音楽療法
ひとことでいうと
音楽療法
音楽療法は、音楽の持つ生理的・心理的・社会的な働きを生かし、心身の機能や生活の質を支えるために目的を持って計画的に行う支援です。対象は認知症のある人に限らず、医療・福祉・教育などの領域で、年齢や障害の有無に応じた実践が行われています。
方法には、歌唱や演奏など本人が音を生み出す活動と、音楽を聴く活動があります。個別に関わる場合も、集団で交流する場合もあり、言葉で気持ちを伝えることが難しい人の表現や他者とのつながりを支える機会にもなります。
認知症ケアでは、本人の好きな曲や生活歴を手がかりに、安心できる時間や参加の機会をつくります。音楽療法士などが目的・方法・反応を評価し、本人の体調や関心に合わせて調整します。単に音楽を流すことや、全員で歌うレクリエーションが、そのまま専門的な音楽療法になるわけではありません。
研究では、通常のケアと比べた治療終了時の抑うつへの効果などが示されていますが、認知機能や興奮、長期的な効果には不確実性があります。認知症を治す方法と断定せず、本人にとっての楽しさや負担も含めて判断することが大切です。
音楽を楽しむ活動と専門的な療法の違い
介護の場で好きな歌を聴いたり、季節の歌を一緒に歌ったりすることは、日々の生活を豊かにする活動です。一方、専門的な音楽療法では、交流を増やす、気持ちを表現しやすくするなどの具体的な目的と評価を持ち、実施方法を選びます。活動の名称だけで療法かどうかを判断しません。
評価では、歌えた曲数や楽器を正しく扱えたかだけでなく、表情、発声、他者への働きかけ、参加を断る様子、終了後の疲労などを観察します。本人が静かに聴くことを選んだ場合も、その選択を尊重します。周囲が喜ぶ反応を求めて、参加や歌唱を強いることは避けます。
懐かしい曲は回想のきっかけになりますが、悲しみやつらい経験を呼び起こすこともあります。好みを家族から聞く際も、本人の現在の反応を優先します。補聴器、音量、座る位置、時間帯などを調整し、心地よく参加できる環境を整えます。
音楽療法士の資格は日本では民間資格です。専門的な療法を導入する際は、担当者の教育・経験や、多職種と評価を共有する体制を確認するとよいでしょう。
現場で知っておきたいポイント
音楽を用いるときは、本人の好みと当日の状態を確かめ、参加するかどうかを選べるようにします。参加しない人にも静かに過ごせる場所を用意します。
- 好きな曲や避けたい曲を本人・家族に聞き、生活歴と現在の反応を合わせて考えます。
- 音量や速さ、活動時間を調整し、補聴器を使う人にも聞こえ方を確認します。
- 歌う、聴く、手拍子をするなど、本人が選べる参加方法を用意します。
- 表情や呼吸、疲れ、落ち着かなさを観察し、負担があれば休憩や中止を選びます。
- 実施の目的、使った曲、本人の反応を記録し、次回の方法を多職種で見直します。
懐かしい曲で涙が出ても、理由を無理に聞き出さず、続けたいかを確かめます。反応を成功・失敗だけで評価せず、本人の安心と意思を大切にしてください。
不安や興奮が強まる場合は活動を止め、痛みや体調変化も確認して、看護職などに相談します。
参考情報・参考文献
日本音楽療法学会「音楽療法士とは」
音楽療法の対象、専門性、個別・集団および能動的・受動的な方法、資格の位置付けを確認。
https://www.jmta.jp/music_therapist/
参照日:2026年10月10日
日本音楽療法学会「Welcome to the Japanese Music Therapy Association!」
Music therapyの英語表記と、目的を持ち体系的に音楽を用いるという定義を確認。
参照日:2026年10月10日
Cochrane「音楽療法は認知症がある人の役に立つのか」
認知症に対する音楽を用いた介入の効果と、認知機能・興奮・長期効果に関する不確実性を確認。
https://www.cochrane.org/ja/evidence/CD003477_does-music-based-therapy-help-people-dementia
参照日:2026年10月10日
