車椅子の事故は足元で起きる|フットサポート確認不足が招く転倒・ケガとは

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はじめに

車椅子介助で事故というと、ブレーキのかけ忘れや転倒をイメージする方が多いかもしれません。
しかし実際の現場では、意外にも「足元の確認不足」が事故につながることがあります。

特にフットサポートは、「ただ足を置く場所」と思われがちです。

ですが、

  • 足が落ちたまま移動してしまう
  • 立ち上がる時に足が乗ったままになっている
  • 移乗時に脚をぶつけてしまう
  • 麻痺側の足が落ちていても気付きにくい

といった事故やヒヤリハットは決して珍しくありません。

ほんの数秒の確認不足が、転倒やケガにつながることもあります。

この記事では、介護現場で起こりやすいフットサポート関連の事故や、今日からできる予防のポイントについて解説します。

フットサポートは「足を置く場所」ではない

車椅子のフットサポートは、名前の通り足を乗せるための部品です。

しかし実際には、単に足を置くためだけのものではありません。

ご利用者様の姿勢を安定させ、安全に移動するための重要な役割を担っています。

普段は何気なく使っている部分ですが、フットサポートの使い方や確認を誤ると、転倒やケガにつながることもあります。

まずはフットサポートが持つ本来の役割について確認してみましょう。

フットサポートの本来の役割

フットサポートには大きく3つの役割があります。

1つ目は、足を支えることです。

足を適切な位置で支えることで、移動中に足が床へ接触したり、車輪へ巻き込まれたりすることを防ぎます。

2つ目は、姿勢を安定させることです。

足を支えることで骨盤や体幹が安定し、車椅子上で安全な座位を保ちやすくなります。

3つ目は、安全な移動を行うことです。

方向転換や狭い場所の通過時でも、足が適切な位置にあることで接触事故のリスクを減らすことができます。

長谷川

フットサポートは単なる付属品ではなく、ご利用者様の安全を支える重要な部品です。

足を支えることで姿勢を安定させる

私たちは立っている時だけでなく、座っている時も足からの支えを利用して姿勢を保っています。

車椅子でも同じです。

足がしっかり支えられていることで身体が安定し、余計な力を使わずに座ることができます。

反対に、

  • 片足が浮いている
  • 左右の位置がずれている
  • 足がフットサポートから外れている

といった状態では身体のバランスが崩れやすくなります。

ご利用者様によっては、

  • 身体が左右どちらかへ傾く
  • お尻が前へずれる
  • 車椅子内で姿勢が崩れる

といった問題が起こることもあります。

長谷川

そのため足元を整えることは、快適な座位姿勢を保つためにも重要です。

足元が崩れると全身に影響する

介助中はご利用者様の表情や上半身に目が向きやすいものです。

しかし実際には、足元の状態が全身の姿勢や安全性に大きな影響を与えています。

例えば片足がフットサポートから落ちた状態では、左右のバランスが崩れやすくなります。

また、足がしっかり乗っていないまま移動すると、車椅子の振動や段差の影響を受けやすくなり、身体が前後左右に揺れやすくなります。

こうした小さな姿勢の崩れは、やがて転倒やケガのリスクを高めることにつながります。

車椅子介助では、ブレーキやシートの確認だけでなく、

「足元まで見る」

という意識がとても大切です。

次に、実際に介護現場で起こりやすいフットサポート関連の事故について見ていきましょう。

車椅子のフットサポートで起こりやすい事故

フットサポートの確認不足による事故は、特別な場面で起こるわけではありません。

むしろ、毎日の介助の中で起こりやすい「ちょっとした確認不足」が原因になることがほとんどです。

「少しくらい大丈夫だろう」

その油断が、ご利用者様のケガや転倒につながることもあります。

ここでは、介護現場で実際によく見られるフットサポート関連の事故を紹介します。

足が落ちたまま移動して擦ってしまう

