑われる場合は無理に動かさない

「床ではかわいそうだから」
「とりあえずベッドへ戻そう」

と思うかもしれませんが、骨折が疑われる状態で無理に動かすと、患部にさらに負担をかけるおそれがあります。日本赤十字社でも、骨折が疑われる場合は全身と患部を安静にし、変形した部分を無理に元へ戻さないよう示しています。

骨折が疑われるときは無理に移動させず、施設であれば看護師や医師などへ報告し、必要に応じて救急要請や医療機関の受診につなげましょう。

頭を打った可能性があるときに確認したいこと

高齢者の転倒・転落では、頭を打っていないかにも注意が必要です。

実際に頭をぶつけるところを見ていなくても、床や家具などに頭を打っている可能性があります。また、頭部外傷では受傷直後に大きな異常がなくても、時間が経ってから意識障害や手足の動かしにくさなどが現れることがあります。

頭の傷・腫れだけで判断しない

まずは頭部に出血や傷、腫れ、たんこぶなどがないか確認します。

ただし、ここで注意したいのが、「外見上何もない=頭に問題がない」とは限らないことです。

頭の中で出血が起きていても、外から見ただけでは分からない場合があります。そのため、頭部の傷だけでなく、その後の本人の様子もあわせて確認することが大切です。

意識・会話・嘔吐などの変化を見る

頭を打った可能性がある場合は、普段と比べて変化がないかを確認します。

たとえば、

  • ぼんやりしている
  • 呼びかけへの反応が悪い
  • 会話がおかしい
  • 強い頭痛がある
  • 嘔吐する
  • けいれんが起きる
  • 手足が動かしにくい

といった症状には注意が必要です。

介護現場では、「いつもの状態を知っている」ことが大きな手がかりになります。単に受け答えができるかだけではなく、「いつもと何か違う」という変化を見逃さないようにしましょう。

血液を固まりにくくする薬を服用している場合にも注意

高齢者では、心臓や脳の病気などの治療で、抗凝固薬や抗血小板薬といった血液を固まりにくくする薬を服用していることがあります。

頭を打った可能性がある場合は、こうした服薬情報も医療職が対応を判断するうえで重要な情報になります。

介助者が薬の影響まで判断する必要はありません。薬の名前が分からない場合も、お薬手帳や服薬情報を確認し、転倒時の状況やその後の変化と一緒に医療職へ伝えられるようにしておきましょう。

また、頭部打撲では遅れて症状が現れることもあるため、転倒直後に問題がなさそうに見えても、その後の変化に注意することが大切です。

高齢者の転倒後に骨折や頭部打撲を疑うポイントを確認するイラスト

救急要請・医療機関への相談を考えたい状態

転倒・転落後の状態を確認した結果、明らかな異常がある場合は、ベッドへ戻すことよりも救急要請や医療機関への相談を優先します。

また、「救急車を呼ぶべきか分からない」という場合も、自己判断で無理に動かすのではなく、医療職などへ相談することが大切です。

意識や呼吸に明らかな異常がある

  • 呼びかけても反応がない
  • 反応が極端に鈍い
  • 普段どおりの呼吸が確認できない

など、意識や呼吸に明らかな異常がある場合は緊急性が高い状態です。

この場合は転倒によるケガの確認を続けるのではなく、119番通報を行い、必要に応じて心肺蘇生やAEDなどの救命処置を優先します。

強い痛み・出血・明らかな変形などがある

転倒後に

  • 強い痛みがある
  • 大量に出血している
  • 手足に明らかな変形がある

など、大きなケガが疑われる場合も注意が必要です。

前述した骨折や頭部打撲を疑う症状も含め、「普段とは明らかに違う」と感じる状態があれば、そのまま起こそうとせず、適切な医療につなげることを考えます。

判断に迷ったら無理に動かさない

現場で特に避けたいのが、「救急車を呼ぶほどか分からないから、とりあえず起こしてみよう」という対応です。

施設であれば看護師や医師、上司などへ速やかに報告し、指示を受けましょう。

家庭で判断に迷う場合には、医療機関へ相談するほか、地域によっては救急安心センター「#7119」を利用できます。

#7119では、救急車を呼ぶべきか、すぐに医療機関を受診すべきかなどについて、医師・看護師・救急救命士から助言を受けられます。なお、実施地域は限られています。

緊急性が高いと考えられる場合は、#7119への相談を待たず119番通報を優先しましょう。

安全が確認できたら|床からベッドへ戻す方法

ここまで確認して、明らかな緊急症状や重大な外傷が疑われず、必要に応じて医療職などへの相談も行ったうえで、安全に移動できると判断された場合は、床からベッドや椅子へ戻す介助を考えます。

