イレウス
ひとことでいうと
イレウス
イレウスは、腸の内容物が先へ進めなくなる状態に関わる医療用語です。日本では従来、物理的に腸が塞がる場合も含め、腸内容の通過障害を広く指す言葉として使われてきました。一方、現在は腸の動きが低下・停止する状態をイレウスと呼び、機械的な腸閉塞と区別する使い方もあります。
腸の動きが低下する背景には、手術後の影響、腹部の炎症、電解質の異常、薬の影響などがあります。腸の動きが鈍くなる麻痺性イレウスは、機能的イレウスの一型です。広い意味で使われる場合は、癒着や腫瘍などによる機械的な通過障害が含まれることもあります。
主な症状は、お腹の張り、吐き気や嘔吐、腹痛、便やガスが出にくい状態です。症状の強さや現れ方は原因によって異なり、痛みが強くない場合もあります。高齢者では食欲や活動量の低下などから変化に気づくこともあり、便秘だけと決めつけず、普段との違いを伝えることが大切です。
診断には診察や血液検査、腹部の画像検査などを用い、原因と重症度を確認します。治療は食事の制限、点滴、腸内にたまった内容物の排出、原因への対応などを状態に応じて行い、機械的腸閉塞では手術が必要な場合もあります。現場では言葉だけで病態を判断せず、診断内容と医療職の指示を確認します。
イレウスと腸閉塞の違い
従来、日本では腸の内容物が通らない状態を広く「イレウス」と呼んできたため、「腸閉塞」と同じ意味のように使われることがあります。現在は、癒着や腫瘍などで通り道が物理的に塞がるものを「機械的腸閉塞」、明らかな塞がりがなくても腸の運動の異常で内容物が進まないものを「機能的イレウス」と区別する表現があります。
「麻痺性イレウス」は、腸の動きが低下・停止する機能的イレウスの一型です。つまり、機能的イレウスと麻痺性イレウスは、いつも完全に同じ範囲を指す言葉ではありません。また、機械的腸閉塞でも腸の内容物は進みにくくなりますが、「詰まっていること」と「動きが低下していること」は区別して理解する必要があります。
ただし、用語の使い方は資料や現場によって一様ではなく、「イレウス」という言葉だけで原因や治療方針は分かりません。申し送りで聞いたときは、診断上どの意味で使われているのか、何が原因なのかを医療職に確認します。食事・水分・排便処置の指示も合わせて確認し、単なる便秘と考えて自己判断で対応しないことが大切です。
現場で知っておきたいポイント
便秘との見分けを介助者だけで行わず、お腹の症状と全身状態の変化をまとめて医療職へ伝えます。
- 最後の排便・排ガスの時期、便の量や性状、普段の排便パターンを記録する。
- お腹の張りや痛みの部位・強さ、吐き気や嘔吐の回数と内容を確認する。
- 食欲、摂取量、尿量、活気や意識の変化を普段と比べる。
- 腹部の手術歴、イレウスの既往、服薬や薬の変更を医療職に共有する。
- 腹痛や嘔吐を伴うときは、下剤の追加、浣腸、腹部マッサージを自己判断で行わない。
嘔吐やお腹の張りがあるときに、便秘対策として飲食や食物繊維の摂取を無理に勧めず、食事・水分・排便処置について医療職の指示を確認します。
強い・続く腹痛、繰り返す嘔吐、冷汗、意識の変化などがあれば、速やかに医療職へ連絡します。急激な悪化や重い全身症状がある場合は救急対応を行います。
参考情報・参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「腸閉塞」
機械的腸閉塞と腸の動きの低下によるイレウスの区別、用語の使われ方を確認。
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/choheisoku.html
参照日:2026年10月6日
日本腹部救急医学会雑誌「『イレウス』という用語の問題点:ICD10コードを用いた検討」
日本における従来の広い用法と、腸閉塞・イレウスを区別する考え方を確認。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaem/43/1/43_29/_article/-char/ja/
参照日:2026年10月6日
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 麻痺性イレウス」
機能的イレウスとの関係、薬などの背景、初期症状と医療職への連絡を確認。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1g09.pdf
参照日:2026年10月6日
済生会「イレウス(腸閉塞)」
従来の呼称、症状、検査・治療、急ぐべき状態の概要を確認。
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/ileus/
参照日:2026年10月6日