最も多いヒヤリハットの一つが、足がフットサポートから落ちたまま車椅子を動かしてしまうケースです。

特に片麻痺や筋力低下があるご利用者様では、自分で足を元の位置へ戻すことができない場合があります。

そのまま移動してしまうと、

  • 足先を床に擦る
  • 壁やドア枠にぶつける
  • 車輪へ巻き込まれそうになる

といった危険があります。

高齢者は皮膚が薄く傷つきやすいため、ほんの少し擦っただけでも皮膚剥離や出血につながることがあります。

「少し足が落ちているだけ」

と思わず、移動前には必ず足元を確認することが大切です。

フットサポートに足を乗せたまま立ち上がる

立ち上がり介助の際に意外と多いのが、フットサポートに足を乗せたまま立ち上がろうとするケースです。

足がフットサポートに乗ったまま立ち上がると、車椅子ごと転倒してしまいます。

転倒は骨折など大きな怪我につながるため、大変危険です。

車椅子に座っている状態で、

  • 物を落として拾おうとする
  • 床に落ちているゴミを拾おうとする
  • 呼ばれたり、トイレに行きたくなって立ちあがろうとする

こういったケースで転倒・転落するケースも少なくありません。

車椅子に座って停車している状態では、

「フットサポートは上げたか?」
「足はおろしたか?」

という確認を習慣化することが重要です。

ちょっとした小技を紹介

車椅子に座って停車している時は、フットサポートをあげて、足は床に接地させることが基本ですが、一時的に車椅子をとめて、すぐに移動される時などは手間ですよね。

そんな時は、前輪をクルッとさせておくと、転倒予防になります。

移乗時に下腿をぶつけてしまう

ベッドやトイレへ移乗する際、フットサポートを外し忘れたり、十分に開いていなかったりすると、下腿(すね)をぶつけてしまうことがあります。

介助者は上半身の支えに集中しやすいため、足元への注意が遅れてしまうことも少なくありません。

ご利用者様は痛みを訴えないこともありますが、

  • 皮膚剥離
  • 打撲
  • 内出血

などが後から見つかるケースもあります。

特に皮膚が弱いご利用者様では、軽く当たっただけでも傷になってしまうことがあるため注意が必要です。

麻痺側の足が落ちても気付きにくい

片麻痺のあるご利用者様では、麻痺側の足がフットサポートから外れていても、自分では気付かないことがあります。

さらに感覚障害がある場合は、床を擦っていても痛みを感じにくく、そのまま移動を続けてしまうこともあります。

介助者も、ご利用者様の表情や進行方向に意識が向いてしまうため、麻痺側の足元は死角になりがちです。

だからこそ、

「動き出してから確認する」のではなく、

「動き出す前に足元を確認する」

という習慣が事故予防につながります。

ほんの数秒の確認が、ご利用者様の安全を守る大切な一歩になります。

なぜフットサポートの事故は起こるのか

フットサポートに関する事故は、特別な技術不足が原因で起こるものではありません。

介助経験が豊富な方でも、ほんの少しの確認不足から事故につながることがあります。

では、なぜフットサポートの事故は起こってしまうのでしょうか。

介護現場でよくある原因を見ていきましょう。

足元は介助者の死角になりやすい

介助中は、ご利用者様の表情や身体全体、進行方向など、確認しなければならないことがたくさんあります。

そのため、どうしても足元への意識が後回しになってしまいます。

特に車椅子を押している時は介助者の立ち位置の関係で、フットサポートや足先は見えにくくなります。

その結果、

「足が落ちていたことに移動してから気付いた」

というケースも少なくありません。

事故を防ぐためには、動き始める前に一度足元を見る習慣をつけることが大切です。

車椅子操作に意識が向きやすい

車椅子介助では、

  • ブレーキをかける
  • 段差に注意する
  • 周囲の人や障害物を確認する

など、介助者が意識することは数多くあります。

そのため、車椅子を安全に操作することに集中するあまり、ご利用者様の足元まで十分に確認できないことがあります。

しかし、ご利用者様にとって最も近くにある危険は、意外にも足元であることが少なくありません。