ただし、「動かしてよさそう」という自己判断だけで介助を始めるのではなく、本人の状態や介助量、周囲の環境まで含めて、安全に行えるかを考えることが大切です。

「動かしてよいこと」を確認してから介助する

転倒・転落後に大きな問題がないように見えても、慌てて立たせる必要はありません。

本人がどの程度身体を動かせるのか、普段はどの程度の介助が必要なのかを確認し、今の状態で安全に介助できる方法を選びます。

また、介助者側の安全も重要です。

全介助が必要な方を床から起こす場合など、「一人では難しい」と感じたら無理に一人で介助しないでください。無理な介助は、ご利用者様の転倒やケガだけでなく、介助者の腰痛や転倒など、二次的な事故につながる可能性があります。

すぐに介助することが難しい場合は、危険がないことを確認したうえで無理に動かさず、必要に応じて身体が冷えないよう布団や毛布などをかけ、応援を待つことも選択肢です。

全介助で床からベッドへ戻す方法

自力で立ち上がれる方であれば、本人の能力を活かしながら介助できます。しかし、自力での立ち上がりが難しく、全介助で床からベッドへ戻さなければならないケースもあります。

こうした場面では、力任せに抱き上げるのではなく、安全に配慮した方法で介助することが大切です。

具体的な介助方法については、やしのきチャンネルの動画「転落後ベッドに戻す方法【全介助】」で、実際の動きを紹介しています。

自力で立ち上がることが難しく、全介助で床からベッドへ戻す場合の具体的な方法は、こちらの動画で確認してみてください。

ここまで紹介してきたように、動画の方法を実践する前には、まず転倒・転落後の状態を確認することが大前提です。

「どうやって起こすか」より先に、「今、動かしてよい状態なのか」を確認する。

そのうえで、安全な介助方法を選択しましょう。

ベッドへ戻したあとも経過観察する

転倒・転落後に大きな異常がなく、安全にベッドへ戻すことができても、「戻せたから大丈夫」で終わりではありません。

転倒直後には目立った症状がなくても、その後に痛みが強くなったり、体調に変化が現れたりすることがあります。そのため、ベッドへ戻したあとも本人の状態を継続して確認することが大切です。

戻したら終わりではない

転倒・転落後は、

  • 痛みが出ていないか
  • 普段と比べて意識や受け答えに変化がないか
  • 嘔吐や体調不良

などがないかを観察します。

特に頭を打った可能性がある場合は、時間が経ってから症状が現れることもあるため注意が必要です。

経過観察の方法や時間については一律に決めるのではなく、医療職からの指示や施設のルールなどに従いましょう。

また、経過観察中に新たな症状や「いつもと違う」変化が現れた場合には、そのまま様子を見るのではなく、改めて医療職への報告や受診、必要に応じて救急要請を検討します。

転倒・転落時の状況を記録・共有する

転倒・転落後は、いつ・どこで・どのような状態で発見したのかを記録しておきます。

そのほか、

  • 本人が訴えていた症状
  • 確認した身体の状態
  • その後の変化
  • 誰に報告したのか
  • どのような指示を受けたのか

なども共有できるようにしておきましょう。

記録は事故報告書を書くためだけのものではありません。

転倒後の医療判断に役立てるとともに、なぜ転倒したのかを振り返り、次の転倒を防ぐための重要な情報にもなります。

まとめ|転倒・転落後は「起こす前の確認」が大切

高齢者の転倒・転落を発見すると、「早く起こしてあげないと」と思うかもしれません。しかし、骨折や頭部打撲などが隠れている可能性もあるため、まずは身体を動かす前に状態を確認することが大切です。

転倒・転落後は、

転倒・転落を発見

すぐに起こさない

意識・呼吸・痛み・外傷などを確認

骨折・頭部打撲・緊急性を考える

必要なら救急要請・医療職へ相談

安全に移動できることを確認

ベッドへ戻す

その後も経過観察・記録

という流れを意識しましょう。

本人が「大丈夫」と話していても、見た目だけでは分からないケガや、その後に現れる症状もあります。少しでも異常が疑われる場合や判断に迷う場合は、無理に動かさず、医療職などへ相談することも重要です。

転倒・転落後に大切なのは、「どうやって起こすか」を考える前に、「今、この方を動かしてよい状態なのか」を確認することです。

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この記事を書いた人

介護に関わる全ての人へ。
心あるケアは、技術にできる。
理学療法士が現場で培った“考え方と介護技術”を伝える実践ブログです。

合同会社やしのき 代表
理学療法士/訪問看護ステーション・福祉用具貸与事業所を運営。
現場での経験をもとに、
・介護技術を YouTube(登録者15万人) で発信。
・介護分野の書籍出版にも携わる。

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