長谷川

車椅子を安全に操作することはもちろん大切ですが、それと同じくらい「足が正しい位置にあるか」を確認することも重要です。

「慣れ」が確認不足を生む

毎日何人ものご利用者様を介助していると、一つひとつの動作が自然と身に付きます。

経験を積むことは大きな強みですが、一方で「いつも通りだから大丈夫」という慣れが確認不足につながることもあります。

例えば、

「さっきも問題なかったから」
「このご利用者様はいつも大丈夫だから」

という思い込みから、フットサポートの確認を省略してしまうことがあります。

しかし、ご利用者様の身体状況はその日によって変化します。

疲労や体調、麻痺の程度、注意力の低下などによって、昨日まで問題なかったことが今日は事故につながる可能性もあります。

だからこそ大切なのは、「慣れないこと」ではありません。

毎回同じように確認することを習慣にすることです。

「足元まで見る」

その数秒の確認が、ご利用者様の安全を守ることにつながります。

特に注意したいご利用者様の特徴

フットサポートの確認は、すべてのご利用者様に必要です。

しかし、その中でも特に事故につながりやすい方がいます。

  • 自分で足を戻せるか
  • 足の異常に気付けるか

という視点で考えると、注意すべきご利用者様が見えてきます。

片麻痺があるご利用者様

脳卒中などで片麻痺があるご利用者様は、麻痺側の足を自分の意思で動かしにくいことがあります。

そのため、フットサポートから足が外れてしまっても、自分で元の位置へ戻すことができません。

さらに、車椅子を動かしている最中に振動や段差で足が落ちてしまうこともあります。

介助者が気付かないまま移動を続けると、床で足を擦ったり、壁やドアにぶつけたりする危険があります。

長谷川

片麻痺のあるご利用者様を介助する際は、特に麻痺側の足元を意識して確認しましょう。

感覚障害があるご利用者様

感覚障害があるご利用者様は、足をぶつけたり擦ったりしても痛みに気付きにくい場合があります。

介助者もご利用者様が痛がらないため、事故に気付きにくくなることがあります。

しかし実際には、

  • 皮膚が擦れている
  • 出血している
  • 内出血している

というケースも少なくありません。

「痛がっていないから大丈夫」

と判断せず、足元の状態を目で確認することが大切です。

認知症があるご利用者様

認知症のあるご利用者様は、介助中に突然立ち上がろうとしたり、自分で足を動かしたりすることがあります。

その結果、フットサポートに足が乗ったまま立ち上がろうとして転倒したり、移動中に足が外れてしまったりすることがあります。

また、ご本人が危険な状態を理解できない場合もあるため、介助者による事前の確認が欠かせません。

「大丈夫ですか?」

という声かけだけでなく、実際に足元を見る習慣をつけましょう。

自力で足を戻せないご利用者様

病気や障害に関係なく、筋力低下や拘縮などによって自分で足の位置を修正できないご利用者様も少なくありません。

高齢になると、一度フットサポートから足が外れるだけでも、自力では元に戻せないことがあります。

介助者が気付くまで不自然な姿勢が続き、足を擦ったり、姿勢が崩れて仙骨座りになったりする原因にもなります。

「自分で足を直せるだろう」

と思い込まず、ご利用者様一人ひとりの身体機能に合わせて確認することが、安全な介助につながります。

今日からできるフットサポート事故予防

フットサポートによる事故の多くは、特別な知識や技術がなくても防ぐことができます。

長谷川

大切なのは、介助の流れの中に「足元を確認する」という習慣を組み込むことです。

ここでは、今日から実践できる事故予防のポイントをご紹介します。

移動前に足元を確認する習慣を作る

車椅子を動かす前に、ほんの数秒だけ足元を確認する習慣をつけましょう。

確認するポイントは難しくありません。

  • 両足がフットサポートにしっかり乗っているか
  • 足先が外へはみ出していないか
  • 麻痺側の足が落ちていないか
  • 足が不自然な方向を向いていないか

これらを確認するだけでも、多くの事故を防ぐことができます。

介助に慣れてくると確認を省略してしまいがちですが、「車椅子を動かす前に足元を見る」ことをルーティン化することが、安全な介助につながります。

停車時はフットサポートから足を下ろす

フットサポートに足を乗せたまま過ごしているケースはよく見かけます。

足がフットサポートに乗ったままでは床に足底が接地できず、身体を支えることができません。

その状態で立ち上がろうとすると、車椅子ごと前方へ転倒してしまう危険があります。

転倒は骨折や頭部外傷など、大きなケガにつながる可能性があるため注意が必要です。

介助者が少し目を離した数秒の間に転倒してしまうケースも珍しくありません。

そのため、車椅子へ座っていただいた後は、

「フットサポートは上げたか?」
「足は床に下ろしたか?」

この2つを確認することを習慣にしましょう。

ほんの数秒の確認が、ご利用者様の安全を守ることにつながります。

移乗前は足の位置を整える

ベッドやトイレへの移乗では、ご利用者様の身体だけでなく足の位置も重要です。

フットサポートを外したあとも、

  • 両足が床に接地しているか
  • 左右の足幅は適切か
  • 引きすぎたり開きすぎたりしていないか

を確認しましょう。

足の位置が整っていないまま立ち上がると、十分に力を発揮できず、介助者・ご利用者様ともに大きな負担がかかります。

移乗の成功は、立ち上がる前に決まると言っても過言ではありません。

そのため、身体を支える前に足元を整えることを意識しましょう。

こちらの記事も参考にしてみてください。
👉 介護事故の多くは確認不足|新人もベテランも必須の安全確認5選

「足元まで見る」をチームで共有する

事故を減らすためには、一人だけが気を付けるのではなく、職場全体で同じ意識を持つことも大切です。

例えば、

「車椅子を動かす前は足元を確認する」

というルールをチームで共有するだけでも、確認漏れは減らせます。

また、新人教育でも、

「ブレーキを確認する」

だけで終わるのではなく、

「足元まで確認する」

という視点を伝えることで、事故予防への意識が育ちます。

介護技術は、難しいことを増やすことではありません。
小さな確認を積み重ねることが、ご利用者様の安全を守り、安心して介助できる環境づくりにつながります。

実はフットサポートは姿勢にも影響する

フットサポートは事故を防ぐためだけのものではありません。

実は、ご利用者様の座位姿勢にも大きく関係しています。

「とりあえず足が乗っていれば大丈夫」

と思われがちですが、足の位置が少し変わるだけでも身体全体のバランスは大きく変化します。

理学療法士としてご利用者様を評価する際も、まず足元から確認することが少なくありません。

足底接地ができないと姿勢が崩れる

人は立っている時だけでなく、座っている時も足から身体を支えています。

車椅子でも同じです。

足底がフットサポートへしっかり接地していることで、下肢から骨盤、そして体幹へと安定した支持が生まれます。

しかし、

  • フットサポートの高さが合っていない
  • 足が途中までしか乗っていない
  • 片足だけ落ちている

このような状態では、身体を安定して支えることができません。

その結果、上半身でバランスを取ろうとして余計な力が入り、疲れやすくなったり姿勢が崩れたりしてしまいます。

長谷川

車椅子で快適に過ごすためには、足元の安定が欠かせません。

仙骨座りの原因になることもある

フットサポートの位置が適切でない状態が続くと、お尻が前へずれて「仙骨座り」になることがあります。

仙骨座りになると、

  • 骨盤が後ろへ倒れる
  • 背中が丸くなる
  • 頭が前へ出る

という不良姿勢になりやすくなります。

さらに、この姿勢では食事や会話がしづらくなるだけでなく、立ち上がりや移乗も難しくなります。

以前の記事でもお伝えしたように、仙骨座りは転倒や誤嚥、褥瘡などさまざまなリスクにつながります。

フットサポートは「足を置く場所」ではなく、正しい座位姿勢を支えるための重要な役割も担っているのです。

仙骨座りの危険については、こちらの記事で詳しく解説しています。
👉 【仙骨座り】原因と改善方法|褥瘡・腰痛を防ぐ介助のポイント

長時間の不良姿勢は褥瘡リスクを高める

車椅子で過ごす時間が長いご利用者様ほど、姿勢の影響は大きくなります。

足元が不安定な状態では、お尻や背中の一部に体圧が集中しやすくなります。

その状態が長時間続くことで、

  • 褥瘡(床ずれ)
  • 腰痛
  • 疲労感の増加
  • 座位保持能力の低下

などにつながる可能性があります。

「フットサポートくらい大丈夫」

と思ってしまうかもしれません。

しかし、ご利用者様が毎日何時間も車椅子で生活していることを考えると、その小さな違いは決して小さな問題ではありません。

安全な移動のためだけでなく、快適な生活を送っていただくためにも、フットサポートの位置や足元の状態を確認することはとても重要です。

まとめ|車椅子事故を防ぐために「足元まで見る」

フットサポートは事故予防の重要ポイント

車椅子のフットサポートは、単に足を置くための部品ではありません。

ご利用者様の足を支え、安全な移動を行い、正しい座位姿勢を保つための大切な役割があります。

普段は何気なく使っている部分だからこそ、その重要性を見落としやすいものです。

しかし、フットサポートへの意識を少し変えるだけで、防げる事故は数多くあります。

確認不足が転倒やケガにつながる

フットサポートによる事故の多くは、特別な場面で起こるわけではありません。

  • 足が落ちたまま移動してしまう
  • フットサポートに足を乗せたまま立ち上がってしまう
  • 移乗時に脚をぶつけてしまう

どれも介護現場ではよくある場面ですが、ほんの数秒の確認で防げる事故でもあります。

長谷川

事故を減らすためには、新しい技術を身に付けることだけではなく、基本的な確認を丁寧に行うことが何より重要です。

足元への意識が安全な介助につながる

介助中は、ご利用者様の表情や動作、周囲の環境など確認することがたくさんあります。

だからこそ、足元は見落とされやすい場所でもあります。

  • 車椅子を動かす前に足元を見る
  • 停車時はフットサポートから足を下ろす
  • 移乗前に足の位置を整える

この小さな積み重ねが、ご利用者様の転倒やケガを防ぎ、安全で安心できる介助につながります。

ぜひ今日から、

「顔を見るだけでなく、足元まで見る。」

この意識を、日々の介助に取り入れてみてください。

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この記事を書いた人

介護に関わる全ての人へ。
心あるケアは、技術にできる。
理学療法士が現場で培った“考え方と介護技術”を伝える実践ブログです。

合同会社やしのき 代表
理学療法士/訪問看護ステーション・福祉用具貸与事業所を運営。
現場での経験をもとに、
・介護技術を YouTube(登録者15万人) で発信。
・介護分野の書籍出版にも携わる。
・CayluBase(ケイルベース) を運営。
(居宅介護サービス事業所向けに事務・帳票・運営を支える)

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